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2008年03月20日

厳罰主義

鉄条網


このごろは「犯罪加害者に対する厳罰」を主張するのがトレンド(?)のようですね。
悪い奴はどんどん死刑にしろ!」と仰る方が私(喜八)の周りでも増加しているように思います。

先日も知り合いの40代男性Aさんが「厳罰論」を気持ち良さそうにぶっていたので、思わず茶々を入れました。
「Aさん、あなたは交通違反の反則金の値上げにも賛成しますね?」。
ちなみにAさんはつい先日スピード違反・駐車禁止違反と続けて検挙され大散財をしたばかりです。

Aさんは思わず口ごもります。
それはそうですね。
スピード違反・駐車禁止違反の反則金が「バカ高い」ことについて、私を相手に盛大に愚痴をこぼしたばかりなのですから。

で、私は冷酷に畳み掛けます。
「一部の犯罪加害者だけを対象とした『厳罰化』はありえないんですよ。『法の下の平等』という大原則がありますからね。『厳罰化』を進めた場合、全ての脱法行為・犯罪が『厳罰』に処されなくてはいけないんです。だから交通反則金・罰金もどんどん値上がりするのは避けられません」。

おそらくAさんは「喜八の奴がまた理屈っぽいことを言っている」と内心憤慨されたでしょうけれど、特に反論してくることはありませんでした。
もしAさんが「殺人や強盗のような犯罪と交通違反は違う」というような果敢《はか》ない抵抗をされていたら、「交通違反は直接に他者の生命を脅かす、きわめて反社会的な行為だということもできます。厳罰化は当然ですね」なんてトドメを刺したかもしれません(笑)。

「犯罪加害者への厳罰化」を進める局面では「自分だけは例外」なんてことはありえません(法の下の平等!)。
だから、仮に(運悪く)自分が加害者となってしまったら如何《いか》なる厳罰でも甘んじて受ける、という覚悟のある人だけが「厳罰化」を主張する権利があると私は思います。

たとえば自動車の運転をしている人なら、誰だって交通事故の加害者となる可能性はある。
これを否定することはできません。
仮にこういう想定ができない人がいたとしたら、その人は社会にとって危険な存在であると言わねばならないでしょう。
「交通事故加害者」は厳罰に処されなければならない!(厳罰論に従えば)

正直に言うと私(喜八)もずっと以前に「交通事故加害者」となったことがあります。
幸いなことに被害者の方の怪我が軽微であり、また(私が)任意保険に加入していたため、大ごとにはなりませんでしたが・・・。
もし運が悪ければ「被害者の方が頭を強く打って死亡」なんて事態も充分にありえたでしょう。
その後は運転が嫌になってしまって、このごろではもっぱら自転車利用です。

交通事故だけでなく、多くの人にとって「犯罪加害者」あるいは「犯罪容疑者」となる可能性はゼロではありません。
たとえば最近よく話題になる「痴漢冤罪」。
つい先日にも無実の男性を意図的に罠にはめる「痴漢冤罪詐欺」が摘発されたばかりですね。
また、会社勤めをされている方なら「横領」などの経済事件に巻き込まれる可能性は無視できません。
現在の日本は「アメリカ流のイケイケの弱肉強食の資本主義」社会に移行中ですから、今後は経済事件も増大することが予想されます。サラリーマンであっても、まったく身に覚えのないことで突然逮捕される、なんてことを現実的に心配しなければならない時代が来そうです。

そして日本では刑事事件での有罪率は「99.9パーセント」です。
はっきり言えば「もし起訴されたらオシマイ」の世界です。
佐藤優さん(起訴休職外務事務官・作家)の例を見れば、総理大臣の命を受け外務省トップが判を押した業務を遂行したことが「背任・偽計業務妨害」に当たるとされて、「懲役2年6月、執行猶予4年」の有罪判決を受けています。これが「犯罪」とされるのなら、検察官の裁量しだいで、なんだって犯罪にできるだろうって話です。

