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2007年04月22日

名誉白人

小学校高学年のころ、国語担当の男の先生がニコニコしながら「日本人は南アフリカ共和国では《名誉白人》とされているんだよ」と教えてくれました。たしか授業内容とはあまり関連のない、雑談風の発言だったと記憶しています。

正直に言って、そのとき11歳か12歳であったはずの私(喜八)は、こそばゆいような嬉しいような、なんだか誉められたような気持ちになったのでした(ああ、恥ずかしい!)。後に自分なりに読書を進めることで「レイシズム(人種差別)」の実態が分かってきてからは、じつに不愉快な気持ちになりましたが・・・。

あのとき、先生はどういう気持ちで「名誉白人」の話をもちだされたのでしょう。 内心では「《名誉白人》なんてのは国辱ものだ!」と怒りに震えていたのか、それとも案外単純に「《名誉白人》とは嬉しいなあ」と思われていたのか? どちらとも判断することができません。いずれの可能性もありそうです。

もっとも「名誉白人」なんて言っても、若い人たちは聞いたことがないかもしれませんね。最近の教科書には載っているのかな? 「アパルトヘイト」は聞いたことがあるでしょうか。南アフリカ共和国で「白人」と「非白人」を「分離・隔離」した政策のことです。そんな昔の話じゃありません。「アパルトヘイト」が撤廃されたのは1991年のことですから、たった16年前の話です。

「アパルトヘイト」法の下では「白人」と「非白人」が結婚するのも恋愛するのも(もちろん)禁止。住む地域、学校、電車やバスなどの交通機関、レストランや小売店などの店舗、公園や公衆トイレなどの公共施設、ありとあらゆるものが「白人」用と「非白人」用に分離・隔離されたのです。

そういう中での「名誉白人」待遇です。

これはどういう意味かというと、結局のところは「カネ」なんでしょうね。「アパルトヘイト」なんてあからさまな悪政を行なっていた南アフリカ共和国は国際的にも評判が悪く、まともに付き合ってくれる国も少ない。そこに当時は「高度成長期」にあった日本のビジネスマンたちがたっぷりカネを持ってやってきた。

本音の部分では極東から来た黄色人種なんて差別しまくりたいのだけれど、日本人の持ってるカネは欲しい。だから「名誉白人」にしてあげるよ。その換わりにビジネスでたんまり儲けさせてちょうだいね。こういうことだったのだろうと思います。

それで「名誉白人」である日本人への待遇はというと、たしかに「住む地域、電車、バスなどの交通機関、レストランや小売店などの店舗、公園や公衆トイレなどの公共施設」などは「白人」用を使えました。ただし、「学校」は別。さらには結婚や恋愛となると「問題外(厳重に禁止)」。現地の白人女性と結婚した日本人男性が国外退去処分を受けるという事件もあったようです(この辺が南ア白人の「本音」でしょう)。

ところで「過去の遺物」となった「名誉白人」を、いまさらながら取り上げるのは何故かというと・・・。私の見るところでは、もし白人から「名誉白人にしてあげよう」なんて言われたら、素直に喜んでしまうような「ナイーブ」な日本人が今でも多いのではないだろうか? そして「自分は白人に近い」と大勘違いされている方も少なくないのではないか? と疑っているからなのです。

これって、あながち冗談じゃないんですよ。試しにまわりの日本人(土着の亜細亜系日本人)に「あなたは自分が《白人》に近いと思いますか? それとも《黒人》に近いと思いますか?」と質問してみてください。かなりの割合で「白人に近い」という答えが返ってくるはずです。老若男女の別や知識の多寡にかかわらず、「白人に近い」派は少なくないのです。

けれども、世界中を見回しても「黄色人種である日本人が白人に近い」なんて思っている人はあまりいないのではないでしょうか。「黒人に近い」が国際的な常識だろうと思います。これは白人も非白人も合わせての話です。

「名誉白人」なんて言われて「いい気」になって、白人の目線になって有色人種を軽んじ差別する。自分自身がれっきとした有色人種だというのに。かつての南アではこういう光景がしばしば見られたそうです。それって南アの「白人至上主義者」にすれば抱腹絶倒の対象だったでしょうね。腹を抱えて涙を流して「白人気取りの黄色人種」を嘲《あざけ》り笑ったに違いありません。

幸いなことに「名誉白人」という醜悪な制度は廃絶されました(今後復活しないことを祈るばかりです)。でも、いまだに「つもり白人」とでもいうべき「勘違い」は強固に残っていると私には思えるのです。そして、この「つもり白人」意識は途轍もなく危険なものであり、日本という国を地獄へと導くものであるような気がしてなりません。これが私の「大いなる勘違い」であれば幸いですが・・・。


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投稿者 kihachin : 2007年04月22日 13:32

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