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2008年03月29日

鈴木邦男さんの「内ゲバ」論

(左から)保坂展人さん、雨宮処凛さん、鈴木(阿佐ケ谷ロフト。2008/2/10)


鈴木邦男さん(民族派団体「一水会」顧問・作家)が『突破者の本音』(鈴木邦男・宮崎学共著)で展開されている「内ゲバ」論を紹介します。『突破者の本音』は1999年05月に青谷舎から刊行され、2001年11月徳間文庫化されています。当エントリの記述は徳間文庫版を基にしています。

まずは同書97頁から。


★引用開始★

 右翼にしても左翼にしても、はっきりした闘争のテーマがある時は、比較的党派を越えて協力し合い、団結する。しかし、闘争のテーマ「がなくなったり、世の中が平和になってきたりすると、同系の党派同士でこぜり合いが始まる。左翼では中核・革マル戦争が有名だが、右派でもないことはない。

★引用終了★


中核派革マル派など新左翼セクト間の「内ゲバ」は並大抵のものではありません。聞くところによるとこれまでに100人以上の死者が発生しているそうです(そのほか数千人におよぶ負傷者)。平和なはずの日本で100名以上の死者とは、耳を疑いたくなるような話ですが、まぎれもない現実です。

1943年生まれの鈴木邦男さんが早稲田大学に入学したころ、学内の主導権は左翼学生に握られていました。左翼は圧倒的な「武力」を持っていたからです。「生長の家」寮生であった鈴木さんは左翼に対抗するため学内の右派学生による「早稲田大学学生連盟(早学連)」を結成し、議長に就任。さらには他大学にも呼びかけて全国組織「日本学生同盟(日学同)を結成しました。

その後、「日学同」とは別に全国規模の「全国学協」が組織され、鈴木邦男さんは初代委員長に推されます。ところが、「日学同」と「全国学協」の両者が熾烈な「内ゲバ」に突入していったのです。それぞれが発行していた機関紙では毎号のように相手への非難中傷が掲載され、顔を合わせたらすぐに殴り合いが始まるという一触即発の状況・・・。

以下、ちょっと長めですが『突破者の本音』98-101頁からの引用です。


★引用開始★

 志を同じくしながらも異なる党派間のぶつかり合いを、内ゲバという。中核派・革マル派や、全国学協・日学同なんかがそれである。他に、同じ党派内で起こるメンバー間のぶつかり合いもまた、内ゲバという。
 全国学協は日学同との内ゲバがもとで追いつめられていった。劣勢の原因はいろいろ考えられたが、つまるところ委員長の責任が追求された。僕は全国学協内部で厳しく追いつめられ、内ゲバに発展した。その結果、「組織が伸びない」「暴力的だ」という理由で全国学協を追放された。除名されたのだ。その後、全国学協は分裂を起こし、ついには消滅の憂き目にあう。
 同胞と殺し合いをするのは人間だけだというが、人間はもともと好戦的な動物なのだろう。左翼との戦いがなくなれば、平和が訪れたと喜べばいいのに、今度は喧嘩《けんか》相手を同系他派に転じて内ゲバをする。その相手と満足に戦いが展開できなくなると、ついには同じ組織の中で内ゲバを起こし、場合によっては組織自体が
消滅してしまう。抑えきれない暴力エネルギーが、喧嘩相手を見つけることに傾注された結果なのだろう。
 組織内での内ゲバは、自分のイラつきのストレス解消であることもある。全国学協で僕が追放されたのも、もとはといえば日学同に圧倒的なリードを許し、自分たちの運動が縮小していくことへのイラだちが、委員長に向けられたものだった。仮に全国学協が日学同より優位な立場にあり、日学同とは喧嘩相手にすらならないという力関係にあったとしても、左翼など外に戦う相手がいない場合には、やはり何か理由を見つけて内ゲバは起こる。理由たるや単純で、いけ好かない奴に難クセをつけるのだ。「こいつさえいなければ、この組織はいいんだけど」と思う者が、同じように思う者を募って、問題児をイジメる。「総括する」といっては、以前の行動について非難・中傷を浴びせ、反省が見られないようならぶん殴る。あるいは、いやな奴に「スパイ」の嫌疑をかけて締めあげる。ただいけ好かないだけでスパイ扱いするのもどうかと思うが、嫌疑をかけた側は、その時は本当にそういう気になっている。
 イジメにあった奴は、組織に残りたければその仕打ちにじっと耐える。耐えきれなくなると、脱退する。もし仕打ちに耐え抜いたとしても、組織の方が耐えられないと、その人物を除名するなどして追放する。この時、イジメに躊躇《ちゅうちょ》する者は、同じように「お前も仲間だ!」「スパイだ!」といわれ、同様に迫害されることになるから、やはり積極的にイジメに参加する。
 誰だって波長の合う奴とだけ付き合っていたい。そういう者だけで成り立つ組織であれば、イジメや内ゲバなど起こりようがないと思ったりする。しかしながら、現実はそういうわけにはいかない。一人を締め出したと思ったら、今度はなぜかまた一人、いやな奴が出てくる。それまではみんなと波長が合っていたはずなのに、一人が消えると、もう一人ちゃんといやな奴が待機しているのだ。これをまた締め出すとどうなるかといえば、不思議なことに、また別の人物がいやな奴となって、みんなの前に姿を現す。
 これを繰り返していると、人数はどんどん減り、最後には組織も集団もなくなって、自分一人になるのだろう。

