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2007年04月28日

名家にあらざるなし

関ヶ原の合戦


名家にあらざるなし」という言葉は、ずいぶん前に「婆沙羅天明」という俳優さんから聞きました。どんな人でも「ご先祖様」を何代か(あるいはそれ以上)さかのぼれば必ず「名家」に行き当たる。だからすべての「家」は名家の末裔《まつえい》であり、すなわち名家なのだという意味だそうです。

とはいえ、この「名家にあらざるなし」の出典がわかりません。いま「Google」や「Yahoo!」でフレーズ検索してみても、「該当するページが見つかりませんでした」となってしまいます。いかにも「ことわざ」にありそうな表現なのですが、もしかしたら俳優「婆沙羅天明」氏のオリジナルなのでしょうか? 最近は婆沙羅氏と顔をあわせることもないので、確認できないのですが・・・。

ちなみに「婆沙羅天明」氏は身長191cm の大男で、各種格闘技にも通じたアクション俳優です。それでいて礼儀正しい紳士かつ熱心な読書家という不思議な人物。子供向け特撮TV番組の「怪人」役や「東映Vシネマ」で「殺し屋」役なんかを得意としていました。ただ、ネット検索してみると結果があまりでないので、もしかしたら既に役者を廃業されているのかもしれません。

婆沙羅さん、もし当ページに検索で辿り着かれることがあったら、私(喜八)までメールをください(笑)。

で、ここからが本論です。

洋の東西を問わず「系図屋さん」なる商売があって、お客さんの注文に応じて「家計図」を作成してくれる。これはもう大昔からある商売で、けっして廃《すた》れることがないのだそうです。特に「功なり名を遂げた」方は己《おのれ》の越し方を振り返るとともに「《ルーツ》を確認したい」という欲求が沸いてくるものなのかもしれませんね。

この「家計図」が単なる自己満足のためのものであるかといえば、そうでもなさそうです。たとえば日本の「戦国時代」では「家系図」が強力な武器ともなりました。それは以下おいおいに解説していきます。

戦国時代といえば、群雄割拠する戦国大名たちが互いに領地を切り取ることを虎視眈々と狙っている、ボヤボヤしていれば領地も首も失うという恐ろしい時代です。ただし、映画やドラマで描かれるように戦国大名たちが「戦《いくさ》」ばかりしていたかというと、これは違うようですね。

実際に合戦を行なうとなると、たとえ勝ったとしても相当な「痛手」を負うことを覚悟しなければならない。隣国と合戦してその領土を切り取ることに成功したとしても、戦いで弱ったところに別の隣国が攻めてきたら、今度は自分が危うくなる。だから戦国大名たちは「戦わずして勝つ」ことをまず最初に考えたでしょう。

いわゆる「調略」です。「敵」に対して正面から武力攻撃をする前に、「敵」の中に「味方」をつくることを考える。手っ取り早く言えば「寝返り」を促《うなが》す。現代の人間には「調略」なんて卑怯なように思えるかもしれません。でも戦国大名などはその全員が極端なプラグマティスト(実利主義者)だったでしょうから、「調略」はもっとも合理的な戦い方であったと思います。

たとえば「天下分け目の合戦」といわれる「関ヶ原の戦い」も調略によって勝敗が分かれました。「東軍」徳川家康が「西軍」の小早川秀秋と吉川広家の調略に成功し、激戦の最中に小早川隊が寝返り、吉川隊が最後まで動かなかったことが「東軍」勝利につながりました。もし、小早川隊・吉川隊が「西軍」に忠実であったら、結果は逆になり、徳川家康は生きて関ヶ原の地をでることはできなかったでしょう。

一般に「調略」では「高い地位を与える」「領土やカネを与える」などの「利益誘導」や、圧倒的な武力を背景に「恫喝」するなど、ありとあらゆる手段が試みられたようです。ただし、調略を受ける側にしてみれば従来の味方を裏切るわけですから、自分が得をするからと言ってホイホイと乗るのも気が引ける。さらには「奴は簡単に味方を裏切る男だ」なんて評判がたったら、それが仇《あだ》となって味方に殺される危険性も高まる。

ここで必要になるのが「大義名分」です。自分は決して「裏切り者」などにはなりたくないが、現在仕えている「殿」よりも「敵」側の「殿」のほうに「大義名分」があるのは明らかだ。正統性を重んじる武士として、泣く泣く(?)「寝返り」のようなこともしなければならないのだ。こうやって「形」を整え、敵側の調略に乗ってゆく。

そして「大義名分」を補強するものに「家系図」があるというわけです。「我が殿は由緒正しき血統の方にして、真に武士の頭領にふさわしきお方。智謀者として知られるご貴殿には物の理《ことわり》も明々白々でござろう。是非に我が殿にお味方なされ」というように家系図が調略の「セールストーク」に使われたのではないか、なんて想像するのです。

一般に戦国大名たちの家系図は相当にいい加減なものであったとされ、どこの馬の骨とも分からぬ者が成り上がった末に見栄で立派な系図をでっち上げたという見方がされていますが、これは一面的かもしれません。家系図という紙切れ一枚で少なからぬ人命を救うことができると考えればどうでしょうか。

お互いに不必要な消耗戦を避けるために調略を行なう。多くの場合、調略には大義名分が必要となる。そして「家系図」は大義名分を裏打ちする非常に強力なツールとなる。調略する側もされる側も内心では「この殿の家系図は相当に怪しいなあ」と思っていたとしても、そこは知らん顔をして取引を行なってゆく・・・。

こんなことは現代人の感覚ではまさに「卑怯未練」となるのかもしれません。薄汚いやり方に見えるかもしれません。しかし、こういった調略のおかげで不必要な武力衝突を避けることができて、多くの人の命が助かるというプラス面は見逃せません。調略によって勝負をつけてゆくことは結果として「平和を守る」ことにもつながるのです。

現代における「調略」は「外交」となるでしょうか。インテリジェンス活動をも含めた総合的な「外交」。この現代の調略戦で勝ち抜き自国民の安寧を守るためには、戦国大名並みのプラグマティックな精神が必要になるだろう。あえて「ワル」となって泥水をすする覚悟も必要だろう・・・。なんて結論らしきもの(?)がでたところで、この駄文をお終いにします。最後まで読んでくださった方には厚くお礼を申し上げます。


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投稿者 kihachin : 2007年04月28日 10:24

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