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2005年12月21日

反知性主義の跋扈

「反知性主義が世界を跋扈(ばっこ)しはじめている。世界の指導者は知性による政治を真剣に考えるべきだ」

堀武昭(ほりたけあき)さんの『愛と差別と嫉妬で鍛える英語』日経BP社(2003)よりの引用です。

堀武昭さんは1940年横浜市生まれ。慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興会(ジェトロ)入社。ジェトロを退社後、米日財団副理事長、フォーラム2000財団理事、国際ペンクラブ理事などを歴任。著書に『世界マグロ摩擦!』『サシミ文化が世界を動かす』などがあります。

冒頭の引用文は「世界中から大統領や首相、あるいはノーベル賞受賞者がゴマンと集まった会議」における堀武昭氏の発言。発言直後に「会場は興奮の渦に包まれ、出席者の拍手が延々と続いた」と堀氏自身が書かれています。隣席にいた海洋学者トール・ハイエルダール(Thor Heyerdahl)が堀氏を抱擁し「You deserved it.(賞賛に値する)」と何度も賞賛してくれたそうです。

実のところ最初に読んだ際はそれほど感銘をうけませんでした。「オッサン、自慢が激しいな」と思ったくらいです(笑)。けれども時間の経過とともにこの文章を忘れてしまうのではなく、逆にだんだん気になってきました。いまでは「なるほど賞賛に値するかもしれない」と感じ始めています。

アメリカ合衆国と日本の両国で「きわめて知性的」とはいえない人たちが最高地位についています。ブッシュ大統領と小泉首相。彼らが世界有数の大国を指導していることの意味。ボンクラな私にもこの意味が痛いほど分かってきました。それにしても先進国では珍しいのではないでしょうか。優れた知性を感じさせない人物が一国のトップになるというのは。

現在の日本は政治家に高い知的能力を求めない国です。それどころか「知的な政治家」が冷遇される傾向さえありそうです。かつてはそんなことはありませんでした。たとえば「三角大福」と呼称された三木武夫・田中角栄・大平正芳・福田赳夫の各氏はきわめて高い知的能力の持ち主でした。「政治家に必要とされる資質」はいつの頃から変化したのでしょうか?

さらに近年では明白に低劣な政治家たちが跋扈するようになっています。政治家が驚くべき暴言を吐く。しかも「お構いなし」という例が増えています。たとえば集団レイプを行なった学生集団を「元気がいい」と評する。凶悪犯罪を犯した少年の両親を「市中引き回しのうえ獄門にしろ」と発言する等々。目もあてられぬほどの惨状です。

そして最大の暴言者が小泉純一郎総理大臣です。たとえば総理が自らの厚生年金疑惑を追求された際「人生いろいろ、会社もいろいろ」というような不真面目極まりない答弁をする。さらには存命中の元社長を勝手に「故人」にしてしまう(元社長は小泉氏にとって「恩人」であるはずなのに)。そんな出鱈目が堂々とまかり通ってしまうのは信じられない光景です。

一般に言葉が軽くなってきていると感じます。上にも書いたように総理・閣僚を始めとする政治家たちが暴言・妄言の言い放題(お咎めはいっさいなし!)。その反面、些細な(?)日本語の誤りを指摘するような本は売れています。新聞や雑誌にも「日本語の乱れ」を揶揄する記事は少なくありません。ただし批判の対象になるのは主に「アルバイト店員」や「女子高生」なのです。

若い人の「日本語の乱れ」を嘆くのも結構です。でも日本国総理大臣および閣僚の言葉の乱れのほうが遥かに深刻な問題でしょう。以前は政治家たちの不誠実な言論を咎める論評も結構ありましたが、最近ではあまり見なくなりました。メディアが権力側に寝返ったのか、暴言・妄言に慣れきってしまって報道されないのか・・・。

言葉・論理・知性。これらをないがしろにする社会は衰退への道を歩み始めているのではないか。そういう危惧が私にはあります。


愛と差別と嫉妬で鍛える英語
堀 武昭著
日経BP社 (2003.7)
通常2-3日以内に発送します。


投稿者 kihachin : 2005年12月21日 12:39

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トラックバック時刻: 2006年03月23日 23:50

コメント

こんばんは。
TB有難うございました。
興味深いですね。少なからず同様に危惧することもあるように思います。
言葉が乱れるということは、言葉を大切に出来ないということなのでしょう・・・。
政治家がこれでは子供達に期待できるわけがありませんね・・・。
衰退が現実に足音を立てて来ている・・・。
目を覚まさねばなりません。

投稿者 田舎の神主 : 2005年12月23日 22:43

田舎の神主さん、こんにちは。
コメントありがとうございました。

師走で皆さん忙しいのでしょう。
インターネットも人通りが少なくなってきました。
思えば毎年のごとく年末年始は決まったメンバーが顔を合わせるようになります(笑)。

田舎の神主さんにとっては1年で一番忙しい時期でしょうか?
また腰を傷めると大変ですから、どうぞお気をつけください。
ストレッチや腰痛体操は意外に予防効果が高いですよ!

