【お勧めの本】深尾葉子『魂の脱植民地化とは何か』青灯社(2012) 更新!

« 筋肉を鍛える:サイト紹介 | メイン | 05-07~05-13の有酸素運動 »


2005年05月11日

池田満寿夫さん

池田満寿夫

池田満寿夫さんに会ったことがある」と知人に話したら、妙に感心されてしまいました。「なんだかよく分からないけれど(喜八は)凄い」と勘違いされたようです(笑)。
たしかに池田さんはいろいろな意味で物凄い人でしたけれど、私(喜八)はぜんぜん凄くないヤツです。

じつは池田満寿夫さんに会ったことがあるとは言っても、学生時代私がアルバイト店員をしていた東京都内の某大型書店に、池田さんが何度かお客さんとしてみえたことがあるというだけなのです。個人的に親しかったわけでは全然ありません。

池田さんとのやり取りも以下のような事務的な内容がほとんどだったと記憶しています。

池田: この本ある?
喜八: ございません。お取り寄せいたしましょうか?
池田: いや、今日はいいや。

が、そのような短いやりとりだけでも、池田満寿夫さんは強烈な印象を周囲に与える人でした。

最初にいらした時は池田さんだということに気づきませんでした。売り場で本棚の整理をしていた私に話しかけてきたのは、ニコニコと満面の笑みを浮かべた元気な人でした。思わず旧知の人かと勘違いするほど、親しげな様子でした。話の内容はやはり本のことだったと思います。

身長168cm の私とおなじくらいか、やや小柄。姿勢がよくて声が大きい。年齢的にはまぎれもないオジサン世代なのですけれど、全身から発する雰囲気はまさに青年(あるいは少年)のもの。とにかくエネルギーを感じさせます。服装はまるで有名人らしからぬ地味なものでした。その時は黄色っぽいポロシャツと綿のパンツを着ていらしたと思います。

池田さんが突風のように過ぎ去った後、近くにいた他のお客さまが「あの方は池田満寿夫さんですね」と教えてくれました。

それ以前に私は池田さんの文章(自伝的なエッセイ)を読んだことがありました。文章から想像するところの著者はいかにも芸術家風の白皙の貴公子というイメージでした。現実の池田さんは想像とはまったく別の気さくな印象の方でした。

後に池田さんの伴侶の佐藤陽子さんの書いた文章を読んで、池田さんが大変な読書家であったことを知りました。池田さんと佐藤さんが一緒に暮らし始めたとき、池田さんが持ち込んだ99個のダンボール箱のうちなんと91個の中身は本だったそうです。

また佐藤陽子さんは、池田さんは誰にも親切で給仕さんのような人にもけっして威張ることがなかったので皆に好かれた、という内容のことを書かれています。私が知る限りでは佐藤さんの発言は100パーセントの真実です。おそらく同じような記憶をもつ人は世界中に大勢存在するはずです。

接客業・サービス業に従事したことがある人なら誰でも知っているでしょうけれど、「お客様」に反抗することのできない弱い立場にある者に威張り散らす人はけっして少なくないのです。世間では有名人・著名人で通っているような人にも「威張りやさん」は結構います。

池田さんの芸術が「嫌い」という人でも、池田さんが凄い実力の持ち主であることは否定できないでしょう。そして世界に名前を轟かすような有名人であるのに、ぜんぜん威張らない。いや、実力があるからこそ威張らない。

池田満寿夫が「凄い」ということは周りの誰もがすでに知っているのだから、威張ってみせたり虚勢を張ったりする必要はどこにもなかったのだろうと思います。

その後20年以上が過ぎ、私もいろいろな人を見てきました。
威張らない人、威張る人。他者威圧をする人、しない人。
やはり「ホンモノ人間」は、威張らない人、他者威圧をしない人に圧倒的に多いのだなあという実感があります。
そして池田さんのことを思い出すたびに「いい人だった」と懐かしい気持ちになります。

多くの人々が、「偉大だった」、「なんたる損失」と心から思ってくれている。才能だけではない。彼は誰に対しても優しかった。見かけによらず、心が大きく、強い人であった(『MASUO MY LOVE』佐藤陽子、ケイエスエス、1998より引用)。

投稿者 kihachin : 2005年05月11日 20:02

« 筋肉を鍛える:サイト紹介 | メイン | 05-07~05-13の有酸素運動 »



トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://kihachin.net/klog/mt-tb.cgi/412

コメント

ほんの偶然ですが、私も、池田ご夫妻にお会いした事があります。
それは、たまたま私が勤めていた会社の社長夫妻がご夫妻とお知り合いで、仕事の縁でお宅にうかがった事があるのです。
私は日本の美術界には全く疎かったので、氏がどんな人であるかを知ったのは、なんと、なくなった後でした。
多方面にいろいろな才能を発揮した人だったのだな、とびっくりしたのでした。
それだけ、見かけは「普通の人」だったんですよねえ……。

投稿者 とら : 2005年05月12日 23:15

とらさん、こんにちは~。

とらさんも池田さんに会ったことがおありですか!
たしかに外見は普通の感じの人だったですね。
それだけ「ハッタリ」とか「見栄」とかに無縁の人だった・・・、と池田満寿夫ファンの私は考えます(笑)。

芸術の分野だけでなく、企業経営の世界でも、豪華な社長室、高級外車の社用車、高級腕時計、美人秘書がゾロゾロ、といったような社長はダメ、つまり企業価値を高めることができないといいます。

自信がないから、自分を実力以上に見せたがるんですね。
またそういう人に限って、傲慢な態度をとることが多いようです。

投稿者 喜八 : 2005年05月13日 12:45