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2005年10月18日

堀江・村上・三木谷

 堀江貴文(ホリエモン)vs. ニッポン放送
 村上世彰 vs. 阪神電鉄
 三木谷浩史 vs. TBS

2005年に入ってから上記の企業買収劇が世間を騒がせています。そして巷では「それにしても彼ら(堀江・村上・三木谷)は何を考えているのだ?」という声をよく聞きます。「金儲けをしたいのは分かるが、嫌われるのを承知でなぜ強引な企業買収をしかけるのだ?」という疑問です。もちろん、私(喜八)にも本当のところなんか分かりません(笑)。野次馬の気楽さでエーカゲンなところを書いてみます。

おそらく堀江・村上・三木谷の3氏には、ニッポン放送・阪神電鉄・TBSという会社が「鴨がネギを背負っている」状態に見えているのです。それも「巨大に太りかえった鴨が黄金のネギを背負っている」ような絶好の獲物に。あまりに「美味しい」獲物が無防備で闊歩しているので、手を出さずにはいられない。「文句ならあっち(ニッポン放送・阪神電鉄・TBS)に言ってよ。オレらは肉食獣なんだから獲物があれば頂きますよ」というのが3氏の本音なのです(たぶん)。

現在、アメリカ合州国・イギリス・日本などで主流となっている新自由主義的経済思想。このイデオロギーの本質を端的にいえば「弱肉強食(適者生存)」です。市場において勝つものは正しい。負けるものは正しくない。漫画家の故・青木雄二氏風に身も蓋もなくいうなら「弱い奴など食うだけ食うたれ!」が新自由主義です。そして新自由主義的弱肉強食市場では「強い相手とは戦わず弱者のみを相手にする」のがもっとも合理的な戦法となります。

たとえばいまや猖獗(しょうけつ)をきわめるヤミ金融は多重債務者という「弱者」のみを対象にします。振り込め詐欺や住宅リフォーム詐欺は世間知らずの小金持ちという「弱者」を狙います。さらにいうなら新自由主義=弱肉強食の本家であるアメリカは弱い国ばかりを選んで戦争をしています。これらの不合法ビジネス・戦争ビジネスでは権力・知恵・武力に恵まれた強者に手をだすのはご法度です。強烈なしっぺ返しを受ける可能性が高いからです。

企業買収の話に戻ります。堀江・村上・三木谷氏の目にはニッポン放送・阪神電鉄・TBS各社の経営陣がせいぜい「世間知らずの小金持ち」程度にしか見えていないのではないでしょうか。「勝てる勝負だから勝ちにいく」「弱い奴など食うだけ食うたれ!」が(けっして公言できない)堀江・村上・三木谷氏の本音だろうと思います。

高度成長期に人格を形成し強大な官僚システムの指導の下に企業運営を行なってきた経営者たち。彼らはかつては強者であったけれど、時代の波に乗り損なってすっかり弱体化している。でも主観的には現在も「自分は強者だ」という認識がある。そういう人物が膨大な資産を管理している。まさに絶好の獲物、「巨大に太りかえった鴨が黄金のネギを背負っている」ような獲物。堀江・村上・三木谷氏からは以上のように見えているのでしょう。

世間からは「強者」と見られてきたものがいつのまにか「弱者」となっていた(あるいは「弱者」が「強者」)。こういう価値の大逆転があちらこちらで発生しているのが現代社会です。その価値の逆転が、一般のビジネスでは企業買収、巨大な戦争ビジネスではイラク情勢の混迷として具体化している、そう考えるとすっきりします。

このごろはよく「下克上の乱世到来」といったことを考えます。現在は強者のポジションをとる堀江・村上・三木谷氏もいつかはより若くてより強い肉食獣の軍門に下る可能性が高いのです。彼らにたいしては何の悪感情も恨みもありませんが、これは冷厳な事実として指摘しておきます。マーケット(市場)で永遠に勝ち続ける者はいません(負ける前にやめるプレイヤーはいます)。3氏の今後の出処進退には非常に興味があります。

