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2006年12月10日

共謀罪と日本の刑事司法

『共謀罪とは何か』海渡雄一・保坂展人

三度《みたび》、海渡雄一弁護士と保坂展人衆議院議員の『共謀罪とは何か』岩波ブックレット(2006)を頼りに、共謀罪を考えてみました。

日本の刑事司法制度は国際スタンダードから見れば、かなり「特殊」です。

たとえば、あなたが何かの犯罪容疑で逮捕されたとします。世界各国の拘禁期間の標準は24時間、長い国でも48時間が限度です。ところが、日本では裁判官の拘留決定後も合わせると23日間(!)。さらには事件を分割すれば、その23日間を何度も繰り返すことが可能なのです。新聞・テレビのニュースでも拘留期間が切れるころに「再逮捕」とよく報じられていますね。

しかも、日本では弁護士が取り調べに同席することが事実上できません。米国の刑事ドラマなどを観ていると、容疑者が「弁護士が来るまでは一言もしゃべらないからな」なんて言ってますが、あれは日本では無意味な発言となるのです。容疑者はたったひとりで海千山千の捜査官と対峙しなければなりません。

また、警察の取調べ内容を録音・録画して可視化(取調べのプロセスを外部からも監視できるようにすること)は、欧米や韓国・台湾でも常識となりつつあるのですが、日本ではいまだに実現していません。それどころか司法当局の大勢は取調べの録音・録画には反対なようです(社会正義の実現という観点に立てば、取調べの記録をとっておくことは明らかにプラスのはずですが・・・)。

さらには「自白強要」という深刻な問題もあります。日本では依然として容疑者の自白が「証拠の王」とされています。長期間にわたる厳しい取調べに耐えかねて、捜査官に「素直に認めれば家に帰れるぞ」と甘言を弄され、嘘の”自白”をしてしまう人は少なくない。そして一度”自白”があれば、それは決定的な”証拠”となってしまうのです。

平和に暮らしている我々は「嘘の自白なんてそんな馬鹿な。ありえない」なんて思いがちです。けれども、それはけっして珍しいことではないそうです。かつては警察官僚であった亀井静香衆議院議員(国民新党代表代行)の次のような証言を聞いてみてください(「アムネスティ」のページより引用)。

法曹一元というけれども、裁判官は本来、当事者主義のもと無罪推定を前提にしていかなければならないのに、ともすれば公判廷の被告人の供述より検面調書を優先します。やはり裁判官には伝統的に国家権力への信頼があって――それが悪いとは言いませんが――今の刑事訴訟の立場からいうと、当事者対等・無罪推定の原則で公判廷に立って公平に行われているかと言えば、決してそうではありません。
そうしたなかで被疑者が勾留・取り調べを受けると、異常心理に陥ることが現実に、非常に多いのです。
私が立ち会った取り調べでもありました。いわゆる拘禁性ノイローゼにかかって、取調官との関係が王様と奴隷のような心理状態になってしまうのです。絶対的権力を握られてしまい、取調官のまったくの言いなりになる被疑者がかなり多くいます。
そして、そういう警察での供述をもとに今度は検察が調書を録っていきます。公判廷で、いくら被告人が「あれはウソだった。勘違いだ。誘導されたんだ」と言ったところで、検面調書には証拠能力がありますから、それが優先されていきます。

拘禁性ノイローゼ」というのは別に珍しいことではありません。たとえば病院に入院する患者さんの場合でもよくあることだそうです。知り合いの看護士さんに以前聞いたところでは、一定の割合で異常な言動をとってしまう患者さんがでるのだとか。ましてや、警察の厳しい取調べを受ける中、容疑者のうちのかなりの人が「異常心理に陥る」としても不思議でもなんでもありません。

日本の刑事司法制度では、容疑者は弁護士の同席もなくたったひとりで長期間にわたって「プロの捜査官」「落としの名人」の取調べを受けなくてはならない。その取調べはまったくの「密室」で行なわれ、録音・録画されることもないのだから、第三者が正当なものであったかを判断することはできません。そしてひとたび”自白”がなされたら、それは決定的な”証拠”とされてしまうのです。裁判になってから「あれは強いられた自白でした」なんて言っても、まず一顧だにされない・・・。

このように国際スタンダードから見たらきわめて「特殊」なのが日本の刑事司法制度です。ここに共謀罪のようないわば「オールマイティ」の法律を加えたら? とんでもない人権侵害が起こるのが目に見えています。共謀罪の導入は「狂気の沙汰」と私が強く感じるのはこのためです。共謀罪は現代に「特高」を蘇らせることになるだろうと私は確信しています。万が一そうなったら祖国日本は「おしまい」でしょう。


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投稿者 kihachin : 2006年12月10日 20:16

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