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2006年04月06日

在上海総領事館電信官自殺事件

2006年03月31日の読売新聞1面に「中国側、機密執拗に要求…自殺上海領事館員の遺書入手」という記事がありました。私(喜八)がざっと見たところでは、同日の他紙はこの件を報道していないようです。読売の「スクープ」ということでしょうか。

この「在上海総領事館電信官自殺事件」は、日本領事館勤務の男性(当時46歳)が「女性問題」を理由に中国公安当局から情報提供を強要され、2004年05月06日、自ら命を絶った事件です。亡くなった男性のご冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、ご家族・近親者の皆様には衷心よりお悔やみ申し上げます。

この事件に関しては佐藤優さん(起訴休職外務事務官)が『産経新聞』・『SAPIO』・『世界』・『正論』・『週刊金曜日』・『直言』などの新聞・雑誌・ウェブマガジンで精力的に発言されてきました。佐藤氏の主張をもとに一連のできごとの持つ意味を考察してみます。

電信官男性が自ら命を絶ったのは、先に書いたように「2004年05月06日」です。しかし、この事件が公(おおやけ)になったのは、それから1年半以上も経ってからでした。2005年12月27日発売の『週刊文春』のスクープ記事により、初めて明るみにでたのです。

外務省はそれまで事件を公表せず、小泉純一郎首相および福田康夫官房長官(当時)に報告もせず、川口順子外相(当時)の後任となる町村信孝前外相、そして麻生太郎現外相に引継ぎすら行なっていなかったというのです。さらには外務省内部に厳重な緘口令を敷き、事件を隠蔽しようとした形跡があることが佐藤氏により指摘されています。

『週刊文春』の記事が公表された翌日(12月28日)に行なわれた鹿取克章外務報道官による会見(「報道官会見記録(2005-12-28)」)では、「在上海総領事館の館員が平成16年5月6日に自殺したことは事実」と認め、「事件発生直後から今日に至るまで、私どもは中国側に対して事実関係の究明と抗議を申し入れてい」ると発表されました。けれども同時に「この案件については引き続き中国側の回答を待っていたい」という発言もあります。

事件が発生してから1年半以上過ぎた時点での「引き続き中国側の回答を待っていたい」発言には「あまりに悠長な・・・」という印象は否めません。佐藤優氏によると、この日本側の「寝言」のような対応が、中国側に「つけ込む隙」をあたえ、「遺書が改竄(かいざん)されている」「捏造された内容が付け加えられている」というような情報操作を許しているというのです。

佐藤優氏は「本件について、われわれ日本人は本気で怒るべきだ。感情的にならず中国政府に非を認めさせ、謝罪させる戦術を組み立てることだ」「毅然(きぜん)たる対応を日本政府が取り、中国に今後、インテリジェンスの国際基準を順守することが中国の国益に合致することを認識させる。これこそが真の日中友好外交だ」と述べています(産経新聞、2006-01-12)。佐藤氏の意見に私(喜八)も完全に同意します。

ところで、当エントリー冒頭で触れた読売新聞の記事「中国側、機密執拗に要求…自殺上海領事館員の遺書入手」に関しても不思議があります。もともと外務省は故人のプライバシー保護等を理由に、遺書の公表を拒否してきたからです。

館員は遺書を残しており、その写しが外務省に存在するが、遺書の内容等の詳細については、諜報活動及びその対応措置や館員のプライバシーにかかわるものであり、また、御遺族の意向もあり、明らかにすることは差し控えたい。

上記引用文は鈴木宗男衆議院議員が2006年01月20日に提出した「在上海総領事館員自殺事件に関する質問主意書」の6番目の質問「自殺した総領事館員は遺書を残していたか。残していたとするならば、それは何通存在するか。(~以下省略~)」への外務省側の回答です。けれども、その遺書の内容が読売新聞により公表された。これは正式な発表によるものではないのでしょう。正式発表であれば他紙でも報道されるはずですから。

鈴木宗男議員は2006年03月31日の「ムネオ日記」に次のように書いています。

総領事宛ての遺書だが、この遺書を知る人は限られている。外務省関係者しか知りうる立場にない。一体誰が何の目的で亡くなった人のプライバシーを考えず表に出したのか、はらわたの煮えくり返る思いだ。私の質問主意書には遺書の存在は認めながら、ご遺族の意向、プライバシーに関わることなので公には出来ないと答えてきた答弁書は何だったのか。

今年の01月31日に国会答弁で「明らかにすることは差し控えたい」とされた遺書が、2ヵ月後03月31日の読売新聞で公開される。おそらく正式発表ではなく「リーク」によって。「このことのもつ意味は何だろう?」と考え込んでしまいます。ムネオ氏とおなじく「一体誰が何の目的で」と。あるいは「この遺書はホンモノなのだろうか」と・・・。

前述の佐藤優さんは雑誌『週刊金曜日』2006年02月17日号で以下のような見解を表明しています(引用文中「筆者」は佐藤優氏を指します)。

政治家の弱点を握ることに利益を見いだす外務官僚がいる。そのような外務官僚にとって、日本の政治家のスキャンダルを教えてくれる中国公安は「お友だち」なのである。外務官僚と中国公安との「協力関係」が外務省が中国に対して毅然(きぜん)たる態度をとれない一要因だと筆者は見ている。

かつて田中眞紀子さんが指摘したように外務省は正真正銘の「伏魔殿」なのでしょうか?


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投稿者 kihachin : 2006年04月06日 20:16

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コメント

私も何故に読売新聞のみなのか疑問に思っていました。
けれどもマスコミも権力の手先なのでナントもいえません
なにか裏があると思いますが一市民の私には読み切れません
マスコミといえば私のブログでも書かせてもらっていますが
宅配制度の維持は国民の知る権利の一つで過疎地や山間部では取り残されるので維持すべきと言う。コレって郵政のとき言っていたらやっていけるって言いませんでしたか?大手の新聞の人達?コレを逆手に取られて政府に貸し作られていると思うのは私のうがった見方かも知れませんが{まだたくさん貸しあると思いますが…}どちらにせよ、お亡くなりになった外交官の
遺族の方々が辛い思いをしていない事を祈るばかりです。

投稿者 のり : 2006年04月08日 20:10

のりさん、こんにちは。
ご訪問ありがとうございます。

> なにか裏があると思いますが一市民の私には読み切れません

そうですね。私にも何がなんだか分かりません。
ただ、遺書はどうやら本物のようです。
「読売新聞の報道直後に外務省が事務次官を長とする「秘密保全調査委員会」を立ち上げるという前代未聞の対応をとった」そうですから。

> お亡くなりになった外交官の遺族の方々が辛い思いをしていない事を祈るばかりです。

まったく同感です。
46歳の男性といえば、高校生くらいのお子さんがいても不思議はありません。
いまのところはマスコミもプライバシー侵害などを行なっていないようなのが救いです・・・。

投稿者 喜八 : 2006年04月09日 11:17