こういう時代に「鴨」にならないためには、どう生きたらいいのか? これはきわめて難しい問題です。自分としては「弱い奴など食うだけ食うたれ!」と割り切ることもできそうにないし、「鴨としての人生をポジティブに(?)許容する」というのは肌に合いません。とりあえずブログでボヤキめいた記事を書いてみる。こんなハンパなことをやっている奴(つまり私)が一番危ないのかもしれません・・・。


投稿者 kihachin : 2005年10月18日 19:08

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コメント

↓のほうにも書き込ませていただきましたが
ここにもコメントさせてください


企業買収劇に関する喜八さんの意見
スパっと分かりやすく 勉強になりました 
私にはあまり難しいことはわかりませんが
本当にその通りだと思いました

そして・・
「ボヤキめいた・・」という言葉でまとめていらっしゃるところに
喜八さんのお人柄がでてますね(笑)

投稿者 MACO : 2005年10月18日 19:55

TBありがとうございました。とても楽しく読ませていただきました。私の殴り書きとは大違い・・・ハハハ。
確かに「新」自由主義とかIT長者とか言いますけど、やってることは「ナニ金」と同じですね。勝てる勝負しかしないのも理に適ってるますし。あくまで戦術レベルですが。
しかし、彼らにしても、「大きな流れ」に乗れたからここまで成り上がれたに過ぎないわけで、いずれ他の誰かに取って代わられるという意味ではアイドル歌手と同じようなものですね。
まあ私たち庶民は、時々ぶつぶつ言いますけど、所詮野次馬なわけで、基本的には怪我しないように細く長く(しかし、図太く)生きれて生きていこうと思います。
あ、でも「鴨としての人生をポジティブに許容する」っていう言い方、結構受けましたよ。なんかそれってマゾっぽいですけど。

投稿者 非国際人 : 2005年10月18日 20:29

こう思うのです。例えば

もしフットボールに関係した商売をするなら(球団買収からバッタグッズ販売まで)別に必ず「フットボールを愛せ!」とは言いませんが、「フットボールに興味は無いが、商売になるから関わってる」のならせめて「私はフットボールを愛しています!」という「嘘」は吐かないで欲しい。「愛は無い」と宣言する必要は無いですが、在りもしない愛を商売の為に口にしないで欲しい。・・・と書いていくとなにやら男女の話の様ですが(笑)

「ボールを見てない奴が多すぎる」という、海外のサッカー記者の言葉は身に滲みます。そして日本人に「商売の為だったら何やってもこっちの勝手だろう?」という輩の増えた事にも。

お前等、田口壮の日記読め!と言いたいです。株屋ども。

投稿者 タナカカズヒコ : 2005年10月18日 20:40

私の知人に「人を騙すより、人に騙される方がまし」と口走るのが好きな人がいます。私は騙す趣味はありませんが、騙されるのもご免被りたい。

大矢明彦が横浜ベイスターズの監督だった時、野村ID野球の影に脅える選手たちに、こんなことを言ったそうです。
「相手がやってきそうな、俺が予測できることは、防ぎ方は全部、おまえたちに教えるから、防ぐことだけでいい」
相手の裏をかいて、こすっからくやるよりも、選手たちが一生懸命、怖がらずにプレーする野球を目指したい、というのが大矢の考えでした。
敵の罠に備えはするが、自分で罠をかけることはしない。
肉食獣でもないが鴨でもないという第三の道は、このへんにあるのかな、という気がします。

投稿者 念仏の鉄 : 2005年10月19日 00:35

念仏の鉄さま

同感です。それをこの島国では「矜持」とか「志」といって、大事にして来たはずなのですが。お金というものは「ハイリスクハイリターン」の博打なんだなと痛感します。

投稿者 タナカカズヒコ : 2005年10月19日 07:59

> MACO さん

野次馬の無責任な観測ですから、テキトーに読み流してください・・・。

>「ボヤキめいた・・」という言葉でまとめていらっしゃるところに
> 喜八さんのお人柄がでてますね(笑)

