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『魔術師』 ジェフリー・ディーヴァー

『魔術師』ジェフリー・ディーヴァー魔術師(原題:The Vanished Man)』ジェフリー・ディーヴァー、池田真紀子訳、文藝春秋(2004)。

車椅子の名探偵リンカーン・ライムと恋人兼助手のアメリア・サックスが活躍する「ライム & サックス・シリーズ」の第5巻。このシリーズでは1997年の『ボーン・コレクター(原題:The Bone Collector)』を皮切りに「ジェットコースター・サスペンス」の名を辱めないエンターテインメント作品が発表され続けている。

シリーズ最新作『魔術師』では有名なマジック演目に見立てた連続殺人がニューヨークで発生する。見立てられるのは、ハリー・フーディーニ(Harry Houdini、1874-1926) の「手持ち無沙汰の絞首刑執行人」と「中国の水牢」、セルビット(P.T Selbit、1881−1938)の「血の偶像(美女の胴切り)」など。

犯人マレリックはイリュージョン・脱出マジック・早変わり・手品・腹話術・読心術・ピッキングの達人で「デヴィッド・カッパーフィールドとハンニバル・レクターを合体させたような」恐るべき犯罪者だ(注:デヴィッド・カッパーフィールドは世界的に有名なイリュージョニスト。ハンニバル・レクターはトマス・ハリスの『羊たちの沈黙』に登場する連続殺人者)。

ライムとサックスは、若き女性イリュージョニストのカーラ、ニューヨーク市警殺人課警部補ロン・セリットー、2丁拳銃の刑事ローランド・ベル、証拠鑑定の専門家メル・クーパー、美青年介護士トムらの助けを借りて、殺人鬼マレリックに挑む。

どんでん返しの連続で最後のページまで気の抜けない第一級のエンタテインメント作品。読後感は「満足!」の一言だ。初期作品を除けばディーヴァーの長編小説はすべて「当たり」だと断言できる。

「ライム & サックス・シリーズ」の魅力は脇役も含めた個性豊かな登場人物たちに負うところも大きいので、以下に主な登場人物を紹介する(人物たちの「年代」は『魔術師』時のもの)。

リンカーン・ライム

40代前半の白人男性。驚異的な教養と思考能力をもつ犯罪学者。もとはニューヨーク市警中央化学捜査部(IRD)の指揮を執っていたが、現場鑑識中の事故により第四頚椎を損傷。首から上と左手の薬指のみを動かせる四肢麻痺患者となった。

イリノイ州育ち。イリノイ大学で化学・歴史学の学位を取得。父親は国立研究所に勤務する科学者だった。ちなみに「リンカーン」という名は、第16代アメリカ合州国大統領エイブラハム・リンカーンにちなんでいる。現在はセントラルパーク・ウェストのタウンハウスに住む。

アメリア・サックスによると、リンカーン・ライムは俳優のロバート・デ・ニーロに似ているらしい。黒々とした豊かな髪。整形外科医の理想の具現化ともいうべき、ほっそり整った鼻と唇。鼻筋はトム・クルーズに似ている。

リンカーン・ライムは名探偵シャーロック・ホームズのもっとも正統的な末裔である。それは以下の引用を見れば分っていただけると思う。

犯罪学者とはまさにルネッサンス的教養人だ。
植物学、地質学、弾道学、医学、化学、文学、工学に通じていなければならない(『ボーン・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー、池田真紀子訳、文藝春秋より引用)。

アメリア・サックス

30代前半の白人女性。ニューヨーク市警鑑識課員。あだ名は「PD(Portable's Daughter)」。意味は「万年巡査の娘」。父のハーマンが生涯パトロール警官だったためである。現在はブルックリン・キャロル・ガーデンズのアパートに住む。

誰もが認める赤毛の美女である。以前はファッション・モデルをしていたが、28歳のとき警察入りした。身長172cm。母親からすらりとしなやかな体つきを、父親から美貌と職業を受け継いだ。ジュリア・ロバーツ似の唇。膝関節痛、閉所恐怖症の持病をもつ。また、爪の周囲の皮膚を引きちぎる、爪を噛み千切る、頭皮を掻き毟る、などの自傷癖もある。

スピード狂で1969年型シボレー・カマロをフルチューンしている。射撃の名手でもある。使用拳銃はフルサイズ40口径のグロック。

カーラ

『魔術師』で初登場。今後の作品にも登場することが期待される魅力的なキャラクター。

20代後半の白人女性。「カーラ」はステージネームで本名は明らかにされていない。現在イリュージョニストの修行中。オハイオ州出身で18歳からはニューヨーク在住。ブロンクスヴィルのサラ・ローレンス・カレッジの英文科を卒業。現在はイースト・ヴィレッジで1人暮らし。

