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2006年04月10日

『カネに勝て!』

『カネに勝て!』青木雄二・宮崎学

 下流でええやないか。自分を下流だと思えば戦える。少なくとも、鬱陶しい均質社会から半身は抜け出せるはずや。そして、好き勝手に生きる。生き方など考えず、ただ生きる。
「こう生きなければならないなどと、誰が決めたんや。ほっとけや、俺は俺で勝手に生きていく。そうすることで落ちるところまで落ちても、かまわん。どこまで落ちても、俺は俺や。自分のことは自分で救う。もう国も会社も頼らん」

カネに勝て!』共著者のひとり故・青木雄二さんの言葉です。青木さんは本書が出版される1年近く前の2003年09月05日に肺ガンのため死去されました。『カネに勝て!』製作時はすでに病魔が青木さんの身体を蝕んでいたのです。そのため「生き方など考えず、ただ生きる」という言葉には非常な重みがあります。

現在の日本は「アメリカ流のイケイケの弱肉強食の資本主義」社会に移行中である。

これが青木雄二さんと宮崎学さんの2人に共通する認識です。青木さんの言葉を借りれば「弱い奴は食うだけ食うたれ!」という身も蓋もない社会が実現しつつあります。この変化に気づかず従来のような「中流幻想」に浸っている者はトコトン泣きをみる可能性があります。

このごろは「リストラ」という言葉を聞かない日がありません。この「リストラ」も景気が悪いからという理由だけで行なわれているわけではありません。日本の社会を本来の資本主義に適(かな)ったものに変化させようという強い意思が働いているのです。資本主義の「本家」アメリカ合州国がそれを望んでいる。だから今後景気が回復しても「リストラ」がやむ可能性はまずありません。

若年層に「フリーター」が増加しているのも同じ理由からきています。人件費をできるだけ安く上げようという「資本の論理」によって、日本社会が改造されていることからくる当然の帰結です。「フリーター」増加の原因を若者たちの「やる気のなさ」や「甘え」にのみに求めるのはいささか(相当?)ピントはずれだと私(喜八)は思います。

日本が「新自由主義」的な社会へと変貌しつつあるのは間違いありません。新自由主義とは「原理主義的な資本主義」、「荒々しい資本主義」です。「適者生存」、「優勝劣敗」。市場の勝者(カネ持ち)は優れた者であり生き延びるべき者。敗者(ビンボー人)は劣った滅びるべき存在。ダーウィンの進化論をそのまま人間社会に当てはめたような「社会ダーウィニズム」と表裏一体なのが新自由主義です。

これに比べて戦後日本の資本主義は曖昧な部分をもった資本主義でした。東洋風に味付けされた「社会民主主義的資本主義」であったとでもいえばよいでしょうか。これには「明確なルールがない」「身内に甘い」などの欠点も数多くあったのですが、結果として社会の各構成員には優しい資本主義となっていました。

けれども「親方」であるアメリカに「お前らもホンモノの資本主義にせい!」と命じられた。そのためアメリカに忠勤を励む小泉・竹中政権はせっせと日本を改造しています。これこそが現在進められている「構造改革」の本当の意味なのです。

このように過酷な新自由主義社会をどのようにして生き残っていけばいいのか? せちがらくなる一方の世間をいかにして渡ってゆくか? サバイバル術を分かりやすく解説したのが『カネに勝て!』です。「経済学なんてややこしくて分からない」という方でも、次のような青木雄二氏の発言は飲み込みやすいでしょう。

  • 国も会社も頼れないこの時代、タフにしたたかに、自分だけを頼って生き抜いていくことや。
  • 「カネは借りたらいかん。カードなんか持つな。ローンも組むな。現金主義でいけ」
  • 住宅ローンほど危うく、アホらしいものはない
  • サラリーマンは「社員という立場を選択した個人商店主」を自覚した上で「会社にしがみついていた方がええ」。
  • 人間にとって一番大事なものは、カネなんかではないんや。家族、友人、先輩後輩などの人間関係こそが宝なんや。貧乏したって、この宝さえ大事に守れば、堂々と生きていけるんや。

ボヤボヤしていたら、強者によって骨までしゃぶられる新自由主義社会で、今後は誰もが生き残りをかけて戦わなければならなくなるでしょう。そんな神も仏もないような社会で「カネに跪かず、人間が人間の主人として人間らしく生きていく」ための、きわめて実用的なアドバイスに満ちた一冊が『カネに勝て!』だと私(喜八)は思います。

