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2007年06月15日

ワーキングプアは「自己責任」ではない!

『東大一直線』小林よしのり

サピオ最新号の『ゴー宣』読んでください。傑作です! 右派左派関係なく読めます!」とは「謎の憂国者 」さんのお言葉です。それで私(喜八)はいたって素直に(笑)雑誌「SAPIO」2007年06月27日号(06月13日発売)を買ってきました。

ワーキングプアは「自己責任」ではない!」。小林よしのりさんの連載漫画「ゴー宣・暫《しばらく》」の一編。ふむふむ。まずは小林よしのり氏が雨宮処凛さんと共に月刊誌「論座」の企画で新宿の漫画喫茶に取材に行った様子が描かれています。

アパートの家賃を払えなくなった「フリーター」や、リストラされた中高年、さらには夫の暴力から逃れてきた女性といった人たちが漫画喫茶やネットカフェに寝泊りする。いわゆる「ネットカフェ難民」は4~5年前からの現象だそうです。

政治家・財界人・保守派の言論人・テレビコメンテーターなどの多くは「ネットカフェ難民」の境遇を「怠惰の結果」とみなして「自己責任」の一語で片付けようとする傾向があります。たとえば人材派遣業者「ザ・アール」社長で経済同友会理事の奥谷禮子氏などは次のようなことまで言う・・・。

ネットカフェとか漫画喫茶で寝っころがっている人たちに税金払って云々というのは結果の悪平等になります。

それに対して小林よしのり氏は「でたらめなことを言うな!」と激しく反論します。そしてネットカフェ難民化する若者たちの境遇が「自己責任」の結果などではないことを理路整然と証明していくのです。

大人《おとな》が若者を育てて一人前にするのが、かつての日本企業では普通のことだった。しかし、いまは即戦力にならない若者は「派遣」で使い捨てにするだけだ。そのために「自己責任」という言葉が便利に使われている。こんな国のどこが美しい? 日本はつくづく「汚い国」になったものだ。

小林よしのり氏の「檄文」はさらに続きます。若者たちを使い捨てにしてカネ儲けにふける大人たちを弾劾するだけでなく、困窮し難民化した若者たちの側も叱り飛ばす。「権力に利用されていることに気づけ!」「ワーキングプアを放置するような政党には投票するんじゃない!」と。

以上ざっと説明してみましたが、ご興味を持たれた方はぜひ「SAPIO」2007年06月27日号の「ゴー宣・暫《しばらく》」をお読みください。護憲派・市民派・リベラル・左派には「小林よしのりアレルギー」を起こされている方が少なくないのは私もよ~く知っています(笑)。けれども、この「ワーキングプアは「自己責任」ではない!」には「アレルゲン」は(それほど)含まれていないと思います。

それでも「小林よしのりなど認めん!」という方は少なくないでしょうね。以前、この「喜八ログ」でも「「現時点での憲法改正には反対」小林よしのり」というエントリをアップしましたが、護憲派や左派の人たちから「小林よしのりだけはダメ」という「ダメ出し」を複数いただいてしまいました。

でも、「サヨク」でも「ウヨク」でもない「ゲヨク(下翼)」の私から見ると小林よしのり氏は「真面目な愛国派」なんですね。「アメリカにノーを言う保守」という骨の折れるポジションで奮戦を続けている。もし、小林よしのり氏が「カネのために」右派をやっているのなら、「対米隷従右派」小林氏本人の言葉でいう「ポチ保守」になればいいのですから。そうすればラクにカネ儲けができるのです。しかし、「真面目な愛国派」小林よしのり氏は断固としてそんなことはしない。

もちろん、小林よしのり氏と私(喜八)では意見の異なる点も少なくありませんし、「小林氏は間違っている」と感じることも多いです。しかし、そんなことは本質的な問題ではありません。人それぞれ「顔」が異なっているように意見に相違があるのは当たり前です。そして人間誰でも間違えるし(でなければ神サマです)、間違っているのは私のほうかもしれない。

