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2007年04月30日

「護憲タカ」箕輪登

『我、自衛隊を愛す故に、憲法9条を守る』

2003年12月、小泉純一郎首相(当時)の「独断専行」で自衛隊が戦乱のイラクに派兵されました。この明白な憲法・自衛隊法違反行為に対して非常な危機感を抱いた北海道小樽市在住の80歳男性がいました。故・箕輪登氏です。

箕輪登氏は自《みずか》ら札幌弁護士会を訪れ「自衛隊イラク派兵を中止させる訴訟をおこしたいので協力をしてほしい」と申し入れました。箕輪氏の要請に応じて100人以上の北海道在住弁護士が訴訟への協力をすることになり、2004年01月28日、札幌地裁に「自衛隊イラク派兵差止訴訟」が提訴されました。

箕輪登氏はどういう人物だったのでしょうか? じつは自民党衆議院議員を23年間にわたって務め、防衛政務次官・衆議院安全保障特別委員長・自民党国防部会副部会長・日本戦略センター理事長を歴任した、周囲の誰からも「タカ派」と評されるような人だったのです。

そのような「タカ派」の箕輪登が「今回の自衛隊イラク派兵は戦争参加そのものであり、憲法・自衛隊法違反だ。自衛隊員が人殺しをすることなく一刻も早く帰宅できるようにしたい」という強い信念のもとに差止訴訟を提起した。誰もが驚くような行動であり、まさしく「義挙」でありました。

残念ながら、箕輪登さんは裁判も中途の2006年05月14日に永眠されました。自衛官たちの帰国を見ることのできなかったのが、さぞかし心残りであっただろうと察せられます。そんな箕輪さんの葬儀の会葬礼状には箕輪さん自身による次のような言葉が書き添えられていました。

何とかこの日本がいつまでも平和であって欲しい
平和的生存権を負った日本の年寄り一人がやがて死んでいくでしょう
やがては死んでいくが死んでもやっぱり日本の国がどうか平和で働き者の国民で幸せに暮らして欲しいなとそれだけが本当に私の願いでした
みのわ登

いまの日本には、自分の身は絶対安全圏に置きつつ口先だけは矢鱈《やたら》に勇ましい、「にせタカ派」とも呼ぶべき人たちが溢れています。生まれながらに特権的な地位を与えられた世襲議員でありながら、ミリタリズム(軍国主義)大好きという「ぼんぼんタカ」にも事欠きません。

はっきり言いましょう。私(喜八)はこういった「チキンホーク(Chicken-hawk)」どもが心の底から大嫌いです。世にも最低の奴らだと軽蔑しきっています。「そんなに戦争がしたいのなら、自分で銃をとって、勝手に殺しあってくれ」と、これは何度でも言いたい。

しかし故・箕輪登氏のような平和を愛する「タカ」、「護憲タカ」には敬意を覚えざえるを得ません。

人々の平和な暮らしを守るためには誰かしらが「タカ」の役目を果たさなければならないのでしょう。「非武装中立」は美しい政治理念ではありますけれど、いつの時代・どこの地域でも成立するというものではありません。いまの日本にはやはり「タカ」が必要だと私は考えます。その「タカ」が憲法を守り平和を守る存在でありさえすればいい。

2004年04月08日、北海道出身のTさんら日本の若者3人がイラク国内で武装抵抗勢力(レジスタンス)によって拉致され人質となりました。小泉首相(当時)を始め日本政府の大勢は「人質見殺し」の方向に傾いていたと私は思います。しかし、箕輪登氏は違いました。3人の若者たちの代わりに自分を人質にしてくれと、中東カタールの衛星TV局アルジャジーラを通じて英文メッセージを送ったのです。

さらには人質たちが救出された後に日本国内で沸き起こった「自己責任バッシング」に対し、箕輪登氏は怒りのコメントを発表しました。以下にその一部を引用します。

 政府や一部報道機関は、人質とされた三名に対して、『自己責任』を強調し、自衛隊派遣の国策を妨害し、政府に要らぬ負担をかけた『非国民』であるかのごとく言っているが、とんでもない話だ。特に北海道出身の二人について言えば、本当の意味での人道支援を実行しようとした勇気ある素晴らしい若者たちである。
 問題は、小泉首相である。自己責任を言うならば、憲法や自衛隊法に違反する派兵をして、自国民を人質に取られるようなことをした政治家の責任こそ問われるべきである。
 国民も、軍隊を国外に出すと結局こうなるということ、自国民の安全や保護よりも国策遂行=軍隊の活動が優先するということを知ったと思う。
 自衛隊は、一刻も早く撤退すべきである。そして、日本国内から二度と出してはならない。

生涯を通じて「平和を守るタカ」であり続けた箕輪登さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。


(『我、自衛隊を愛す故に、憲法9条を守る』かもがわ出版、2007)


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投稿者 kihachin : 2007年04月30日 14:51

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