まさにボヤキなのです。
「だからどうした?」と反論されれば一言もないという。
ブログ記事を書いてみて自分でも「なんだか空しいな」という気持ちなのです(笑)。

投稿者 喜八 : 2005年10月19日 17:18

非国際人さん、こんにちは。
ご訪問ありがとうございます。

じつは非国際人さんの「TBSなどくれてやれ」その他の記事を読んだことがヒントになり、この記事を書きました。最初のうちは「阪神電鉄もTBSも経営陣が間抜けだな」と単純に思っていたのですが、「あえてTBSを擁護してみる?」を読んだことにより視点が変わったのです。

> まあ私たち庶民は、時々ぶつぶつ言いますけど、所詮野次馬なわけで、基本的には怪我しないように細く長く(しかし、図太く)生きれて生きていこうと思います。

同感です。特に「怪我しないように細く長く(しかし、図太く)」の部分が。金融資産を市場で運用して「勝ち続ける」というのはある意味で特殊能力です。シロートでも1回や2回なら勝てるでしょうけれど、長期間のなかで平均して勝つというのは困難でしょう。やはり、「1.本業で稼いで」「2.無駄遣いしないで」「3.余分な税金を払わない」という方針で行くのがいいと思っています。

> あ、でも「鴨としての人生をポジティブに許容する」っていう言い方、結構受けましたよ。なんかそれってマゾっぽいですけど。

そういう割り切り方をしている人も多いような印象があります。それはそれで悪くないのかもしれません・・・、が、私は嫌ですね。

投稿者 喜八 : 2005年10月19日 17:19

タナカさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

> 「愛は無い」と宣言する必要は無いですが、在りもしない愛を商売の為に口にしないで欲しい。・・・と書いていくとなにやら男女の話の様ですが(笑)

「金銭愛」とか「事業愛」というものを前面に押し立てて戦うのは不利と判断しているのでしょう。「オレはとにかく金を集めたいんだ!」とか「理屈ぬきに事業を拡大したい!」思っていても、なかなか口にだせません。でも、これらの企業買収劇の本質はそこにありそうです。

とはいえ私自身も「お金大好き」の資本主義者だから人のことをとやかく言えません・・・(上のブログ記事は「とやかく」そのものですが(汗))。

> お前等、田口壮の日記読め!と言いたいです。株屋ども。

「株屋ども」も社会には必要なのでしょう。もし株式市場が存在しなくて、すべての事業資金は銀行から借りるしかないとしたら、企業という企業は銀行の下請けみたいになってしまいます。もしそうなったら、これは「銀行独裁制」です。そう考えると株式というのは意外に民主主義的な要素があると思います。

なお、村上ファンドと楽天に関しては以下の記事も興味深いですよ。
ジャーナリストの山岡俊介さんのブログの記事です。

「村上ファンド・楽天連合、実はすでに50%近くを買占め完了か!?」
http://straydog.way-nifty.com/yamaokashunsuke/2005/10/post_efaa.html

投稿者 喜八 : 2005年10月19日 17:20

念仏の鉄さん、こんにちは。
コメントありがとうございました。

念仏の鉄さんの大矢明彦さんに関する記事を拝読して、あらためて大矢さんに注目しました。大変に高い能力をもっているわりに人柄が地味なためか損をされているようですね。今後は私も大矢さんを応援するつもりです。

> 敵の罠に備えはするが、自分で罠をかけることはしない。
> 肉食獣でもないが鴨でもないという第三の道は、このへんにあるのかな、という気がします。

もやもやと考えていたことにハッキリとした形をつけていただいたような心境です。「第三の道」あるいは「第四の道」「第五の道」・・・といったような豊富なオルタナティブがあることが望ましいですね。アメリカ型の「白・黒」「善・悪」「勝ち・負け」といった単純な二元論は端的に「退屈だ」と思います。