★引用終了★


とても実感がこもった文章ですね。組織から「いやな奴」を追放すると、すぐまた別の「いやな奴」が現れ、その悪循環は終わることがないという段が真に迫っています。鈴木邦男さんが実際に「全国学協」から除名・追放されたときの実体験が重ね合わされているのでしょう。けれども、それだけではなさそうです。

1982年、鈴木邦男さんが代表を務めていた「一水会」の関係者が内ゲバ殺人事件を起こしているからです。公安警察のスパイではないかと疑われた男性メンバーが他の4人のメンバーにより拉致され殺害された事件です。その主犯格であったのが故・見沢知廉氏(作家)でした。

見沢知廉氏は殺人罪などにより12年の実刑判決を受けながらも、獄中で執筆活動を開始します。刑期を満期で終えた後は新進小説家として注目されるようになります。しかし、2005年09月07日自宅マンションから飛び降りて亡くなりました。この見沢知廉氏がまだ元気であったころに知り合い、見沢氏の「生きづらい奴は革命家になるしかない」という言葉により生き方を大きく変えられたのが雨宮処凛さんです。

小学校・中学校を通じて激しいイジメの対象とされた雨宮処凛さんはイジメや内ゲバに強い忌避感情を抱いているだろうと思われます。これは私(喜八)の勝手な想像ですが、「プレカリアート」運動の仲間に対する内ゲバと取られるような言動を雨宮処凛さんは絶対にとらないでしょう。その雨宮さんが見沢知廉氏と「師弟関係」にあるというのが興味深い。とはいえ、私には批判の気持ちはまったくありません。おおかたの人間は一筋縄ではいかない複雑な存在だと思います・・・。

雨宮処凛さんと鈴木邦男さんも古くからの知り合いのようです。雨宮処凛さんの自伝『生き地獄天国』によると、失意の日々を送っていた雨宮さんが「藁をも掴む気持ちで」参加した雑誌「ガロ」のイベントで、たまたま隣りに座っていた「ボーッとしたオジサン」が鈴木邦男さんだったそうです。鈴木邦男さんはちくま文庫版『生き地獄天国』の解説も書かれています。

「内ゲバ」に対して私(喜八)も強烈な嫌悪感を覚えます。それは私が中学1年生のとき「連合赤軍」による同志12名虐殺事件が発覚したことによる影響が一番大きいのだと自覚しています。また、私が20代のころ、新左翼セクト同士の内ゲバ殺人が多発していたことも原因となっているのでしょう。

さらに昭和55年(1980)10月30日午前10時55分東京大田区で5人の新左翼活動家が敵対するセクトの襲撃により惨殺されるという事件が発生しましたが、この日私はたまたま事件現場を午前10時過ぎに歩いて通過していました。当時のガールフレンドと一緒に近くの洗足池にボートを漕ぎに行ったのです。あと40分ほど遅く現場を通りかかったら巻き添えになったかもしれない? と思わざるをえない出来事でした。大学生時代の私は政治活動にはまったく係わりをもたないノンポリ学生でしたが、長髪・アーミージャケット・Gパンという服装でしたから「活動家」と誤認される可能性はゼロではなかったでしょう。

と、いろいろと原因はありますが、とにもかくにも私は「内ゲバ」なるものが大嫌いなのです。内ゲバに向かうような、内ゲバを肯定するような精神の在り方には心の底からの嫌悪を覚えます。そして「右翼」よりは「左翼」のほうが内ゲバを好む性質があるようですから、少なからぬ人たちが「左翼アレルギー」を起こすのも無理はないだろうなあとも思ってしまいます。

鈴木邦男さんも上の文章中で述べられているように「人間はもともと好戦的な動物なのだろう」。その点は「右」も「左」もおなじことなのだと思います。しかし、どちらかと言えば「左」のほうが凄惨な内ゲバに陥りやすいとは言えるのではないでしょうか。もちろん、ここで「左翼は駄目で、右翼はいい」なんて主張をするつもりはありません。右には右の良さ、左には左の良さがあり、両者の長所を活用していくべきです()。

※たとえば「国民皆健康保険制度」は本質的に社会主義的な制度でしょうけれど、これは死守されるべきだと考えます

「左翼的な知性」の持ち主であると自覚している人は、自分が内ゲバ的な状況に陥る可能性が他の人より高いかもしれない、と警戒しておいたほうがいいですね。これは私自身への自戒でもありますが、第三者から見れば「どうでもいいような違い」に基づく凄惨な内ゲバ、最悪の場合は「殺し合い」になるリスクが存在することは意識しておきたい。このように思うわけです。

さらに「議論の価値」をナイーブに信奉することの危険性も勘定に入れておいたほうがいいだろう、とも付け加えておきます。議論を重ねて「いいもの」が生まれる可能性はあるわけですが、逆に議論を行なったがゆえに人間関係が煮詰まり内ゲバに発展する可能性だって決して小さくはないのです。過去に内ゲバによる殺し合いをしてしまった人たちも、暴力が行使される前にそれこそたんまりと議論を行なっていたでしょうから。


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投稿者 kihachin : 2008年03月29日 20:32

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