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2005年03月28日

『風の谷のナウシカ』

映画『風の谷のナウシカ宮崎駿監督(1984)について(2003-05-25 DVD 鑑賞)。

ストーリー》未来の地球を舞台とする壮大なファンタジー。かつて繁栄をきわめた文明社会は「火の7日間」と呼ばれる最終戦争により崩壊した。1000年後。陸地の大部分は「腐海」と呼ばれる有毒な瘴気を発する森に覆われていて、巨大な昆虫たちが支配する禁断の地となっている。

辺境都市ペジテの地下で最終兵器「巨神兵」が発見されたことにより、強大なトルメキア王国とペジテとの間に戦乱が生じる。両国のあいだに位置する小国「風の谷」は否応なしに争いの渦に巻き込まれてゆく。風の谷ジル王の跡継ぎナウシカ姫は、総ての生き物と世界を助けるために立ち上がった・・・。

感想》このアニメーション映画は公開時に映画館で鑑賞しました。感想は「とにかく理屈ぬきで面白い!」これに尽きます。さらに付け加えるなら「プラモデル少年(青年)がつくったのだなあ」という印象もありました(それが間違っていないことは後に分かりました)。

まず最初の腐海のシークエンスでナウシカが所持している「長銃」は第二次大戦中にドイツ軍が使用していたマシンガン「MG-34」に酷似しています(ナウシカの銃は単発式ですが)。

ナウシカが自由自在にあやつる軽飛行機「メーヴェ」が上方や後ろから見ると第二次大戦時ドイツのロケット戦闘機「Me163B(愛称:コメート)」に似ていることは経済学者野口悠紀雄氏が指摘されています(「『風の谷のナウシカ』に関する主観的一考察」、『「超」整理日誌』新潮文庫収録、なお野口教授のこの論文は漫画版『ナウシカ』を対象としています)。

トルメキア軍の大型飛行艇は、これも第二次大戦時ドイツ軍の巨大輸送機「Me323(愛称:ギガント)」と、前から見た姿がそっくりです。機首が大きく開き中から戦車を吐き出す、敵の攻撃に弱く簡単に撃ち落されるなどの特性も共通しています。

そしてトルメキア軍の戦車は第二次大戦時イタリア軍の突撃砲「セモベンテ」を彷彿させます。

これらの相似は私(喜八)自身がかつてプラモデル少年であったため気づいたのです。国内の田宮模型、イタリアのイタレリ社などの製品を通じてお馴染みであった軍用機・戦車・銃の面影が『ナウシカ』には次々と登場します。

ずっと後に宮崎駿監督の著書『宮崎駿の雑想ノート』大日本絵画(1992)を読み、かつての宮崎氏が熱狂的なプラモデル青年であったことを確認しました。

ところで『ナウシカ』の世界は未来の地球ということが明らかになっているのですが、はたしてどこなのか? という疑問があります。この点について前述の野口悠紀雄氏は次のように推測しています。

いずれにせよ、この物語の舞台が中央アジアであることは、疑いない。第三、四巻に添付されている地図は、トルコから中央アジアにかけての地図の東西を圧縮し、鏡像にしたものと見えるのだが・・・・・・(「『風の谷のナウシカ』に関する主観的一考察」より引用)。

なお引用文中「第三、四巻」とは原作の漫画本を指します。

また野口教授はトルメキアの皇女クシャナと部下の将兵が身に着けている鎧が映画『アレクサンドル・ネフスキイ(原題:Aleksandr Nevskiy)』エイゼンシュテイン監督(1938)に登場する13世紀ゲルマン騎士団の甲冑とそっくりであることも指摘しています。

『風の谷のナウシカ』はスタジオジブリ作品の中では『天空の城ラピュタ』とならんで、際立ってミリタリー嗜好が強く、そして激しい暴力描写を含んでいる作品であるということができるでしょう。

これらの点に関して宮崎駿監督に反省があったのか、後の作品群ではミリタリー嗜好、暴力描写は控えめ、あるいは皆無のものが多くなってきます(『となりのトトロ』『魔女の宅急便』『千と千尋の神隠し 』など)。

また今回 DVD 鑑賞して気づいたのは『ナウシカ』では登場人物たちが西洋人の顔をしているということです。新旧作品を比較してみると新しい作品ほど登場人物たちが「東洋人の顔」となってきたことが分かります。

以上瑣末な点をいろいろと考察してみましたが、映画『風の谷のナウシカ』が「とにかく理屈ぬきで面白い」作品であることには間違いありません。これで何度目の鑑賞になるかは覚えていませんが、今回もしっかり楽しめました。


投稿者 kihachin : 2005年03月28日 19:09

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コメント

TBとコメントありがとうございました。
「風の谷・・・」の世界は圧倒的ですね。
僕は映画を最初に見ましたが、その後マンガを読んで完全にノックアウトされました。
同時にTBいただいた宮崎駿の本にもノックアウト。
こういう人が同時代の空気を吸っていると言うことが嬉しいですね。

投稿者 fuRu : 2005年03月29日 17:05

fuRu さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
『ナウシカ』は私も最初に映画を観て、後に漫画を読みました。漫画は完結するまでが長かったですね(笑)。
いまでは、どちらかというと漫画のほうのファンかもしれません(もちろん映画も素晴らしいと思います)。

> こういう人が同時代の空気を吸っていると言うことが嬉しいですね。

まったく、同感です。
「次回作はどうなるのか?」と今から楽しみにしています。
いささか気が早すぎるようですが・・・。

投稿者 喜八 : 2005年03月30日 12:20

はじめまして。ありすです。先日はTB&コメントどうもありがとうございました!ナウシカ、本当に良い映画です。宮崎アニメの中で一番好きな映画なんです。オウムはちょっとダンゴムシ風で怖い一面もありますが・・・。(ダンゴムシ苦手なんです。)私はこのナウシカの「ナウシカ・レクイエム」という曲がすっごく好きなんです。幼少の頃、凄く寂しいシーンにちょっと涙しました。(笑)オウムの子供をしっかりと抱いては「お願い、殺さないで!」と必死に訴えるナウシカの姿が未だ頭の片隅にあります。何度も観たくなる映画ですよね。

投稿者 ありす : 2005年05月09日 12:26

ありすさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
私も宮崎駿監督の作品では『ナウシカ』が一番好きです(そのわりにはブログ記事では詰まらないことばかり書いていますが・・・)。その次が『ラピュタ』です。
ナウシカのモデルは一説では宮崎監督のお母さんだそうですね。
それで『ラピュタ』の女空賊ドーラもお母さんがモデルなのだとか(外見ではなくて精神の)。

> 私はこのナウシカの「ナウシカ・レクイエム」という曲がすっごく好きなんです。幼少の頃、凄く寂しいシーンにちょっと涙しました。(笑)オウムの子供をしっかりと抱いては「お願い、殺さないで!」と必死に訴えるナウシカの姿が未だ頭の片隅にあります。

あの曲は「ナウシカ・レクイエム」というのですか?
いままで知りませんでした。
すごくいい曲ですね。私も大好きです。
ありすさんのおかげで知識がひとつ増えました。
どうもありがとうございます~。m(__)m

投稿者 喜八 : 2005年05月09日 20:31