【お勧めの本】深尾葉子『魂の脱植民地化とは何か』青灯社(2012) 更新!

« 「前原さんは勇気がある」 | メイン | 鈴木宗男さんの正論 »


2008年06月19日

『Divided We Fall』

Divided We Fall - Opening sequence


Divided We Fall: Americans in the Aftermath』はインド系米国人女性ヴァレリー・カウア(Valarie Kaur)さんが製作したドキュメンタリー映画です。米国で2006年に、英国では2007年に公開されましたが、日本での上映予定は立っていないようです。当エントリ冒頭「YouTube」動画は、『Divided We Fall』の冒頭部分です。

『Divided We Fall』公式サイト」(英語)

The Internet Movie Database のページ」(英語)

『Divided We Fall (分断されてしまえば、我々は敗れ去る)』とは、どのような映画なのか? 私(喜八)が、ヴァレリー・カウアさんと『Divided We Fall』のことを知った『愛国心を考えるテッサ・モーリス-スズキ、岩波ブックレット(2007)の記述を基にして以下に解説します。


★『Divided We Fall』解説開始★

2001年09月11日に米国で発生した「9・11テロ」の後、アメリカ全土で愛国心を示す動きが広がった。熱狂的な「愛国心」の波は、言論や信教の自由を脅かすナショナリズムをも促すこととなった。

これら「自分の国を心から愛する」と主張するアメリカ人の中に、フランク・ロークという男も含まれていた。「9・11」の数日後、ロークは「テロリスト」に報復するため、弾丸の装てんされたライフルを持ち、自分の住む町(アリゾナ州フェニックス)を車で走り回った。そして彼は「敵」を発見した。あごひげを生やし頭にターバンを巻いた男性、バルビール・シン・ソディ。フランク・ロークはライフルを取り上げ、バルビール・シンを射殺した。

しかし、バルビール・シンはテロリストなどではなかった。シンはれっきとしたアメリカ合州国市民だった。インド系シーク教徒であり、家族経営の小さなガソリンスタンドの外で大切に育てていた花に水やりをしていたシンは、無意味に殺されてしまったのだ。殺人犯フランク・ロークは逮捕されたとき警察官に向かって「自分は愛国者だ!」と叫んだと伝えられている。

バルビール・シン・ソディがフランク・ロークに射殺されたとき、ヴァレリー・カウアはスタンフォード大学の1年生で20歳だった。彼女もシンと同じインド系シーク教徒であり、1世紀前に祖父がアメリカに移民した「アメリカ人」だ。ヴァレリー・カウアはシン射殺事件や同時期に多発した「外国人風の」アメリカ人を標的にした同種の攻撃に大きなショックを受けた。本人によると、自室のドアを堅く閉じ、『ハリー・ポッター』シリーズの(当時出版されていた)3冊を読みふけり、その「ハッピーエンド」を楽しんだという。

しかし、ヴァレリー・カウアは「いま自分は行動しなければならない」と決意し、彼女自身の「旅(journey)」に出る。被害者バルビール・シン・ソディが住んでいたフェニックスの町を訪ね、殺人事件の原因や影響の調査を開始したのだ。カウアと従兄弟(当時18歳)の2人はビデオカメラで、シーク教徒だけでなく、アジア太平洋戦争中に抑留された日系アメリカ人を含む、民族的な憎悪の対象となった人々の経験も記録し始めた。ときには、人々から「お前たちの国(インド)に帰れ!」「ここ(アメリカ)はお前たちの国ではない!」といった罵声を浴びながら・・・。

その後5年をかけて、ドキュメンタリー映画『Divided We Fall』はつくり上げられていった。2006年09月、アリゾナ州フェニックスで『Divided We Fall』は公開された。そして翌年(2007)には英国で公開され、同年の米国「オマハ・フィルム・フェスティバル」でも上映されている。

『Divided We Fall』は「《われわれ》と《かれら》に分断された世界では、いったい誰がわれわれを規定するのか?」という問いを投げかける。ヴァレリー・カウアは、9・11の後に成人の仲間入りをした自分の経験について「この時代に成人を迎えるのは非常に大変な経験でした……。そうであるはずだと教えられていた自分の国にするために闘わなければならないのです」と言う(「BBC interview with Valarie Kaur」)。

So it's been a very profound experience to come of age in this time, and you realize you really have to fight for what you know your country to be.

また、ヴァレリー・カウアは「2つのアメリカン・ドリーム」につ
いて、次のように語っている(同「BBC」ページ)。

アメリカには常に二つの物語の筋書きがありました。先住民の大量殺戮、奴隷制、人々を締め出した法律、権力の濫用といった抑圧の歴史もあれば、自由、平等、多元主義への取り組みというアメリカン・ドリームもあります。だから、その夢のために闘い、それを広め続けるようとすることこそ、私たちの役目だということに、私たちの世代は気づいていると思います。
But I think the thing that people have real faith in, or at least my generation has faith in, is that there have always been two storylines for America. You know, there's the history of repression -- the genocide of Native Americans, slavery, laws that have kept people out, abuses of power -- but there's also the American dream -- you know, the commitment to freedom, equality, pluralism. So I think my generation is realizing that it's really up to us to fight for that dream and make sure that it continues to prevail.

★『Divided We Fall』解説終了★


最後にちょっぴりだけ「喜八の感想」を・・・。

『Divided We Fall』という映画のタイトルは「divided and rule (分割統治《する》)」という英語の成句にかけているのでしょうね。植民地や属国を「統治」するには、非征服民の各グループを反目させ分断することが、もっとも効率的な手段となる。「征服者」たちはその原理の有用性を知り抜いています。

かつて大英帝国の植民地として長きにわたって苦しみ抜いたインド。そのインドを祖先の地とする移民三世ヴァレリー・カウア。彼女からの「Divided We Fall (分断されてしまえば、我々は敗れ去る)」というメッセージを、私(喜八)は確かに受け止めたと思っています。今まさに、我々自身が「分断されてしまえば、敗れ去る」状況にあるのだと。些細な「違い」を理由に「同士討ち」をしている場合ではないのだと・・・。


『Divided We Fall』予告編

An introduction to "Divided We Fall"


郵政民営化凍結

郵政民営化凍結」TBキャンペーンを行なっています。
お気楽にご参加ください。


関連ページ


投稿者 kihachin : 2008年06月19日 12:18

« 「前原さんは勇気がある」 | メイン | 鈴木宗男さんの正論 »



トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://kihachin.net/klog/mt-tb.cgi/2441

このリストは、次のエントリーを参照しています: 『Divided We Fall』:

» 政界再編と解散総選挙 from 新三ログ
題名の通り、自民党が行ってきた政治を考えてみたい。様々なご意見があるだろうが、少なくとも日本がこれだけ発展したのも、自民党のお陰で... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2008年06月19日 23:42