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2007年05月09日

戦争はロクなものではない

マレー沖海戦のプリンス・オブ・ウェールズとレパルス

ものすごく素朴な疑問ですが・・・。
人間はなぜ戦争をするのでしょうね?
経済合理性から考えたら戦争なんて割に合いませんよ(特に長期的には)。

それでも頻繁に戦争を行なうのは何故なのか?

実際に戦争をしてみれば、それが「割に合わない」だけでなく、いかに汚辱に塗《まみ》れたものであるか、いかに下劣なものであるか、誰にだって分かるはずなのです。

どこで読んだか、あるいは誰から聞いたのか忘れてしまいましたが、次のような言葉が忘れられません。

「兵士が血塗れになって死んでいったなんてのは戦争を知らない者の奇麗ごとだ。彼らは膿《うみ》まみれ、ウジまみれ、糞まみれになって死んでいった」

昭和34年(1959)生まれの私(喜八)には、もちろん直接の「戦争体験」はありません。

けれども、父方母方の祖父母が「東京大空襲」を体験し、「少年軍属」であった父は空襲で亡くなった方々の黒焦げの遺体を負ぶって運んだことがあり、大叔父たちは実際に兵士として戦地に行っています。そんな彼ら彼女らの生々しい体験談を聞いて育ちました。

それでつくづく思うのです。
戦争なんてロクなものではないと。
戦争にヒロイズムやロマンがあるなんて「勘違い」をするのは、戦場から遠く離れた安全地帯に身を置く者たち、それも想像力を決定的に欠いた者だけだと。

昭和11年(1936)生まれの母は「東京大空襲」の際は地方に「縁故疎開」していたため、戦火を肌身に感じたことはありません。
それでも「戦争は嫌なものだよ」と今でも時折つぶやいています。

特に嫌だったのは、近所のおじさん・おばさん、ごく普通の人たちが肩をそびやかし、威張り散らしていたことだったそうです。
自分が実際に戦うわけでもないのに矢鱈に勇ましいことを言う。
そして、ちょっとでも周囲に同調しない者がいると「非国民」というレッテルを貼り付け憎悪の対象にする。

もっと嫌だったのは昭和20年(1945)08月15日の「敗戦」と同時に、周囲の大人たちの態度が「コロッ」と変わったことでした。
学校の先生を始め昨日まで「鬼畜米英」やら「本土決戦」やらさんざん煽《あお》っていた大人たちが「アメリカ民主主義万歳。マッカーサー元帥万歳」に「転向」してしまった。

母は子供ながらに、とことん呆れ果てたそうです。
結局、大人たちが鼓吹していた「愛国」などは一夜にして180度転換をしてしまうようなものに過ぎなかった。
大人なんて、人間なんてアテにならない・・・。

ここで話題が少し変わります。

長編小説『人間の条件』を書いた故・五味川純平は「治安維持法」違反で検挙された経歴があったため、ソ満(ソ連・満州)国境守備の「捨石」とされ、たった1日の戦闘で部隊はほぼ全滅。まともな軍装もない日本軍部隊(なかには素手の者さえいた!)が、当時「世界最強」であったソ連軍機械化部隊(戦車部隊)に一方的に「虐殺」されたというのが実情でした。

こんな実経験から五味川純平は「戦争」と「戦争屋」を心の底から憎んでいました。

一方、中曽根康弘元首相は太平洋戦争時「海軍主計将校」という「美味しい」ポジションにいたため、戦争を肯定する気持ちが強いようです。
日本人の中には中曽根と同じような「戦争肯定派」も少なくはないのだろうな、とは思います。

しかし、昭和40年代くらいまでは圧倒的多数の人々に「戦争なんてロクなものではない」という共通認識がありました。
実際に戦争を経験した者の多くにはそれが肌身に染みてよく分かっていたのでしょう。
だからこそ、五味川純平の『人間の条件』も通算1000万部以上といわれる大ベストセラーになったのでしょう。

けれども戦争体験者は年々確実に人数が減っていきます。
彼ら彼女らにはあった「戦争なんて馬鹿馬鹿しいことだけは、やめておこう」という意識も次世代以降ではどんどん薄れていく・・・。
「戦争なんてロクなものではない」という「常識」が人類の「共通財産」として受け継がれることが少ないのは何故なのだろうか?

この点が不思議で不思議でなりません。

人間にとって戦争とはキリスト教でいう『原罪』なのだろうか?
私(喜八)自身は特定の教団に属さない「なんとなく神仏混淆教徒」だと自己規定しているのですが、こんなことを改めて思ったりします。

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投稿者 kihachin : 2007年05月09日 12:50

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