投稿者 喜八 : 2005年10月19日 17:21

喜八さん、こんにちは。
トラックバック、有難うございます。こちらからも、返させて頂きました。

喜八さんの記事を読ませて頂いての感想ですが…この3つのケースは、やはり分けて考えた方が良いのではないかと思います。

まず、村上ファンドのケース。村上さんの立ち位置は、あくまでファンド・マネージャーであって、取得した株式の価値を高めるべく株主として企業に様々な提案を迫る、と言うもので、これが「物言う株主」と言われる所以ですが、村上さんは株主権を行使するだけで、直接経営執行に立ち入ることはありません。

村上さんならずとも阪神電鉄株が非常に「値ごろ感」のある株式であったことは知るところで、村上さんはファンド・マネージャーとしてこれを買い続けました。従前、典型的日本企業では「相互持合い」の安定株主工作が行われ「シャンシャン総会」によって、本来、株主権の行使の場である株主総会が形骸化していました。むしろ、株主の権利に対する意識の希薄性が問題視されていた訳です。出資者である株主が経営に対して提言を行うのは、資本主義下の株式会社制度では当然のことで、私はこのことには違和感は全く持っていないのです。

株主である村上ファンドは保有株式価値向上のための提案をする。経営サイドにとって受け入れられるものであれば、経営陣はそれを実行し、株式価値の向上に努める…と言うだけのことで、「買った」「買われた」とか「強者が弱者を併呑した」と言う話ではないと思います。一連の報道は、私の目にはウェットに過ぎて、株式会社制度に関する誤解があるのではないかと思います。そもそも、魅力の無い投資先であれば、ファンドには見向きもされない訳ですから、経営者としては(何か不透明な経営でもしていない限りは)むしろ歓迎すべき話である筈です。

次に、ライブドアのケース。これも「強者が弱者を…」と言う「勝てる勝負だから勝ちにいく」「弱い奴など食うだけ食うたれ!」と言うワンサイド・ゲームではなかったことは明白です。ライブドアの資本比で融資額は大き過ぎる「無理筋」に近い話で、かつ許認可権限に守られた放送局の経営権を手中にすると言うのは「小が大を征そうとする」博打に近いものだったと思います。堀江さんは「想定の範囲内」と言うでしょうが、尋常に考えて、ライブドアに多額のキャッシュ・インが齎されたことは正直言って予期できない事態でした。

ビットバレーのベンチャーそのものであったオン・ザ・エッヂ時代から眺めさせて頂いて、堀江さんの「小が大に挑む」と言うスタンスは、その頃から確立されていたと思います。対NTTにしても対イーバンクにしてもそうですが、これまでも決して無傷だった訳ではありません。とてもクレバーなジャッジメントをその時々でしていて、ダメージを最小限に食い止めていたことは理解できますが、それにしても強運でした。彼は「負け戦はしない」と言うタイプの経営者ではないと思っています。

三木谷さんのケースに行き着くまでに既に充分長くなってしまいました。ちょっと三木谷さんと言う経営者には私はどうも関心を持てないものですから…こちらは割愛させて頂きます…。このブログで村上さん、堀江さんの擁護とも取られるような発言をすると、とても肩身が狭い感じがするのですが(苦笑)、それぞれのバックグラウンド、時々の情勢による部分も大きいものですから、この3つのケースを括り出して、新自由主義の下では~と纏められると、それはやや雑駁なのではないでしょうか、と僭越ながら、思いました。

「宵越しの銭は持たない」「武士は喰わねど高楊枝」は江戸の美意識でしたが、こうした金銭に恬淡とした気質に「勤労の美徳」付け加えれば、安価で勤勉な労働力が国内で賄えると言うことで、明治以降、富国強兵政策の産業力を担うに至ります。「お金に拘泥するのは卑しいことだ」と言う意識がお上にとって有効であったことは確かだと思います。

ただ、誤解なきよう付言しますと、私個人の価値観は、堀江貴文さんのそれとはかなり異なると思っています。私の実存にとってお金がそれ程の価値を持つものではないからです。資産を失う恐怖は感じますが、結局のところ「カエサルのものはカエサルへ、神のものは神へ」とも思っています。単にmake moneyのためだけに事業を営むとすれば、少なくとも私にとっては、それは随分と虚しいものだとも思います。

しかし、村上さん、堀江さんの件に関しては、個別に判断した方が、違った理解の仕方もできるのではないかと思いまして…長文にて失礼しました…。

T.D.