(『カネに勝て!』青木雄二・宮崎学、南風社、2004)


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投稿者 kihachin : 2006年04月10日 20:13

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コメント

喜八さま、こんにちは。
少し前に何の挨拶もなくTBを送りつけたのに、丁寧に拙ブログにコメントありがとうございました。
さて、青木雄二氏と宮崎学氏ですけど、私も二人のファンです。青木氏には例の『ナニワ金融道』から入りまして、氏の他の著作などを読むうち、宮崎氏も知るところとなって、二人のファンになった、というところです。
お二人ともアウトローを自認していて、野武士のようだとでも言いますか、肝っ玉の据わった方ですよね。そんな方の実用的アドバイスとは、これは大いに参考になるでしょうけど、参考にする側も肝っ玉が据わっていないと役に立たないような気もします。
なんにせよ、読んでみます。

投稿者 愚樵 : 2006年04月11日 14:53

TBありがとうございました。
なるほど、なるほど! 

> 下流でいいやないか。(以下略)

下流で貧乏な私には、力強い言葉。イケイケの弱肉強食の資本主義、まったくその通りですね。それにしても、「オレは食われる側やない」と思っている人がそんなに多いのだろうか。ほとんど冗談のような錯覚。 

投稿者 華氏451度 : 2006年04月12日 00:28

青木雄二氏さんの『ナニワ金融道』は一気に読みました。
お金というものにリアリティがありますよね。
リアリティのあるお金のことを銭(ゼニ)というの
でしょうね。お金にリアリティがないと、生きている
実感も希薄になってきていますよね。

投稿者 マーヒー : 2006年04月12日 08:42

愚樵さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

トラックバックとコメントに関しては気にされないでください。
私(喜八)もかなり大雑把な姿勢でいますので・・・。
厳格派の松永英明(河上イチロー)氏あたりには怒られてしまいそうな「いい加減な態度」です(笑)。

よくよく見たら、幣ブログをブックマークしていただいていますね。ありがとうございます。m(__)m
早速、こちらでもブックマークに入れさせていただきます。

今後ともよろしくお願いします!

投稿者 喜八 : 2006年04月12日 13:29

華氏451度さん、こんにちは。
ご訪問ありがとうございます。

私も下流でビンボーです。
最近は『下流社会』などという本がベストセラーになったようですね。
「自分も下流に落ちるかも?」という恐怖を抱いている方が少なくないのだろうな、と睨んでいます。
「ワシは下流や(どこが悪い!)」と開き直ってしまえば、なんでもないのですけれどね(笑)。

投稿者 喜八 : 2006年04月12日 13:30

マーヒーさん、こんにちは!

じつは『ナニワ金融道』はあまり読んだことがないのです。
そのうち漫画喫茶に赴いて「一気読み」しようと思いつつ、なかなか実行できません・・・。
青木雄二ファンとして、これではいけませんね。(^_^;)

> リアリティのあるお金のことを銭(ゼニ)というの
> でしょうね。

子供のころから、おカネのことを「ゼニ」といっていた友人知人が何人かいます。
彼らはみな成人後、経済的に成功しています。
これが一般的な法則といえるかどうかは分かりませんが・・・。

投稿者 喜八 : 2006年04月12日 13:30

下流勿論私も・・自分の懐に有るお金で生活するチエを生み出すのが節約その中で生きたらいいでわ・・
貧乏だけど心豊な人生送ります

投稿者 わびすけ : 2006年04月12日 19:16

こんにちは。昨日もTBしたばかりなのですが、青木雄二の本についての感想を書いていたことを思い出したので、今日またTBさせてもらいます。
今の世の中、青木さんならどう言うところでしょうか。

投稿者 KUMA0504 : 2006年04月13日 00:15

わびすけさん、こんにちは!
わびすけさんが「下流」ですか?
信憑性がないですね(笑)。

> 自分の懐に有るお金で生活するチエを生み出す

本当にそうですね。
「キャッシング」とか「ローン」という名前に騙されてはいけない! と思います。
結局のところ「高利の借金」ですから!

投稿者 喜八 : 2006年04月13日 11:33

KUMA0504 さん、はじめまして。
ご訪問ありがとうございます。
またトラックバックもありがとうございます。
ご紹介の本のことは知りませんでした。
後ほど KUMA0504 さんのブログにお邪魔します!

投稿者 喜八 : 2006年04月13日 11:34