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2006年02月08日

『僕はアメリカに幻滅した』

『僕はアメリカに幻滅した』小林至

僕はアメリカに幻滅した』著者の小林至(こばやし・いたる)さんは1968年東京生まれ。1992年東京大学経済学部を卒業後、プロ野球千葉ロッテマリーンズに入団。一軍を経験せず退団。1994年に渡米。コロンビア大学経営学大学院(MBA)卒業後、フロリダのケーブルテレビ局に勤務するが2000年に解雇される。現在は江戸川大学助教授(経営学スポーツビジネス)。福岡ソフトバンクホークスの球団取締役も勤められています。

なお上の経歴中「解雇」の理由はメールマガジン「JMM」に会社の白人至上主義的な体質を指摘した記事を執筆したためだそうです。そのような体験があるせいで小林氏はアメリカ社会に批判的なのかもしれないと最初は思ったのですが、感情的な批判だけの本ではありませんでした。さすがは東大卒のプロ野球選手!(関係ないかも・・・) グローバリゼーション新自由主義の弊害を分かりやすく解説してくれています。

昨今の日本は官民あげて「覇権国アメリカに従ってさえいれば大丈夫!」というような根拠のない楽観論がはびこっているようですが、はたしてどうなのか? と私(喜八)は大いに疑問に思います。少なくとも現在のアメリカ合州国は我々がマネをしたくなるような国ではないと思ったほうがいいでしょう。

たとえば『僕はアメリカに幻滅した』では民間まかせのアメリカの医療保険の実態(弊害)を「これでもか!」とばかりに描き出してくれます(アメリカ合州国には基本的に公的健康保険はありません)。

具体例のひとつとして小林夫人が英語を教わっていた英語学校教師(黒人女性)があっという間に癌で亡くなった悲劇が挙げられます。彼女(英語教師)は有色人種・非常勤・低収入という条件が揃っていたため民間医療保険に加入できなかった。そのため必要な病院治療をまったく受けることができず自宅で静かに死を待つばかりだったのです。まだ52歳の若さでした。

アメリカ合衆国は「医療費はダントツ世界一」を誇る(?)国です。が、医療の充実度は世界的にみても下位! 医者と保険屋が癒着しているためまともな治療が受けにくい。それなのに医者は必ず過大請求してくる「ぼったくり」医療。さらに保険屋は必ず払い渋りるため、保険屋との交渉は精根尽き果てる「パワーゲーム」となる。まさに「地獄の沙汰もドル次第」なのです。

なんでもかんでも民営化すれば効率的になる、なんてのは根拠のない「神話」「迷信」ですね。アメリカがその「悪い見本」をまざまざと見せてくれているわけです。小林氏も指摘されているように「弱者切捨ての医療福祉は米国の恥部」。日本では「郵政民営化」の次は「国民健康保険民営化」が噂されていますが、とんでもない話です。日本の国民健康保険制度にも欠点は(大いに)あるでしょうけれど、アメリカの医療保険制度よりはずっとマシです。