投稿者 tropical_dandy : 2005年10月20日 10:58

tropical_dandy さん、こんにちは。
いつも的確なコメントをお寄せいただきまして、ありがとうございます。

> この3つのケースを括り出して、新自由主義の下では~と纏められると、それはやや雑駁なのではないでしょうか、と僭越ながら、思いました。

これはまさにその通りです。「雑駁」という点は間違いありません(汗)。
ただ、大雑把にものごとを捉えることが役に立つ場合もあると思うのです。
村上氏・三木谷氏・堀江氏の関係をみると、村上氏が強力な資本主義イデオローグで三木谷氏・堀江の2氏はその忠実な弟子というように見受けられます。さまざまなメディアが流している「3氏は連携している」という憶測はそれほど外れてはいないように思います。

村上氏の怖さというのは「正論の怖さ」なのですね。
「仮にも資本主義と名乗っている以上、最低限これくらいのスジは通してくださいよ」というのが村上氏の論法です。そして、これ以外のことは一切言っていないのです。
そのため村上氏・三木谷氏・堀江氏の行動はあくまで正論に基づいた筋の通ったものになります。

これに反して買収を仕掛けられた側には「理」がないので、苦し紛れに「行儀(礼儀)」や「心情」を持ちださざろう得ないのかな? と思っています。彼ら経営者がいままで「行儀」や「心情」を墨守して渡世してきたとは想像しにくいのですけれどね(笑)。

「弱いものと戦う」というのは新自由主義だけでなく、すべての兵法の基本でしょう。
tropical_dandy さんが指摘されているように、結果的にライブドアの勝利はきわどいものではあったのでしょうし、形としては「小が大に挑む」となるのでしょうけれど、戦いを仕掛ける時点で堀江氏には相手が「裸の王様」に映っていたと私は想像します。「ボンクラが王様であるなら、俺が王国をもらってやろう」という発想なのだろうと思います。

> 彼は「負け戦はしない」と言うタイプの経営者ではないと思っています。

これはどうでしょうか? スポーツと違ってビジネスでは強い者に勝ったからといって誰も誉めてはくれません。もし負けたら「アホやな」と馬鹿にされるだけでしょう。記事の中でも指摘したように「世間からは「強者」と見られてきたものがいつのまにか「弱者」となって」いる状況を最大のチャンスとみて攻撃を仕掛けたというのが合理的な見方だと思います。もちろん、それでも負けてしまうということはあるのですが・・・。

個人的にはこんなイメージもあります。
金融業界と並ぶ「護送船団」でやってきた「プロ野球」や「メディア」業界。
彼らを狙っているのは村上提督率いるUボート船団「ウルフパック」。
いまのところ、護送船団側はいいように魚雷を打ち込まれて、被害を受ける船が後を絶たない・・・。

> このブログで村上さん、堀江さんの擁護とも取られるような発言をすると、とても肩身が狭い感じがするのですが(苦笑)、

いえ、そんなことはありませんよ(笑)。今年2月20日の買い出動宣言以来、私はライブドア株をちびちびと買い続けています。それは「虎の子」であるおカネを預けるのは堀江氏のような「甘いところのない」「自分より年下の」人物がいいと判断してのことです(リスクヘッジをかけるため某投資信託も買っています)。

私は小泉・竹中・木村ラインの新自由主義的な改革路線にはあくまで反対ですが、それは市場原理を国民生活の隅々にまで適用させようという乱暴さに反対しているのです。市場(マーケット)が市場原理で動くのにはまったく反対しておりませんし、個々のプレイヤーが新自由主義的なスタンスをとるのにも反対しません。ただし、市場に強力な制限をかけルールを遵守させることは必要だと考えます(その点は木村剛氏に近いですね。ただ木村氏の最近の「政権にすりより姿勢(?)」には不安を覚えます)。また、ある意味では市場は「剣闘士が戦うコロッセウム」のような存在であることが好ましいと考えています。この辺りは説明すると長くなりますので、いずれブログ記事にしたいと思っています・・・。

