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『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』著者の遥洋子さんはタレントとして多忙な生活の中、大学に戻り勉強を再開する。そして自ら望んで、フェミニスト社会学者上野千鶴子教授のもとへ赴く。上野教授は大変に厳しい指導教官だった。ゼミの初日に学生が泣かされてしまう場面を遥さんは目撃する。
上野ゼミは大量の参考文献を読みこなす読書ゼミである。暗記してしまうくらい読み返しても意味が分からないような難解な文献を前にして、遙さんは途方に暮れる。更に上野教授は遙さんが何をしても怒るのである。一方まったく怒られない学生もいる。
遙さんは夜も寝ずに猛勉強を続けた結果、神経症にまでなる。深夜、勉強するためにコ−ヒ−を飲むと「爆睡」してしまい、ハ−ブティを飲むと目が覚めるのである。
なぜそこまでするのか?
なぜ人は勉強するのか?
すなわち、知れ、、そして、考えろ、解はひとつじゃない。それが学問だ。
文献を読んで、またひとつ知った。それは「正しいお勉強のしかた」だった(『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』より引用)。
勉強に「感動」を確認した遙さんは、その事実に感動を覚える。
そして「なぜ上野千鶴子なのか?
」についての答えも得る。
「感動を与えてくれるから
」だ。
『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』の存在は新聞書評により知った。最初は「ケンカ」という題名にひかれるものがあった。表紙のイラスト(後藤えみ子)も印象的だった。闘争の場に赴こうとする遙洋子。おそらく敵は多勢だろう。味方は誰もいないかもしれない。
遥洋子さんも相当な「武闘派」である。「この師にしてこの弟子あり」と思わざるを得ない。一冊の終わり近くに「ケンカのしかた・十箇条
」という章がある。きわめて実用的な論争の技術の数々が解説されている。知的闘争の場に臨もうというすべての人は読むべし。
この本のお陰で上野千鶴子に興味を抱いた。それまで名前だけは知っていたが、自分には関係ない人だと思っていた。大変な思い違いだった。
上野千鶴子を教えてくれた遙洋子さんに感謝したい。私もまた上野千鶴子に感動したから。例えば『ナショナリズムとジェンダー』(上野千鶴子、青土社、1998)の次のような一節。
「わたし」の身体と権利は国家に属さない。そう女は ―そして男も― 言うことができる。「慰安婦」問題が女性の「人権侵害」として言説構成されるのならば、「兵士」として国家のために殺人者となることもまた男性にとって「人権侵害」であると、立論することが可能だ(『ナショナリズムとジェンダー』より引用)。
これらの本の中で私が見た「フェミニスト上野千鶴子」像は、「たった一人でも世界中(の価値観)を相手に闘う人」だった。自分より強いものに挑みつづけて、負けることがなかった人。その姿に感動を覚えるのである。
(『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ
』遙洋子、ちくま文庫、2004)
(喜八 2002-12-19、改訂2007-11-17)
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