■ 喜八の本棚


    HOME喜八の本棚の目次→『インターネット書斎術』


『インターネット書斎術』 紀田順一郎

『インターネット書斎術』紀田順一郎

著者の紀田順一郎先生には20年以上前に何度もお目にかかっている。といっても通常の意味でお付き合いさせていただいたわけではない。私(喜八)が東京神田の某大型書店でアルバイト店員をしていたころ、先生がお客さんとしてしばしば来店されていたのだ。

紀田先生は黒皮製ショルダーバッグを肩に大量の書籍を速足で渉猟されるのが常だった。無骨な印象の人だったが、けっして威張らなかったので、店員のあいだでは人気があった。ちなみに書店員のような弱い立場の相手に対して居丈高に振舞う人は少なくないのである。

紀田順一郎。1935年横浜生まれ。出版論・書誌・日本語論・コンピュータとインターネットなどの分野で精力的な評論活動を展開。コンピューターの分野では日本語入力システム ATOK の開発にも参加している。本格派ミステリ小説家でもある。

インターネット書斎術』はそれほど厚くはない新書だが、全ページに有益な情報がぎっしりと詰まっている。ホームページ製作にあたって私は、かなりの部分を『インターネット書斎術』に頼ってきた。たとえば「ウエイトトレーニングを楽しむ」の基本方針のひとつ「インターネットを通じてポジティブな人間関係を築いて行こう」は本書のつぎの一節を言い換えているに過ぎない。

ホームページの最大のメリットは、なによりもホームページを持っている者同士のポジティブな人間関係 ── 知的交流や連帯感が生じることである(『インターネット書斎術』より引用)。

『インターネット書斎術』に通底するテーマは「インターネット時代における日本語の整備」であると、私(喜八)は考える(とんでもない的外れかもしれないが)。

聖書研究を起源に書籍の索引・検索という思想が発達してきた欧米に比べて、日本では近世まで書籍検索システムは存在しないも同然の状態だった。インターネットの時代になって初めて日本人の多くは検索という作業に直面することとなったのだ。

さらには日本語という言語は表記・記号・単位の不統一が現在にいたるまで改善されておらず、厳密な意味の正用法・正書法が確立されているとはいいがたい。そのような混乱状態でインターネット全文検索という新技術に突入してしまったため、日本語にまつわる混乱がより悪化しているのが現状だ。ひらたくいうと日本語でインターネットを使い難くなってしまっているのである。

各ユーザーの自発的な努力の総和で、日本語インターネット情報をひとつのデータベースとして構築し、インターネットを「市民のための創造的なメディア」へと育ててゆこうというのが著者の提言である(と思う)。

『インターネット書斎術』には有益な情報がそれこそ「てんこ盛り」なので、その総てを紹介することは到底できない。ぜひとも多くの人に通読してほしい一冊である。たとえば以下のような部分を読むだけでも、ホームページ製作をする際の大きな補助となるだろう。

インターネットの本質は双方向性や共時性などにあるのではなく、「たがいに自己発信を行うことによって新しい価値を創り出すこと」にある(『インターネット書斎術』より引用)。
インターネットの本質は「一にアップデート、二にアップデート」といわれるほどで、最新情報の開示こそが他のメディアを超える特性なのである(同書より引用)。
インターネットにおいて、単純な誤植や誤記が目につくことは、エディタシップの不在を示している(同書より引用)。

以上のアドバイスを私自身が活用できているかというとまったく自信はない。とくに最後の「エディタシップの不在」に関しては大いに問題ありだ。誤植や誤記を自サイトから駆逐することは「待ったなし」の大きな課題となっている。

(『インターネット書斎術』紀田順一郎、ちくま新書、2002)

(喜八 2004-08-14、改訂2005-11-09)

参考ページ


    << 『少年少女 世界推理文学全集』  本棚目次  『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』 >> ↑ 上に戻る  


喜八 e-mail: admin@kihachin.net