投稿者 喜八 : 2005年10月21日 13:14

喜八さん、こんにちは。レスポンス有難うございます。

>これはどうでしょうか?スポーツと違ってビジネスでは強い者に勝ったからといって誰も誉めてはくれません。もし負けたら「アホやな」と馬鹿にされるだけでしょう。

ちょっとここは喜八さんと意見を異にするところですが、ビジネスと言っても様々な進め方があり、これは経営者のキャラクターに依存する部分が大きいのです。また、その企業の成長フェーズにも依存します。誰かが褒めてくれるとか「アホやな」と馬鹿にされるとか言ったことは、第三者が結果だけを見て言うことです。

事実、ライブドアのビジネスでは微妙な(リスキーな)ところは多いですし、「アホやな」と思われている論考などは存在しますが、実ビジネスを行っている堀江さんは気にも留めないでしょう。

「『弱いものと戦う』というのは新自由主義だけでなく、すべての兵法の基本」、つまり定石ではあるのでしょうが、ビジネスにおいて業容を拡大させるために奇策を執る局面もありますし、「賭け」に近い経営判断を行うこともあります。旧オン・ザ・エッヂからの彼らの言行には危うさも大きい。これは来歴を見れば分かることです。

「負け戦はしない」と言うタイプの経営者、と言う表現は「多分にリスキーな意思決定を行う経営者」と言い換えても構いません。「基本」とか「合理的な見方」から見て「そんなことは普通しないよ」と言うことをこれまで敢えてすることで業容を拡大してきた企業は数多くあります。現在のライブドアもその一つです。

また、その企業が成長期にあるのか成熟期にあるのか、どういうフェイズにあるのかで、執りうる戦略も違ってきます。「弱いものと戦う」と安全サイドばかり見ていたら、企業として成長するチャンスを逃してしまうかも知れません。

更に、ライブドアのメディア戦略が「旧弊を打破する」「既成の組織に(小が大に)挑む」ことを喧伝し世間の耳目を集めることを採用し始めたのは、世間の耳目を集めたのは株式100分割あたりからでしょうが、大阪近鉄騒動を契機に明確になりました。(ただ、ライブドアがそういったスタンスを執っていることと、彼らが実際に「旧弊を打破する」集団であるかは、また別の問題として捉える必要があると思っています。)

>記事の中でも指摘したように「世間からは「強者」と見られてきたものがいつのまにか「弱者」となって」いる状況を最大のチャンスとみて攻撃を仕掛けたというのが合理的な見方だと思います。もちろん、それでも負けてしまうということはあるのですが・・・。

それはどうでしょうか?実際、総務省の許認可の下、電波割当てを受けている放送局は現在でも特権的な存在です。ただ、フジサンケイグループの場合、資本構成に「歪み」が生じていて、ライブドアはその「歪み」を突こうとしただけで、ニッポン放送なりフジテレビジョンなりが「弱者」となった、と言うのは飛躍があり現状認識として適切ではないのではないでしょうか?(現に、ライブドアはキャッシュは手にしましたが、彼らが掲げた「放送と通信の融合」を軸としたフジテレビジョンとの提携は手付かずのままです。)

言わば、どの業界でも資本構成でも「歪み」と言うのは存在する訳で、ライブドアはその「歪み」、間隙を突くことに成功しました。「強者のちょっとした弱点を突いた」だけであって、フジサンケイグループ自体はびくともしなかったことにも注意が必要です。また、これはビジネスにおいては、典型的なニッチ戦術と言いますか、言わば「弱者の戦術」です。

シンボリックに「新自由主義における強者」としてライブドアを取り上げるのは、本質を見誤る可能性があり、これがただ「ためにする議論」ならば害はないのですが、時として危険ではないでしょうか。基本に忠実に合理的にライブドアの行動を理解しようとしても、本質から逸れているのではないかと思います。

例の「光通信ショック」で所謂「ネットバブル」が崩壊したのは2000年のことでした。市場におけるプレイヤーは交代する、と言う喜八さんの指摘はその通りと思いますが、当時を思い返しても、同じような光景が繰り広げられているだけのように私には思えます。

新自由主義的政策に対する批判と、企業としてのライブドアの行動原理は分けて考えた方が良いと言うのが私の主張です。ライブドアを「象徴」として話を分かりやすくする意図は理解しますが、本質から逸れる議論になるのではないかと-繰り返しになりますが-思うからです。

T.D.

