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『テキストファイルとは何か?』 鐸木能光

パソコンで文章を書く

『テキストファイルとは何か?』鐸木能光

著者の鐸木能光(たくきよしみつ)さんは、現代においてもっとも効率的な文章執筆法を実現するための手段として以下の点を主張する。

パソコンを使って書く(原稿用紙に手書きではなく)。
エディタを使う(ワープロソフトではなく)。
テキストファイル形式でデータを保存する(バイナリファイル形式ではなく)。

テキストファイルとは何か?』はパソコンを使って文書ファイルを作成し、そのファイルを十二分に活用しようとする人を主な対象として書かれている。これらをストレスなく効率的に行なおうとするなら、テキストファイルを理解することが必要となる。つまり現代人にとってテキストファイルは必須の教養科目なのだ。

テキストファイルとバイナリファイル

それではあらためて「テキストファイルとは何か?」と質問されたとき、はたしてどれだけの人が正確に答えることができるだろうか? そしてテキストファイルの重要性はどれほど理解されているだろうか?

一言でいえば、テキストファイルとは文字コード(記号・番号)だけで記述されたファイルのことである。テキストファイルは「世界共通の約束事」であり、どんなワープロソフト、エディタソフトでも読める。またデータベースソフトやブラウザなどでも読むことが可能だ。

テキストファイル以外をバイナリファイルという。バイナリファイルは各ソフトメーカーでそれぞれみな形式が異なり、互換性がない。それどころか同じ会社のソフトでもヴァージョンの違いで互換性を失うことも少なくない。

実際には大多数の人は無意識のうちにバイナリファイル形式でデータを保存している。一般的なワープロソフトである「ワード」や「一太郎」で文章を書き、保存すると半自動的に独自形式のバイナリファイルになる。テキストファイルにはならない。

テキストファイルの長所

「テキストファイル形式で保存した場合の長所」として著者はつぎのような点を挙げている。

・ファイルサイズが小さくて済む。
・ファイルを読み書きできるソフトは無数にあり、互換性がある。
・テキストファイルを扱うソフト「テキストエディタ」は、動作が軽く、作業効率がよい。
・将来、文字コード規格の主流が変わっても、以前に主流だった文字コードが読み出せないことは考えられず、ほとんど半永久的に使える。また、他の文字コードに変換することは、いつでも簡単にできる。
・ファイルが多少壊れても、読み出せないわけではないので、目で見て部分的に修復できる。
・GREPなどの検索ソフトで複数ファイルを一括検索できるので、特に何もしなくても、そのままデータベースとして活用できる(『テキストファイルとは何か?』より引用)。

バイナリファイル形式で保存すると以上の長所がすべて失われてしまう。それだけでなく、裏返しの短所が目につくようになる。すなわち、ファイルサイズが大きくなり、ワープロソフトは動作が重く作業効率が悪い、将来データを読み出せなくなる危険がある・・・。

つまり文書だけのファイルを作成するのなら、テキストファイル形式で保存する方が圧倒的に有利なのである。自分のつくった大切なファイルをバイナリで保存するのは、わざわざ不便なものに仕立て上げるようなものなのだ。

ディファクト・スタンダード

それならば、なぜその便利なテキストファイルが人に知られることが少なく、バイナリファイルでの保存を標準とした、「ワード」や「一太郎」のようなワープロソフトが市場を席巻しているのだろうか?

つまるところ、これは各メーカーの「ディファクト・スタンダード(事実上の標準)」争いの結果なのである。

メーカーにしてみれば、自社特有のバイナリファイル形式をディファクト・スタンダードとすることに成功すれば、巨大な利益を得ることができる。そのため各メーカーは、共通規格であるテキストファイル形式を忌避し、独自のバイナリ形式に固執する。

多くの消費者はメーカー側の都合に踊らされて、便利なテキストファイルに目が向かぬように遮眼帯をかけられ、バイナリファイルをいわば半強制的に使わされているのである。コンピュータの世界では「多数派」に従うことは一般に合理的な選択なのだが、この場合には当てはまらない。

文字コード

本書ではそのほか「文字コード大胆講座」「テキストファイルと出版界の未来」などテキストファイルに関する各分野の解説がなされている。

「文字コード大胆講座」では本来とっつき難い「文字コード」が巧みに解説されている。「そんな専門的なことは関係ない」という人も多いかもしれないけれど、言葉はだれでも使っているものなのだから一概に「無関係」とは言い切れないだろう。

鐸木能光

鐸木能光さんは、1955年福島県生まれ。小説家・作曲家・ギタリスト・大学講師・ITビジネスコンサルタントなど多彩な顔をもつ。長編小説『カムナの調合』や『黒い林檎』は他に誰も書くことができない、優れてユニークな作品だと私(喜八)は思う。

(『テキストファイルとは何か?』 鐸木能光、地人書館、2001)

(喜八 2003-09-27、改訂2005-11-13)

参考ページ


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