【お勧めの本】深尾葉子『魂の脱植民地化とは何か』青灯社(2012) 更新!

« 06-24~06-30の運動 | メイン | サッカーは楽しい! »


2006年06月30日

佐藤優さんの護憲論

佐藤優「直言」プロフィール

佐藤優さん(起訴休職中外務事務官)が岩波書店発行の雑誌『世界』に連載した『民族の罠』(2005年07月号~2006年04月号)の最終回から「日本国憲法の擁護」を主張している部分を紹介します。

佐藤さんのこの文章を読んで、私(喜八)はにわかに「護憲」に目覚めました。恥ずかしながら、従来は日本国憲法について真面目に考えたことがなかったのです。なんとなく「古くなった法律を改めるのは悪いことではない」くらいに思っていました。

現在は「実用主義的護憲派」を自認しています。いま日本の支配的政治勢力──小泉純一郎氏や安部晋三氏などの極端な米国追随派──に「まともな憲法」がつくれるとは到底思えない。だとしたら、たとえ「戦勝国アメリカによって押しつけられた」ものであろうとも、現行憲法のほうが遥かにマシ、という立ち位置です。

**********************************************

『民族の罠 最終回』佐藤優(『世界』2006年04月号より一部引用)

(★引用開始★)

 本連載で、筆者は具体的な政治的提言を行うことをできるだけ控えた。それは最後に一つだけどうしても強調したいことがあるからだ。その強調したいこととは、日本国憲法の擁護である。筆者は、日本国憲法において日本の伝統的国柄(国体)が保全されていると考える。それは権威と権力を分離するという日本人の英知である。紙幅の関係で十分に論じることはできないが、新自由主義はアトム(原子論)的個体を前提とするので共和政体と結びつきやすく、ファシズムは権力と権威を一体化させた指導者が国民を束ねるというシステムなので、いずれも天皇制と軋轢を引き起こす可能性が高い。
 例えば、憲法第九条の改正は共和制に向けた露払いとなる危険がある。憲法第九条を改正して交戦権を認めよと主張する論者がいる。その場合、宣戦の布告は誰が行うのであろうか。論理連関からすれば天皇の国事行為になるはずだ。戦争を行った場合、日本が絶対に勝つという保証はどこにもない。事実、六一年前にわれわれは敗北したではないか。敗戦した場合、宣戦を布告した者の責任が追及される蓋然性は高い。ここから天皇制が外圧によって崩れる危険が生じる。天皇制が崩壊すると権威と権力を分離するという日本の伝統が崩れる。共和政体になった場合、権威と権力を一身に集めようとする煽動政治家の詐術によって日本国家がファッショ化する危険性が高まると思う。
 同時に憲法で重要なのは、愚かなことであれ、その人の言説や行為が他者に危害を加えない限り、それをできるだけ認めるとする愚行権を是認した伝統的自由主義(オールド・リベラリズム)を根幹に据えていることだ。憲法第一三条で定められた「幸福追求に対する国民の権利」は、「個人として尊重される」ことを大前提とするので、個人の幸福迫求権である。ある個人にとっての幸福が他者から見れば愚行に見える場合でも、他者に危害を加えない限り尊重するという伝統的自由主義の原理もファシズムとは相容れない。
 因みにこのような他者の言説や行為を尊重する多元的世界観は南北朝時代の南朝イデオローグ北畠親房が『神皇正統記』で展開した日本の伝統的国体観にも合致しているのである(詳しくは拙稿「神皇正統記から現代を読み解く(中)堀江貴文の世界観と国体崩壊の危機」『正論』(産経新聞社)二〇〇五年一二月号を参照願いたい)。
 現在、日本は前ファシズム的状況に置かれている。この状況をファシズムに転化させないためには、権威と権力を分離するシステムと愚行権を尊重する伝統的自由主義を保持することが重要だ。筆者の理解では、これは保守的政治課題なのである。現下論壇では、少数派になりつつある現行憲法擁護という立ち位置こそが日本のファッショ化を防ぐ有効な政治指針と筆者は確信する。  (了)

(★引用終了★)


関連ページ



投稿者 kihachin : 2006年06月30日 20:03

« 06-24~06-30の運動 | メイン | サッカーは楽しい! »



トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://kihachin.net/klog/mt-tb.cgi/741

このリストは、次のエントリーを参照しています: 佐藤優さんの護憲論:

» 狂牛病とアルツハイマーの密接な関係 from お玉おばさんでもわかる政治のお話
あれ??いつの間にか牛肉の輸入が再開されます・・・安全だって、言い切ってるけど以前とりあえずさんちで教えてもらった疑問は何にも解決されてないような気がするんです... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年07月01日 11:21

» 安倍さん、遺骨のDNA鑑定は決着済みですか? from 権力に迎合したマスコミ人を忘れるな!
金英男(キム・ヨンナム)さんの記者会見を見ました。 私の妻や姉は厳しい目で画面 [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年07月01日 16:01

» ちと今復旧作業中です。 from 三輪のレッドアラート
まだ全然復旧作業ができていませんが、なんとか復旧できそうな方法をてっく様に教えて頂きました。もう、しかしこんな事で数日潰れてしまうとは何とも情けないです。今晩中... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年07月01日 22:50

» 教育基本法改定の先取り――佐世保市、子ども育成条例に「愛国心」盛り込む from 華氏451度
  ◇◇◇◇◇まずはニュースの要約  毎日新聞・読売新聞といった全国紙のほか、西日本新聞、山陽新聞、その他いくつかの地方紙で報道されたため既に御存知の方が多い... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年07月01日 23:28

» BSE問題 「ピッシング」て知ってますか? from 晴耕雨読
なお半数以上のと畜場がピッシング 7割以上の国産食肉処理牛にピッシング 農業情報研究所(WAPIC)06.6.28より  厚生労働省が今年(2006年)2月末... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年07月02日 14:18

» 橋本龍太郎さんの死去 from お玉おばさんでもわかる政治のお話
橋本龍太郎さんがお亡くなりになりました・・・ 彼のホームページに今年いろんな場所で行なった講演会の内容が全文紹介されてます。その中より・・・・ 5月11日(... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年07月02日 21:23

» 懐の鳥は猟師も殺さず from 愚樵空論
「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」は「人の情け」をあらわす諺だ。「追い詰められて行き場を失った鳥が猟師のふところのなかに飛び込んできたときは、その猟師は自分に助け... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年07月02日 22:06

» 地に落ちた「自由」 from doll and peace
眠いっ・・・。寝る事意外すべて義務に感じてしまうほど、眠いぞ・・・・。 靖国参拝 [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年07月02日 23:12

» 「人間を犯罪から救い出す唯一の手段は、人間を自由から救い出してやることである」 from ある国際人権派の雑食系ブログ。(仮)
. 以下、「アフガン・イラク・北朝鮮と日本」掲示板に寄稿した私の投稿文を一部訂正・追記の上で当ブログにも掲載します。 (*なお、本エントリーのタ... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年07月03日 07:45

» そんな愛国心は役に立たない from 愚樵空論
確かにニッポンはいま、おかしなことになっています。 誰もが自由を振り回す。自由を振り回すくせに、その責任はとらない。他人の所為にする。 総理大臣までがそんな国... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年07月03日 08:33

» 英語ことわざシソーラス-TOEIC・英会話 英語学習決定版 from 英語ことわざシソーラス-TOEIC・英会話 英語学習決定版
英語ことわざシソーラス類語サイト。英語習得に特別な才能はいりません。英語の本質にそった常識破りの科学的な学習法で、TOEIC・英検・英会話をクリア [続きを読む]

トラックバック時刻: 2007年01月06日 21:33

» あるある大事典2 ねつ造疑惑について【無印良品で快適生活@mujiブログ】 from 無印良品で快適生活@mujiブログ
----引用元<番組ねつ造>総務省が関西テレビ調査へ -----------------総務省は20日、テレビ番組「発掘!あるある大事典2」でのデータねつ造につ... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2007年01月21日 01:51

» [あるある問題]<関テレ報告書>「納豆」以外の8本言及 「みそ汁」認める from 総合情報ニュース徒然草
 「あるある大辞典2」捏造問題で関西テレビより報告書が提出されたが、総務省より内容不十分との指摘を受けたという今日の記事より。 (引用記事は、下部に掲載) ... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2007年02月09日 21:41