ここで私の妄想癖がムクムクと沸き起こり、次のような「お話」を考えてみました。

会社の同僚たちが顧客の資産を横領し続けていた。
しかし、ボンクラ者の私はそれにまったく気づかなかった。
ある日、ついに悪事はバレて横領犯たちは警察によって逮捕される。
ところが、取調べにあたった検察官はこんなことを考え始める。
「この喜八という奴は怪しい。同僚たちの横領にまったく気づかないというのはあまりに不自然だ。なんとも心証が悪い」。
さらには「『喜八ログ』というブログで、佐藤優城内実鈴木宗男雨宮処凛のような者たちを日常的に応援している。心証は最悪だ!」なんてことも思うかもしれません(笑)。
もちろん私(喜八)は上記の人たちのことを身体を張って日本の国をより良くしようとしている「真の愛国者」だと思うからこそ応援しているわけですが、一方で「既得利権保守」と「アメリカ様マンセー」を信条としている「ある種の人たち」にしてみれば「すこぶる心証が悪い」かもしれない。
そんなこんなで検察官氏は「喜八主犯説」というスジを描き始める。そして逮捕された真犯人たちに「喜八も共犯ではないのか? いや、ひょっとしたら主犯では?」というエサをぶら下げてみせる。
真犯人たちは自らへの処罰を少しでも軽くしたいという一念で「喜八主犯説」に飛びつく。
かくして「検察官面前調書(検面調書)」において「喜八主犯説」が創り上げられる。
裁判ではよほどのことがない限り「検面調書」は「事実」とみなされる。
もちろん私は己の無実を主張するが、複数の「共犯者」たちの(ウソの)供述が私の「有罪」を示している!
さらには無実を主張し続ける姿勢が「改悛の情に欠ける」とされて、「主犯・喜八」はもっとも重い処罰を受ける(真犯人たちが執行猶予付きなのに対して私だけ実刑とか)。

と、まあ以上はあくまで「妄想」にすぎないのですが・・・。
佐藤優さんの辿った運命を見れば、「絶対にないこと」とは言い切れないでしょうねえ。

ところで「厳罰化」に話を戻します。
ちょっと前には未成年犯罪者への厳罰が叫ばれていました。
未成年の犯罪者を厳しく罰する。
まあ、それもひとつの考え方ではあるでしょう。
しかし、「未成年犯罪厳罰化」を主張する大人たちは、自分がさらに重い厳罰に処されることを覚悟されているのでしょうか?
未成年者は年齢によっても異なりますが、選挙に立候補できない、投票できない、結婚できない、酒・タバコを窘《たしな》めないなど、各種の権利が制限されています。
権利と責任はバランスがとられなければなりません。
権利が制限されているのだから、責任も(ある程度)免除されなければならないはずです。
ここでちょっと飛躍して荒っぽい結論を言えば、未成年者を厳罰に処するなら、大人に対してはもっと厳しい重罰を課す必要があります。
未成年者が「懲役3年」になるところであれば、大人は「懲役5年」にするという風になりはしませんか?
交通違反反則金の例で考えるなら、大人のスピード違反は未成年者の場合の「五割増し」とか、そうしなければ「法の下の平等」を保てないのでは?(あるいは未成年者にも選挙権・結婚権・飲酒喫煙権を与えるか? つまり全ての人間は赤ん坊を含めて「成年者」ってことになります)

つまるところ「未成年犯罪者への厳罰」を主張する大人は同時に「自分をもっと厳罰に処してください」と主張しなければならないわけです。
そうでなければリクツに合わない。
そして、現代社会に生きる以上、いつ自分自身が「犯罪加害者」あるいは「犯罪容疑者」になるかも分からないという覚悟はしなければならないのです。

最後に。
いま日本で進められている「司法改革」とは、結局日本をアメリカ型の司法制度にしていく方向に向かっているように思います。
となると、日本も将来はアメリカ型の「訴訟頻発社会」に変貌していくのかもしれません。
何時だれに訴えられるかも分からない、常に「訴訟をおこされるリスク」を覚悟して生きていかなければならない社会。
大金を払って腕利きの弁護士を雇える者だけが「安心」できる社会。
さらにここに「共謀罪」が加えられたら?
「訴訟頻発」「厳罰化」「共謀罪」なんて組み合わせは最低最悪でしょう。
いやはやなんとも凄まじい世の中になりそうではありませんか・・・。


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投稿者 kihachin : 2008年03月20日 20:22

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