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2008年06月08日

華氏925

華氏925」。

というのは単なる「語呂合わせ」の思いつきなのですけれど、私(喜八)の(一応)「創作」でありまして、日本国憲法第9条(戦争放棄)と第25条(生存権保障)の連携を謳《うた》うキーワードです。

9条と25条を「セットで考える」ことは、近年、主に30代の若き論客たちから提言されてきました。たとえば湯浅誠さん(生活困窮者をサポートするNPO「もやい」事務局長)は近著『反貧困』の中で次のように書かれています(213頁)。

日本も遅ればせながら、憲法九条(戦争放棄)と二五条(生存権保障)をセットで考えるべき時期に来ている。

湯浅さんのほかにも、堤未果雨宮処凛赤木智弘さんたちにより「9条と25条の連携」は主張されています。

赤木智弘さん(フリーライター)が月刊誌「論座」2007年01月号で発表した論文『「丸山眞男」をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争。』は、「希望は、戦争。」という文言と丸山眞男批判を含んでいたためか、リベラル派・左派からの激烈ともいえる反発を引き起こしました。

しかし、冷静に赤木智弘さんの主張を、その後にでた彼の著書『若者を見殺しにする国』双風舎(2007)も合わせて検討するなら、そこに「9条と25条の連携」という提言が含まれていることは明らかです。

たしかに赤木智弘さんはリベラル派・左派の「痛いところ」をつきましたが、と同時に「希望は、戦争。」には「助けてくれ」という悲鳴にも似たメッセージが含まれていたことを、多くのリベラル派・左派は見逃してしまったのではないでしょうか(私も最初はそうでした)。

赤木さんの場合は性格的に素直ではないので、ちょっとひねって言っているのかなと思う」という雨宮処凛さんの意見(『貧困と愛国』雨宮処凛・佐高信、毎日新聞社、2008。30頁)も参考になります。

なお、「戦争と貧困」の関係については、堤未果さんの『ルポ貧困大国アメリカ』岩波新書(2008)に分かりやすく描かれています。

一部の者たちが巨利を得るため、意図的に、格差を拡大する経済政策を実施する。その結果生み出された膨大な数の貧困者は、働いても働いても、まともに「喰えない」ような状況に放置される。

貧困家庭の子女は将来に望みをまったく持てない。彼ら彼女らにとっては「軍隊にいくこと」がほぼ唯一の脱出口に見える。こうして米国の軍隊は新兵を補充していく(経済的な徴兵制)。

しかし、軍隊では非常な低賃金で命がけの任務(イラクでの実戦など)を課される。命を落とす者、甚大な肉体的・精神的障害を負う者も少なくない。除隊後に大学に進学しようとしても(最初の約束とは異なり)困難であり、大学に入っても卒業までたどり着ける者はけっして多くはない。さらには大学をでても、まともな職に就けるかどうかは分からない・・・。

結局、戦争とは国家レベルでの「貧困ビジネス」なのだ。これが堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』の最も重要なメッセージであると私(喜八)は読みました。

堤未果さんが繰り返し主張されているように、戦争と貧困はきわめて密接な関係があります。あえて貧困層を形成して、侵略戦争を推進し、一部の者たちが「大儲け」をする。そして、アメリカ式のこのやり口を猿真似したくてしょうがないのが、現在の日本支配層の姿ではないでしょうか?

だとしたら、なんとしてでも「彼ら」を阻止しなければなりません。そのためには「9条派」と「25条派」は連携しなければならない。きわめて現実的で明快な主張だと思います。私(喜八)も諸手を挙げて賛成します。

そこで「華氏925」というヘボいキャッチフレーズをひねり出したわけですが・・・(汗)。

もちろん、これはマイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画『華氏911』からの「パクリ」です。この映画が日本で公開された際「それは自由が燃える温度」というキャッチフレーズがつけられたそうですね。

Fahrenheit 9/11 Trailer

そしてムーア監督の『華氏911』は、米国のSF作家レイ・ブラッドベリの長編小説『華氏451度』を原作とする、フランソワ・トリュフォー監督の映画『華氏451』へのオマージュでもあります。

「華氏451」とは紙が燃える温度(華氏451度≒摂氏233度)。未来社会において、人々は権力側が妥当であると判断した情報(主にテレビからの情報)に浸って生きている。権力にとって都合が悪い情報・思想・言葉は徹底的に排除されるという「愚民政策」が行なわれている。人々に知恵をつけるような「本」は焼き払われる。しかし、一部の人々は抵抗を続け、1人1人が1冊の本を暗記して伝えていこうとする、という物語です。

その昔の中国で秦の始皇帝が行なった「焚書坑儒」。権力にとって都合の悪い書物を焼き払い(焚書)、権力を批判する儒者を生き埋めにして殺す(坑儒)。洋の東西と時代は異なれども、「華氏451」では「焚書坑儒」が描かれているといってよいでしょう。

こういった強権政治・情報統制ファシズムへの欲望は、あらゆる地域のあらゆる権力が持ち合わせていると言っても過言ではないと思います。もちろん、我らが祖国日本も例外ではありません。共謀罪人権擁護法案・インターネット規正法などは、あからさまな情報統制ファシズムへの渇仰とみなしておいたほうがよいでしょうね。こんなものを推進しようという者たちの中には、少なからぬ「亡国奴」が存在するのではないか。強く私は疑っています。

華氏925度とは全ての「良きもの」を燃やし尽くす温度。
日本社会を破滅へと導く「焚書坑儒」への道。
しかし、我々は圧政者たちに対して、あくまで「ノー」を言う。
そのキーワードが「華氏925」なのだ。
と、最後はちょっと格好よく(?)キメておこう(笑)。


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投稿者 kihachin : 2008年06月08日 10:43

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