ここで「外務省のラスプーチン」こと佐藤優氏の「小林よしのり評」を紹介します。言うまでもありませんが、佐藤優氏も「真面目な愛国派」のひとりです(それも身体を張ったウルトラ愛国派!)。以下は佐藤優氏の著書『国家と神とマルクス』からの引用です(186頁)。引用文中「」は佐藤優氏。「小林さん」は小林よしのり氏です。

小林さんと私は、憲法問題に関するシンポジウムで一度しかお会いしたことはないけれど、小林よしのりさんは非常に真面目な人物です。他者の言説をきちんと聞いてその内在的論理を正確に捉えようとする思想の構えがあります。それから小林さんは、右派、国家主義陣営の学者と比べて人間としての芯が強い。自分が咀嚼したものしか描かないので、迫力が違います。知的言語を日常用語に翻訳する天才的能力があると思います。小林さん自身は排外主義的(ショービニスティック)な言説を吐いているとは思っていませんよ。しかし、漫画という媒体を用いると細かいニュアンスまでは表現しにくい。だから排外主義的な受け止めをされてしまう。

さらに佐藤優さんは次のような指摘をしています(186-187頁)。

 私が見るところ、問題は二つあると思います。第一は、小林さんに誰がどのような基準でデータを提供しているのかということで、そのデータの信頼性です。第二は「小林よしのり的なるもの」が一部の人々にとって排外主義的シンボルと受けとめられてしまうようになっているので、小林さんが作品で提示する内在的論理からははるかに乖離している人々が小林さんの言説を排外主義的ドクトリンとして受け止めてしまうことです。

少なからぬ「護憲派・市民派・リベラル・左派」の人たちが強い「小林よしのりアレルギー」を起こすのは「小林よしのり=差別主義者」という認識があるからだと私(喜八)は見ています。しかし、佐藤優氏は小林氏は一部の読者によって誤読されていると判断しています。佐藤氏の見解に私も同意します。

ただ、最近は「小林よしのりを誤読する」読者も少なくなってきているのではないでしょうか。そのためか、「対米隷従右派」陣営からの「小林よしのりバッシング」が盛んに行なわれています。某巨大掲示板では「アメリカにノーを言う保守」小林よしのりに対する熾烈な個人攻撃が続けられてきました。それらの雑音を物ともせずに言論活動を続ける小林氏は、やはり「骨のある言論人」だと思わざるを得ません。

最後に。じつは私(喜八)はもっとも初期の「小林よしのりファン」です。小林よしのりさんが「週刊少年ジャンプ」増刊号掲載の「ああ勉強一直線」でデビューした際、「これは面白い!」と爆笑したひとりが高校生だったころの私なのです。「ああ勉強一直線」は後に『東大一直線』連載に発展する読みきり短編でした。後の小林作品とは違って、細い線で描かれた一種繊細な印象のギャグ漫画でした(はっきり言って絵は下手でした)。主人公の「東大通」も、いわゆる「天然」キャラで、あまりアクが強くはありませんでした。

しかし、これがとにかく面白かったのです! 私にとっては魂のいちばん深いところに直接響くような面白さ! けれども不思議なことに同級生たちの多くは「ああ勉強一直線」に感銘を受けていないようでした。しばらくして『東大一直線』の連載が始まると「小林よしのりファン」はにわかに激増したのですが、それを横目で見て「ふん、小林よしのりを最初っから面白いと思ったのはオレだけだな」なんて思っていた高校生が私でした(笑)。

私が大学受験勉強をした1977~1978年の時期には、自分も『東大一直線』の登場人物のような気持ちでいました。「験勉せんか?!」「親指大ね!」という漫画の中のセリフを友人と2人で何度も口にしたものです。そして友人と私は共に現役合格を果たすことができました(なんと友人は本当に東大に受かりました)。これも幾分かは(相当?)『東大一直線』と小林よしのりさんのおかげと言えるでしょうね。

その後の私は年をとるにつれて熱心な漫画読者とは言えなくなりましたが、生まれつきシツコイ性格ということもあり、いまだに「小林よしのりファン」であり続けているのです。


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投稿者 kihachin : 2007年06月15日 12:55

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