【お勧めの本】深尾葉子『魂の脱植民地化とは何か』青灯社(2012) 更新!

« 06-03~06-09の運動 | メイン | カルロス・バルガスさん&早乙女勝元さん講演会 »


2006年06月10日

カネカエセ

今年(2006)の春、大手サラ金の「アイフル」で違法な取立てが発覚した際、「いまどき、大声で怒鳴ったり玄関に居座りするような取立てをやる大手サラ金があったのか!」と驚き呆れました。

と、同時に「東証一部上場であろうとなかろうと、金貸しに変わりはないからなあ」と妙に納得する部分もありました。「同じような取り立ては業界に蔓延している」という意見もあります。この程度のことで驚く私(喜八)のほうが「世間知らず」なのかもしれません。

しばらく前「ヤミ金」の悪辣さがしきりに報道された時期がありました。「あれには裏があるのだ」という説を聞いたことがあります。「ヤミ金」の凄まじい実態を明らかにすることにより、サラ金を「よりマシ」な存在に見せる情報工作だというのです。

たしかにサラ金各社は新聞やテレビなどのマスコミにしてみれば大切な広告主ですから、この説もまんざら嘘ではないように聞こえてしまいます。そういえば、最近はテレビドラマでも「サラ金で崩壊した家庭」なんてのは、とんと出てきません(自粛しているのかな?)。

「サラ金」については、ある鮮烈な記憶があります。
中学生のころ、同級生A君の一家が借金苦から「夜逃げ」をしたのです。

A君が数日間、学校を休んでいました。すると、A君と一番親しかったB君が妙に緊張した様子で、私(喜八)に「ちょっと変だから一緒に来てくれ」と要請してきました。もちろん気軽に応じました。

放課後。B君と私の2人はA君の家に赴きます。いきなり、玄関のドアに張られた何枚もの紙が目に入ってきました。一番目立つのは「カネカエセ」と赤マジックで大きく書かれたものでした。ほかにも「すぐ連絡しろ」「バカヤロー」などと書かれた紙が何枚も糊付けされていました。

新聞受けには多数の電報が突っ込まれており、一部は溢れ出して、ドアの前に落ちています。電報の中にはなぜか開封されたものもありました。そこに記された時刻を見ると、深夜に着信したものばかり。電報の文面も「シキュウレンラクコウ」「カネカエセ」・・・。

チャイムを何度も鳴らしてみましたが、ひっそり閑としているばかりでした。新聞受けの隙間から家の中を覗くと、玄関には真新しい補助輪付き子供用自転車がありました。B君によると、数日前、A君のまだ幼い妹のために購入したばかりのものだそうです。

中学生の我々にも、これが「夜逃げ」だということは理解できました。粛然とした気持ちになったB君と私はドアに張られた紙と地面に落ちている電報を破って捨てました。張り紙はともかく電報を捨てるのは法律違反だったかもしれません。とはいえ30年以上前のことですから、すでに「時効」でしょう。

A君とはその後一度も会ったことはありません。

A君のお父さん─現在の私と同じくらいの年齢です─はいろいろな意味で弱い人でした。中学生の私から見ても「飲酒の問題」を抱えているのは、はっきりとしていました。A君が同級生との喧嘩で負けたりすると、泥酔状態で喧嘩相手の家に抗議に行き、酔いが醒めてからまた謝罪に行くような人でした。

朝からお酒を飲むようになり、会社勤めができなくなる。「生活費の足しに」とサラ金で金を借りる。定収入がないところの借金が返せるはずもなく、他のサラ金で借りて返済。自転車操業に頼る多重債務者となり、夜逃げ。こんな「真相」を何年も後に知りました。

サラ金規制法がまだなかったころの話です。現在よりも「追い込み(取立て)」は遥かに厳しいものだったでしょう。全国で過酷な取立てによる夜逃げ、一家離散、自殺が相次いでいました。A君の一家も「サラ金地獄」に引きずり込まれ、すりつぶされてしまったのです。

幸い、私はこれまでサラ金とは無縁の人生を送ってきました。そもそも借金は嫌いです。銀行カードで「キャッシング」したこともありません。クレジットカードは何枚か持っていますが、ほとんど使用しません。インターネット・ウイルス対策ソフトの定義ファイル更新のときに使うくらいです。

借金に縁がないというのは、私自身がしっかりしていたわけでないのでしょう。たまたま幸運だっただけなのでしょう。A君一家を襲った悲劇を目の当たりにしたため、借金に対する警戒心が高まったということはあるかもしれません。

アイフルに関する報道に接して、かつての同級生を思い出しました。そして普段利用している私鉄駅前の光景を眺め渡すと、サラ金の看板がやたらに目立ちます。駅前に立地する商業ビルの上階には、例外なくと言っていいほど、サラ金の支店が入っています。

これだけの数の消費者金融会社が存在する。つまり、それだけ高利の金を借りる人が多いということです。そのぶん、多重債務者(およびその候補者)の数も多いはずです。銀行預金の利子が事実上「ゼロ」の時代に「年29.2%」の利子で金を貸すのは、たしかに「儲かる」仕事には違いないでしょう。

高利貸しが栄華をきわめている国、「我が祖国」日本。
「ひょっとしたら恐ろしく奇妙な事態ではないのか?」 真っ黒な疑問がムクムクと湧いてきました・・・。


投稿者 kihachin : 2006年06月10日 20:44

« 06-03~06-09の運動 | メイン | カルロス・バルガスさん&早乙女勝元さん講演会 »



コメント