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2006年08月15日

『ロッキード事件「葬られた真実」』

『ロッキード事件「葬られた真実」』平野貞夫

ロッキード事件の真相とは何か。そして、その事件の真相を闇に葬った真犯人は誰なのか」という戦後史最大のミステリーに挑んだ一冊。読み応えがありました。

ロッキード事件「葬られた真実」』著者の平野貞夫さんは1935年高知県生まれ。衆議院事務局職員として33年間勤務。田中角栄竹下登総理の「隠れた知恵袋」とも言われる「国会運営のプロフェッショナル」でした。参議院議員を2期勤め2004年07月引退。小沢一郎民主党党首の「側近中の側近」「懐刀」としても知られる、政界の表も裏も知り尽くした人物です。

至誠と老獪が同居した男。煮ても焼いても食えない叩き上げのオヤジというのが私(喜八)から見た平野貞夫像です(誤解なきように付け加えておきますと、これは私なりの「賛辞」です)。また平野氏は情報戦のエキスパートでもあります。その戦い振りに関しては、ジャーナリスト岩崎大輔氏の『ダークサイド・オブ・小泉純一郎』洋泉社(2006)の次の一節が如実に書き表しています(147頁。引用文中「」は岩崎大輔氏)。

 私は平野の事務所で話しながら、多くの教訓を得た。他人の口を割らせるツールは、何も「正論」や「力」に限られるわけではない。時に朗らかな笑顔や無知なふりをすることが情報を取得するのに役立つ、そのことを学んだ。逆に言えば、とびきりの笑顔を浮かべる者や一見して無知に見える者は、注意すべき相手でもあるということだ。情報も重要だったが、ちょっとした所作や発言で他人のプライドや心をくすぐる、その技術と話術は大いに参考になった。
 「首相がまたやってるんだよ、知ってる?」
 平野は時に自分の食べている鯛焼きを私に半分与えながら、自民党のネガティブ情報を授けるのであった。

一筋縄ではいかない人物」と評される平野貞夫氏。その政治の師匠は「憲政史上最高の名議長前尾繁三郎です。前尾繁三郎は「昭和天皇がもっとも信頼した政治家」だといわれています。4万冊という蔵書を有し、ラテン語・ドイツ語・英語・漢文は専門家レベルに達する「博学」の持ち主。その清廉な性格から与党野党の政治家・官僚・報道記者の多くからも頼りにされていました。平野貞夫が老獪の中に至誠を持ち合わせるのは前尾繁三郎の思想を受け継いだためでしょう。

ロッキード事件「葬られた真実」』は不世出の天才政治家田中角栄への鎮魂曲(レクイエム)であると同時に、日本社会が現在も抱え続けている深い「闇」を告発する危険な書でもあります。

極右のフィクサーであると同時にCIAのエージェントであった児玉誉士夫。その児玉の仮病・詐病により助かった人物は誰か? ロッキード事件の「表玄関」であった「防衛庁・児玉ルート(P3C等の対潜哨戒機導入)」はなぜ放置されたのか? 表玄関が閉鎖されたため、すべてのベクトルは勝手口である「全日空・丸紅ルート」に殺到し、田中角栄の逮捕につながった・・・。

ロッキード事件「葬られた真実」』には「クリーン」と言われながら実際はダーティーな三木武夫総理(当時)、暴走する「風見鶏」中曽根康弘幹事長、正義なき「正義の味方」検察、理念も常識も欠いた野党、無責任で酷薄な世論、「宗主国」アメリカが偶然の(?)包囲網を築き、田中角栄前総理を追い詰めていった過程が克明に描かれています。

いわゆるエスタブリッシュメント(日本の本当の権力)から疎まれ、結局はつぶされていった田中角栄。そのエスタブリッシュメントは外国の諜報機関により汚染され続けてきたし、それは現在も変わらない。岸信介元総理や正力松太郎元読売新聞社社長にCIAから多額の資金援助があったことは近年明らかにされています。「対米従属」という闇。いったい日本とはどういう国なのか? はたして独立国と言えるのか?

ところで、意外なことに『ロッキード事件「葬られた真実」』のあとがき(263頁)に鈴木宗男さん(新党大地代表)と佐藤優さん(起訴休職中外務事務官)の名前がでてきます。以下に当該部分を引用します(引用文中「鈴木」は鈴木宗男さん、「ノンキャリア外交官」は佐藤優さんを指します)。

 私大出身で地盤もなかった鈴木が大きな政治力を発揮するようになり、あるいはノンキャリア外交官がプーチン大統領誕生を世界に先駆けてつかんだその異能振りを発揮したとき、エスタブリッシュメントにとっては格好のスケープゴートになっていったのである。だからこそ、「構造改革」というお題目を熱心に唱えた小泉純一郎の「抵抗勢力」として、最高の敵役《かたきやく》になるシナリオを押し付けられてしまった。

なぜ私(喜八)は鈴木宗男・佐藤優の両氏を応援するのか? しなければならないのか? 平野貞夫さんの文章を読んだことで、改めてその意味がよく分かりました。

(『ロッキード事件「葬られた真実」』平野貞夫、講談社、2006)


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投稿者 kihachin : 2006年08月15日 20:31

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