以下は『僕はアメリカに幻滅した』からの引用です。
「なぜアメリカの『猿真似』をしてはいけないのか?」がよく分かる文章だと思います。

 グローバライゼーションとは、アメリカナイゼーションを言い換えた言葉で、米国の利益のごり押しであることは、世界的に看破されていますが、それより何より、実は、米国自身にも、決して繁栄をもたらしてはいないのです。
 どういうことかというと、企業がより安価な労働力と生産コストを求めて海外進出をした場合、国内では、生産に携わる労働者の需要が減少するため、賃金低下、労働条件の悪化、そして失業をもたらすということです(『僕はアメリカに幻滅した』50頁より引用)。
 規制緩和の大義名分は、おおまかにいえばこうです。「政府介入をなくし、市場を自由競争に委ねれば、新興企業の成長が促進され、それが既存企業を刺激する。結果として、効率を高めることができない企業は、自然淘汰される。その競争が、新たな職を創生して、価格の下落は消費者を潤す」
 何やら聞いているととても魅力的な話ですが、現実には、倒産と吸収合併が相次ぎ、寡占状態を招き、かえって価格の上昇を招いたばかりか、二〇万人以上の失業者を生んでいるのです(同書51頁より引用)。
 一九九〇年代が、米国経済にとって、未曾有の大好況であったのは、数字上ではまったく正しく、恐らく反論の余地もないでしょうが、同時に、米国一般庶民にとっては、搾取の一〇年間だとまではいわないまでも、少なくとも二〇世紀の主役を演じた中産階級の絶滅、富める者とそうでない者の二極分化が進んだ十年であったことは間違いありません。
 一度社会が二極化してしまえば、それは環境汚染と同じで、そこから発生する問題を克服するためには膨大なコストがかかります。たとえば、貧困に端を発した無教養で反社会的な下層階級が作り出されていることです。これが、アメリカ社会全体に巨額の負担を強いていることは、直感的にお分かりいただけると思うのです(同書56頁より引用)。

(『僕はアメリカに幻滅した』小林至、太陽企画出版、2000)


投稿者 kihachin : 2006年02月08日 21:03

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コメント

(自己レスです)

本書『僕はアメリカに幻滅した』は文庫化されているようです(タイトルが変更されています)。

『アメリカ人はバカなのか』
小林至、幻冬舎文庫(2003)
税込価格 \560
http://www.bk1.co.jp/product/2310331/?partnerid=p-kihachin

投稿者 喜八 : 2006年02月15日 13:27

TBありがとうございます。小林氏の本しりませんでした。読んでみようと思います。
関岡氏が日本の健康保険のありがたさは海外に行った人でないと分からないかもしれないと書いているのはそのとおりです。
実は私も1989から5年ほどアメリカ経験があるのですが、国として医療保険がどうなっているかよく分からず困ったことがあります。日本の会社が規定により日本の保険対象医療なら負担するということで結局窓口で小切手で支払うということで、それ以上は研究しなかったのですが、一般の人は大変だと思います。

投稿者 日暮れて途遠し : 2006年02月19日 16:29

日暮れて途遠しさん、こんにちは。
ご訪問ありがとうございます。
御ブログは毎日チェックさせていただいてます。

小林至さんの『僕はアメリカに幻滅した』は上の「自己レス」にも書いたように『アメリカ人はバカなのか』というタイトルで幻冬舎文庫に収められているようです。

> 関岡氏が日本の健康保険のありがたさは海外に行った人でないと分からないかもしれないと書いているのはそのとおりです。

関岡氏といえば、竹中平蔵大臣がテレビ番組で関岡氏の『拒否できない日本」を完全否定したことがありましたね。
結果としては「竹中大臣が嘘をついた」ことになるのですが・・・。
現役大臣の「嘘」をマスメディアはまったく取り上げません。
不思議な国の不思議なマスコミというしかありません。

投稿者 喜八 : 2006年02月20日 13:23

またまたTBします

投稿者 のり : 2006年03月10日 21:50

のりさんTBありがとうございます。
こちらからもトラックバックを撃たせていただきました~。

投稿者 喜八 : 2006年03月11日 15:50

日本は日本独自の仕組みを考えないといけない時期に来ているのでしょうね。公平な資料や報道があればいいのですが。
国土も文化も違うのですから…
濃縮されたものはどんなものでも悪影響が出ると思うのです。
薬の処方ですら注意するのですから(^~^;)ゞ

投稿者 のり : 2006年03月25日 22:15

のりさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
「日本独自の仕組み」というのがなかなか難しいのかもしれませんね。
日本人はマネは得意なのですが・・・。

> 濃縮されたものはどんなものでも悪影響が出ると思うのです。
> 薬の処方ですら注意するのですから(^~^;)ゞ

たいていのクスリは大量に摂ると毒になるといいますね。
文化や習慣も同じなのかも知れません・・・。

投稿者 喜八 : 2006年03月26日 05:36