【お勧めの本】深尾葉子『魂の脱植民地化とは何か』青灯社(2012) 更新!

« 片山さつき議員「おめかけさん」発言 | メイン | 伊勢崎賢治さん情報 »


2008年05月11日

「文豪」米原万里

『オリガ・モリソヴナの反語法』米原万里
オリガ・モリソヴナの反語法』米原万里


以下は故・米原万里さん(作家・同時通訳者)のエッセイ集『発明マニア』毎日新聞社(2007)からの一部引用です(同書98頁、「23 犬や猫と旅行するためのツール」)。

 貧相《コイズミ》の薄ら笑いに桜散り
 イラクへの自衛隊派兵について、まともに国民に説明しないまま強行し、靖国参拝について違憲判決が出ても、それをせせら笑うように無視していく意向を表明し、イラクで囚《とら》われた邦人の人質について、
「世界どこでもあり得ること」
 と冷ややかな薄ら笑いを浮かべながら責任を回避し、ブッシュのためなら地獄へもお伴する覚悟を新たにした様子。
 貧相とは、小泉のいかにも酷薄な表情乏しい人相をさしてもいるし、支離滅裂な政策で日本経済に壊滅的な打撃を与えた貧乏神の宰相という意味でもある。


ただもう肯《うなず》くしかない米原万里さんの卓見です。
「貧相」と書いて《コイズミ》と読む。
いや、まったくその通り!

一時《いっとき》のいわゆる「小泉人気」ってなんだったんでしょうね?
長いあいだ自民党内でも「鳴かず飛ばず」であった、たいした能力のありそうにもない、世襲三世議員が突如「大ブレイク」を果たしてしまった。
これはマトモな理屈ではなかなか説明できない、奇妙奇天烈なできごとであったと思います。
後世の日本人は「何故あんなことになってしまったのだろうか?」と頭を捻《ひね》るに違いありません。
そして「小泉純一郎」と聞けば反射的に「冷ややかな薄ら笑いを浮かべ」た「貧相」な「貧乏神の宰相」を思い浮かべることになるのでしょう。

さすがは「文豪」の米原万里さん(笑)。
悪口の言い方も、きわめて正確で容赦がありません。

ところで故・米原万里さんが「文豪」であったことは、つい先日知りました。
米原さんの長編小説『オリガ・モリソヴナの反語法』を読んだのです。
これは本当に本当に「凄い」小説でした。
こうして話題にしているだけでも、思わず胸が詰まり身体全体がワナワナと震えてくるような大傑作です。
この言葉はけっして大袈裟ではありません。

なんて私(喜八)が力みかえって言わなくとも、すでに多くの教養・学識深き方々が米原万里作『オリガ・モリソヴナの反語法』の素晴らしさを認めていらっしゃいますね。
『オリガ・モリソヴナの反語法』を読んでみようと思ったのも、亀山郁夫さん(ロシア文学研究者)と佐藤優さん(起訴休職外務事務官・作家)の共著『ロシア闇と魂の国家』文春新書(2008)の中で『オリガ・モリソヴナの反語法』が絶賛されていたためです。
「なにはともあれ、読まねばなるまい!」と思わせるような「何か」が亀山郁夫・佐藤優両氏にありました。

『オリガ・モリソヴナの反語法』は以下のような物語です(「Amazon.co.jp 商品の説明」より)。

 ロシア語通訳の第一人者としても、またエッセイストとしても活躍している米原万理がはじめて書いた長編小説である。第13回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞した。
 1960年代のチェコ、プラハ。主人公で日本人留学生の小学生・弘世志摩が通うソビエト学校の舞踊教師オリガ・モリソヴナは、その卓越した舞踊技術だけでなく、なによりも歯に衣着せない鋭い舌鋒で名物教師として知られていた。大袈裟に誉めるのは罵倒の裏返しであり、けなすのは誉め言葉の代わりだった。その「反語法」と呼ばれる独特の言葉遣いで彼女は学校内で人気者だった。そんなオリガを志摩はいつも慕っていたが、やがて彼女の過去には深い謎が秘められているらしいと気づく。そして彼女と親しいフランス語教師、彼女たちを「お母さん」と呼ぶ転校生ジーナの存在もいわくありげだった。
 物語では、大人になった志摩が1992年ソ連崩壊直後のモスクワで、少女時代からずっと抱いていたそれらの疑問を解くべく、かつての同級生や関係者に会いながら、ついに真相にたどり着くまでがミステリータッチで描かれている。話が進むにつれて明らかにされていくのは、ひとりの天才ダンサーの数奇な運命だけではない。ソ連という国家の為政者たちの奇妙で残酷な人間性、そして彼らによって形作られたこれまた奇妙で残酷なソ連現代史、そしてその歴史の影で犠牲となった民衆の悲劇などが次々に明らかにされていく。
 物語の内容や手法からすれば、この作品は大宅壮一ノンフィクション賞作品『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』の姉妹版であるといえる。しかし読み終わったあと、ときにフィクションのほうがノンフィクションよりも多くの真実を語ることができる、ということに気付くに違いない。(文月 達)