投稿者 喜八 : 2005年12月24日 15:27

HP「@年金」とブログ「★萌え!年金」で年金情報を発信しております。
一度、お出かけいただけましたら幸いです。

投稿者 年金カウンセラー : 2005年12月24日 21:28

長い間ご無沙汰しています{笑}
年末年始に私も参加させていただきます{笑}
私も入院しておりまして。。。ストレス?ショックが多かった年でしたから{笑}

そうですね。レッテル貼りが横行しすぎて反対意見言えない感じですよね。保護必要といえばアナタ既得権益者だといわれれば誰も意見言えないですよね。喜八さんのブログがあればその内反転してくると思いたいのですが。。。
マスコミの評論家の変節も驚きますし小手先の人が増えたのも
事実ですね。とりあえず来年も書き込み?失礼な事もありますがヨロシクお願いします

投稿者 のり : 2005年12月25日 22:47

年金カウンセラーさん、はじめまして。
ご訪問ありがとうございます。
後ほど御サイトを拝見させていただきますね~。

投稿者 喜八 : 2005年12月26日 12:28

のりさん、こんにちは。
入院されていたのですか! それは大変でしたね。
もう大丈夫なのでしょうか?
寒い時期は身体にも大きなストレスがかかりますから、どうぞ健康管理には気をつけてください。

のりさんに関して「失礼な事」は全然ありませんでしたよ。
それはきっぱりと断言できます。
「人はそれぞれ顔が違うように意見も違う」が私のモットーです。
これからも忌憚ないご意見をお願いします~。m(__)m

いまの日本の政治状況は私にとって「心の底から嫌」なものですから、今後もしつこく「ノー!」を言っていきたいと思います。

投稿者 喜八 : 2005年12月26日 12:29

遅くなりましたがTBありがとうございました(汗)
この反知性主義ですけど、こういう傾向って日本で言うと80年代初頭くらいからありましたよね?「ネクラ」と「ネアカ」とか。今起こっていることはそうした流れの延長線上なんだと思います。
そして、流れに対して知性で対抗しようとしている人たちが、非常にネガティブなレッテルを貼られて排除されてしまうのが現状です。
私は大して頭の良い人間でもありませんが、知的なものに対して社会がもっと敬意を払っても良いのではないかと思います。一度壊してしまった偶像を復権するのは難しいということを承知でそう思います。
最後になりましたが、良いお年をお迎えください。

投稿者 非国際人 : 2005年12月29日 21:30

非国際人さん、こんにちは。
今年はブログを通じて多くの興味深い方と知り合うことができました。
非国際人さんは「興味深い方」の最右翼です。
・・・といま何気なく書いて気づいたのですが「最右翼」というのは、この場合とてもいい意味の表現になっていますね。

> この反知性主義ですけど、こういう傾向って日本で言うと80年代初頭くらいからありましたよね?「ネクラ」と「ネアカ」とか。今起こっていることはそうした流れの延長線上なんだと思います。

なるほど! たしかにその通りです。
1959年生まれの私は80年代の雰囲気はよく知っています。
当時の大学生は(私自身も含めて)反知性主義の奴隷みたいなものでしたね。反省をこめてそう思います。

来年以降もよろしくお願いします。私はボンクラ者ですが、けっして悪意ある者ではありません(笑)。
それではよいお年を!


投稿者 喜八 : 2005年12月31日 13:26

言葉が軽くなっている事に最近私も危惧を抱いていました
少し時期は遅れていますがトラックバックさせていただきます
相変わらず鋭いですね。

投稿者 のり : 2006年03月05日 02:23

のりさん、こんにちは。

> 相変わらず鋭いですね。

いえ、「お前こそ反知性的だ」と批判されています(汗)。

ところでTBが届いていないようですね。
なにはともあれこちらからもTBを撃たせていただきます~。

投稿者 喜八 : 2006年03月05日 10:48

すみません。一応調整させてもらいます(^~^;)ゞ
私が知性ないな┌( ̄0 ̄)┐

投稿者 のり : 2006年03月05日 18:06

のりさん、こんにちは。(^_^)/
TBありがとうございます。
早速こちらからも送信してみます!

私は「反知性的」というだけでなく「品性の卑しい」「陰謀論者」と批判されてもいます。
確かに当たっていると思います(笑)。

投稿者 喜八 : 2006年03月06日 16:07