少年のように短い髪をいまのところ赤みがかった紫色に染めている。引き込まれそうな青い目。透き通るように白い肌にはタトゥーもピアスの穴もない。黒く塗られた爪。身長は150cm そこそこだが均整のとれた体型。引き締まった強靭な腕の筋肉。ゴールド・ジムでウエイトトレーニングとトレッドミルの常連となっている。重度のコーヒー中毒。

アッパー・イーストサイドの老人介護施設に入所中の母親は痴呆症が進行している。

トム

年若き白人男性。リンカーン・ライムの介護と理学療法を担当するブロンドの美青年。口うるさい暴君のリンカーンに6週間以上つかえることができた唯一の介護士(前任者たちは半分がクビ、半分が自ら辞職)、最近は鑑識の助手も務める。女優・歌手のジュディ・ガーランド(Judy Garland)の大ファン。

ロン・セリットー

中年の白人男性。ニューヨーク市警殺人課警部補。「ブルドッグみたいにしぶとい男」といわれる仕事の鬼。大柄かつ太めの体型で常に減量を気にしている。着ている服がいつもしわくちゃ。離婚経験者だが現在は新しい恋人とブルックリンで暮らしている。映画『カサブランカ(原題:Casablanca)』のピーター・ローレ(Peter Lorre)にちょっと似ているらしい。

メル・クーパー

30代白人男性。ニューヨーク市警科学捜査研究所所属。一流の分析技術をもつ証拠鑑定の専門家。数学・物理学・有機化学の学位をもつ。頭が禿げかけて痩せている。ハリー・ポッターのような分厚い眼鏡。趣味は社交ダンスで、コンテストのタンゴ部門で優勝したこともある。恋人グレダはコロンビア大学高等数学科教授で目を見張るような北欧美人。

ローランド・ベル

30代後半の白人男性。ニューヨーク市警殺人課刑事。証人保護のエキスパート。ノースカロライナ州ホグストン出身。ノースカロライナ州立大学卒。妻をガンで失ない、ベンジャミンとケヴィンという2人の息子がいる、おだやかな顔。やせて長身。茶色の髪が薄くなりつつある。『エンプティー・チェア(原題:The Empty Chair)』(2000)で登場した女性保安官補ルーシー・カーとつきあっているらしい。2丁拳銃の射撃の名手。使用拳銃はグロックとブローニング。

フレッド・デルレイ

第1巻からのレギュラー・メンバーだが『魔術師』には登場しない。

中年の黒人男性。FBI マンハッタン支局員。「カメレオン」というあだ名を持つおとり捜査の達人だが、現在は第一線を退いている。身長190cm。筋肉質の身体。関節の目立つ黒檀のような肌。ふだんの一見がさつな言動に反して文学書・哲学書・政治学書を読むことを好む。ブルックリン育ちで今もブルックリンの小さなアパートに1人暮らし。使用拳銃はシグ・ザウエル。

ハーディ・ボーイズ

ともに40代の白人男性。ベディングとサウルという名の2人組の刑事。ニューヨーク市警本部殺人特別捜査班所属。容疑者の尋問と聞き込み捜査の名人コンビ。砂色の髪ということ以外は似ていないのに双子と呼ばれることもある。ブルックリン出身。

パーカー・キンケイド

40代の白人男性。ノン・シリーズ作品『悪魔の涙(原題:The Devil's Teardrop)』(1999)で主人公を務める。最近は「ライム & サックス・シリーズ」にもカメオ出演するようになった。

かつては FBI 本部文書課の責任者だったが、現在はフリーの文書検査士。離婚を経験し、前妻と2人の子供(ロビーとステファニー)の養育権を争っている。ヴァージニア州ファアファクス在住。恋人のマーガレット・ルーカスは FBI ワシントン支局の捜査員。

マレリック

『魔術師』事件の犯人。「マレリック(Malerich)」という名は、歴史的なマジシャンであるハリー・フーディーニの本名「エーリッヒ(Ehrich)・ワイス」へのオマージュ。また頭の「Mal」は「悪(evil)」の語源となったラテン語から。

ラスヴェガス出身。ブラックジャック・ディーラーの父とレストランのウエイトレスの母の間に生まれる。フーディーニから多大な影響を受け、10代のころは「ヤング・フーディーニ」と名乗ってステージに立っていた。15歳で家出して有名イリュージョニストに入門。

マジックは体力勝負の芸術であるため、健康的な食事とエクササイズに気を配っている。

(『魔術師』ジェフリー・ディーヴァー、池田真紀子訳、文藝春秋、2004)

(喜八 2005-01-07、改訂2006-10-09)

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