くどいようではありますが『オリガ・モリソヴナの反語法』は掛け値なしの大傑作です。
もし、まだ読んでいないという方がいらっしゃいましたら、「騙された」と思って、手にとってみてください。
絶対にソンはしませんよ!
不肖・喜八が保障いたします!
・・・なんて私のようなチンピラが言っても説得力がないですね(汗)。
なんといってもロシア文学研究の第一人者・亀山郁夫先生の保障付きです。
ぜひとも『オリガ・モリソヴナの反語法』を読んでみてください。

ところで、最初の「貧相《コイズミ》の薄ら笑いに桜散り」に話を戻しますと・・・。
米原万里さんはロシア語同時通訳者として日露の政治家・資本家・芸術家それも第一級の人たちと身近に接する機会が多かった人です。
故・ボリス・エリツィン元ロシア大統領が米原万里さんを大贔屓にしていたことは有名な話です。
元外交官である佐藤優さんによると、エリツィン政権の対日政策には米原万里さんの意見が反映されてもいたそうです。
国家元首から厚い信頼を受ける同時通訳者であり、掛け値なしの大傑作小説の著者でもあった米原万里さん。
彼女の「人物鑑定眼」はきわめて正確かつ冷徹なものであっただろう。
かのように私(喜八)は考えます。

そんな米原万里さんが小泉純一郎氏のことを「冷ややかな薄ら笑いを浮かべ」た「貧相」な「貧乏神の宰相」と評していたわけです。
「いや、まったくその通り!」と私が思うのも「無理のないこと」と納得していただけるのではないでしょうか。
おそらく、後世の日本人、いや近未来の日本人は小泉純一郎氏に対して「正しい」再評価を下すことになるはずです。
「超大国」アメリカの威信をガタガタにした「戦犯」ブッシュ氏と「地獄へもお伴する覚悟」を決められたのでしょうか?(笑)
今後の展開から目を離せませんね。


付記

オリガ・モリソヴナの反語法』の中で描かれている「寓話のおかげで生き延びた」という話(集英社文庫版259-262頁)は「真実」なのでしょうか? 状況証拠的には「真実」のように思えるのですが・・・、ひょっとしたら米原万里さんによる「創作」ではないか? フランソワ・トリュフォー監督の某SF映画と似ているエピソードなので「もしや?」と思ってしまいます。ご本人にお訊きすることができないのが残念です・・・。


関連ページ


投稿者 kihachin : 2008年05月11日 15:20

« 片山さつき議員「おめかけさん」発言 | メイン | 伊勢崎賢治さん情報 »



トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://kihachin.net/klog/mt-tb.cgi/2360

このリストは、次のエントリーを参照しています: 「文豪」米原万里:

» 民主党に望む事 from 無党派日本人の本音
[日本が抱える問題点] 文藝春秋の4月号の「日本の実力」を読んでいたら気になる数字を見つけた。 07年度のIMDランキングでは日本はODAの援助先の、中国にも抜... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2008年05月11日 17:22

» 多極派VS一極派のせめぎ合い① from 日本を守るのに右も左もない
昨年末から、「日経をはじめとする日本のマスコミがドル暴落→ドル基軸通貨体制の崩... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2008年05月11日 19:21

» ドルを暴落させようとする多極派VSそれを阻止しようとする一極派のせめぎ合い② from 日本を守るのに右も左もない
『田中宇の国際ニュース解説』の5月10日の記事「アメリカの覇権は延命する?」から... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2008年05月11日 19:33

» やる気もないのに・・二つの三味線! from kimera25
口先だけで 生活しているのは芸人ではなく 無責任が仕事の 政治家! その政治家の話! ? あり得ない話! ******************htt... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2008年05月11日 23:01

» 真の保守政治家にエールを!! from 新三ログ
平沼先生が、フジテレビの報道2001に出演していた。発言を引用させて頂く。  平沼赳夫元経済産業相(無所属)は11日のフジテレビ番組で、... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2008年05月12日 00:01