投稿者 tropical_dandy : 2005年10月21日 14:46

tropical_dandy さん、こんばんは。
返信ありがとうございます。
もともとの記事よりもコメント欄のほうがずっと長くなっていますね(笑)。
ありがたいことです。m(__)m

> > これはどうでしょうか?スポーツと違ってビジネスでは強い者に勝ったからといって誰も誉めてはくれません。もし負けたら「アホやな」と馬鹿にされるだけでしょう。

> ちょっとここは喜八さんと意見を異にするところですが、ビジネスと言っても様々な進め方があり、これは経営者のキャラクターに依存する部分が大きいのです。

う~ん、たしかにそうかもしれません。一般論を語りながら、私はきわめて個人的なことを書いてしまったような気もします。すなわち「戦うときは自分より弱いものを相手にする」「強者に挑んで負けたものをアホと思う」のは私自身のことなのでしょう。

> 「弱いものと戦う」と安全サイドばかり見ていたら、企業として成長するチャンスを逃してしまうかも知れません。

「弱いものと戦う」のが常に安全とは考えてはいないのです(まったく!)。戦いというのは無数の未知の要素に作用されますから、「これは完璧!」というような作戦を立案したとしても、実行段階では次々と思いもよらぬできごとが起きます。どんなに弱そうに見えるものが相手であっても、戦いは常に危険に満ち満ちたものだと考えています。「弱いものと戦う」のが安全と考えてしまうような人はセキュリティ意識に乏しいし、いつかは「下手を打つ」のではないでしょうか。

> 現に、ライブドアはキャッシュは手にしましたが、彼らが掲げた「放送と通信の融合」を軸としたフジテレビジョンとの提携は手付かずのままです。

私は堀江氏の掲げていた「放送と通信の融合」を言葉通りに受け取ったことはありません。あれはあくまで「建前の大義名分論」とでもいうべきものではないかと疑っています。各メディアにも指摘されていたように堀江氏の挙げたビジョンは具体性・新奇性にも乏しいものでしたからね。
おなじように三木谷氏のいいぶんも額面通りには受け取れないと思っています。まあ、まったくのデタラメとも思いませんが・・・。

> 新自由主義的政策に対する批判と、企業としてのライブドアの行動原理は分けて考えた方が良いと言うのが私の主張です。

この点はまったく同感です。

> シンボリックに「新自由主義における強者」としてライブドアを取り上げるのは、本質を見誤る可能性があり、これがただ「ためにする議論」ならば害はないのですが、時として危険ではないでしょうか。

たしかにその危険はありますね(汗)。
現在は「反」村上・三木谷・堀江の言説がメディアにも WEB にも溢れていますから、そちらに利用されてしまう可能性はあります。が、私の真意は村上・三木谷・堀江氏を批判するところにあるのではありません。また、彼らをヒーロー視する側に味方するのでもありません。

こんなことを書くと真面目な方には怒られてしまいそうですが、率直に言って村上・三木谷・堀江氏の行動は野次馬的に「面白い」のです。そして彼らの行動は沈滞した日本の社会システムを活性化する起因にもなりそうだと睨んでおります。
もっとも、これは(今のところ)私が彼らの行動によって影響を被る可能性のないポジションをとっているためでしょうけれど・・・

村上・三木谷・堀江の3氏はケインズいうところの「アニマル・スピリット」のレベルが極端に高い人たち、さらには金銭欲が桁外れに強い人たち、という印象があります。その意味において私の目には「強者」に映るのです。「こんな奴らとは正面からは戦いたくない」と・・・。

