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2006年12月16日

『天皇制下の沖縄』

『天皇制下の沖縄』上江洲智克

天皇制下の沖縄』は沖縄の視点・被支配層の視点から叙述された「日本の歴史」教科書といえる一冊です。

著者の上江洲智克(うえず・ちこく、1916-1997)は、「外務省のラスプーチン」こと佐藤優起訴休職外務事務官の伯父にあたります。佐藤氏のご母堂と14歳年上の兄である上江洲智克氏は沖縄県北大東島に生まれ、後に久米島に移転しました。太平世戦争終了後、智克氏は日本社会党に入党し、兵庫県尼崎市で当初は市会議員、のちに県会議員をつとめました。

以下は甥の佐藤優氏による上江洲智克像です(雑誌『文學界』2006年11月号「私のマルクス 第四回 労農派マルクス主義」より引用)。

伯父は青年時代に沖縄独立論と本土復帰論の間で揺れ動き、苦悶した末、復帰論を選択し、沖縄の本土復帰と沖縄出身者に対する差別撤廃をライフワークとした社会主義者だった。より正確に言うならば、伯父は沖縄至上主義者で、沖縄にとってもっともよいシナリオを考え、所与の条件下では自らが社会党の地方議員になることで目的が達成されると考えたから社会党員になったのである。伯父はアメリカ施政権下の沖縄に渡航したとき、岐路、総理府発行の身分証明書(パスポート)を伊丹空港の入国管理官に「なんで国内の故郷を訪れただけなのに、外国に行くみたくパスポートを見せなくちゃいかんのか」といって提示せず、拘束され、新聞沙汰になったこともある。

尼崎のハブ(毒蛇)」と呼ばれた上江洲智克は自民党・共産党の双方から恐れられる存在であったそうです。その日本共産党嫌いは筋金入りでした。理由は、沖縄出身の徳田球一書記長時代に共産党が沖縄独立論を掲げ、武装革命路線で大勢の沖縄青年の運命を狂わせたことにありました。後に共産党が沖縄独立論から本土復帰論に180度方針転換したにもかかわらず、「わが党の方針は一貫している」と強弁したことが許せなかったのです。

日本憂国最大のイデオローグ佐藤優は、伯父の上江洲智克から決定的ともいえる影響を受けています。そのことは佐藤氏自身がはっきり認めています。母親と伯父から「労農派マルクス主義」、母親から「カルバン派(長老派)プロテスタンティズム」。日本の歴史上2人といないと思われる独特な佐藤優の思想は、母と伯父の2人から継承した思想をさらに発展させたものなのでしょう。

上江洲智克著『天皇制下の沖縄』を佐藤優氏は「自叙伝と沖縄研究ノートを折衷したような書籍」と評しています。これは学者佐藤優の率直な意見の表明なのだと思います。また一種の「照れ」もあるのかもしれません。沖縄の歴史に疎《うと》い私(喜八)は同書を「平明な文章で書かれた教科書」として読みました。「貢糖制度(124頁)」「分島・改約論(156頁)」すら知らなかった不勉強者には、いたってとっつきやすい沖縄入門書でありました。


(『天皇制下の沖縄』上江洲智克、三一書房、1996)


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投稿者 kihachin : 2006年12月16日 20:03

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