投稿者 喜八 : 2005年10月21日 20:43

喜八さん、こんにちはー。

>もともとの記事よりもコメント欄のほうがずっと長くなっていますね(笑)。

いえいえ、長々生意気を申し上げてしまいまして、大変恐縮しております

>こんなことを書くと真面目な方には怒られてしまいそうですが、率直に言って村上・三木谷・堀江氏の行動は野次馬的に「面白い」のです。そして彼らの行動は沈滞した日本の社会システムを活性化する起因にもなりそうだと睨んでおります。

実はこの点に関しては私も同感です。「市場の撹乱要因になる」との批判もありますが、証取法に基づいて適切な情報開示がなされていれば問題のないことで、渦中のプレーヤーの銘柄は実態以上のプレミアが乗っているためリスク要因も大きいのですが、これもある種の「活気」だと思っています。市場に資金が集まっていることそれ自体は肯定的に受け取られる話だと思いますし。

「活気」と言えば孫正義さん(と重田康光さん…でしょうか)は外せないと思いますので、その記事をトラックバックさせて頂きました(^^)。

T.D.

投稿者 tropical_dandy : 2005年10月28日 15:53

tropical_dandy さん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
この頃はお忙しいようですね。
お互いにボチボチ行きましょう~!

> 「市場の撹乱要因になる」との批判もありますが、証取法に基づいて適切な情報開示がなされていれば問題のないことで、渦中のプレーヤーの銘柄は実態以上のプレミアが乗っているためリスク要因も大きいのですが、これもある種の「活気」だと思っています。

TBSと楽天に関する報道では tropical_dandy さんが先に指摘されたように「ウェットに過ぎ」る論調が目に付きます。三木谷氏の肩をもつわけではありませんが、彼は市場のルールに則った普通の商行為をしているに過ぎないと思うのです。それを「道徳」や「礼儀」を持ち出してバッシングするのは、いかにも珍妙な光景であると感じます。

ライブドアのときと同様「敵対的買収は日本の商慣習に合わない」なんてもっともらしい意見がでてきましたが、「誰がそんなことを決めたんですか?」と問いただしたいところです。「そんなこと勝手にきめないでください」と(笑)。

現在は「楽天、四面楚歌か?」なんて報道がなされているようですが、私は「本当かな?」と疑っています。なんといっても楽天側が20パーセント近いTBS株を保有しているのは動かせない事実です(さらには村上ファンドの保有分もあります)。経営陣が主要株主の存在を無視して会社を運営できるとしたら、それはもう真っ当な資本主義とはいえないように思います。

投稿者 喜八 : 2005年10月28日 21:15

おいっ!三木谷、堀江、村上
プロ野球界をどこまでメチャクチャにすれば気が済むんだ?
あんたら何を考えてるんだ?
特に、三木谷、堀江は昨年のシーズン中に堂々とストライキを起こしておきながらも2球団(オリックスブルウェーブと近鉄バファローズ)を合併させてヘンテコリンなチーム名にしやがって!!(怒)
それと、村上!あんたは阪神電鉄をどうするつもりなんだ??まさか・・・売却する気じゃないか?
お前も、球団をメチャクチャにする気!?
俺は阪神ファンになって3年目になるっていうのに・・・
どうしてくれるんだ?
お前らのせいで怒りが収まらないんだよ!!
球団をメチャクチャにさせるようであれば来年からプロ野球を放送中止にしてくれ!


投稿者 Mr.ケンジ : 2005年11月18日 20:19

Mr.ケンジさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
大変にお怒りのようですね。(^_^;)
上記の3氏に直接談判・・・するのは難しいですから、メールを出してみるという手もありそうですよ。
あるいはブログ記事にして「敵対的トラックバック」を撃つのも良さそうです(笑)。
ちなみにこの「喜八ログ」の記事は堀江氏のブログにトラックバックしています(後の2人はブログを持っていないようです)。

投稿者 喜八 : 2005年11月18日 20:27