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2008年08月12日

『「生きづらさ」について』

『「生きづらさ」について』雨宮処凛・萱野稔人
「生きづらさ」について』雨宮処凛・萱野稔人


雨宮処凛さん(作家)と萱野稔人さん(哲学者)の対談本『「生きづらさ」について』光文社新書(2008)を「ふんふん、なるほど」と興味深く読んでいたところ・・・。
とある部分で「アッ」と驚きました。

今年(2008)05月03日、東京新宿で行なわれた「自由と生存のメーデー2008」で私(喜八)の近くを歩いていた方たちが「どこ」から来た「誰」であったのか、雨宮処凛さんの証言で判明したからです。
彼(女)たちがどういう人たちかは、あえてここでは書きません(プライバシーにかかわることですからね)。
あいまいな書き方で「喜八ログ」読者の皆様には申し訳ありませんが、雨宮処凛さんの言葉に非常に心を打たれたことは強調しておきます。
そして「彼(女)たち」の健闘を今後は陰ながら応援させていただくこととしましょう。

また、雨宮処凛さんが「自由と生存のメーデー2008」に関して次のように述べられているのにも注意を惹かれました(『「生きづらさ」について』210頁)。

先日のプレカリアートのメーデーには、若者に混じって高齢者の人もすごくたくさんきてくれたんですよ。高齢者の問題も、国や社会から見捨てられているという意味では、フリーターの問題とまったく同じです。

メディアでは「若者の反乱」として伝えられることも多い「自由と生存のメーデー」ですが、実際には中高年の参加者も決して少なくなかったのです。
実際、デモ参加中には多くの中高年の姿を見かけました。
そもそも私(喜八)自身も堂々たる(?)中年男ですから。
若い雨宮処凛さんが中高年者への目配りをしっかりされているのが嬉しいですね。

と、以上は私(喜八)の「超」個人的感懐でした。
それ以外にも『「生きづらさ」について』は読み応えのある部分、考えさせれる部分がたっぷり詰まっていて、なんともお買い得な本でありました。
たとえば、雨宮処凛さんによって提出される次の問い(「生きづらさ」について97頁)。

自己責任にいくのと、ナショナリズムにいくのと、どっちがマシですかね(笑)。

(笑)が付けられてはいるものの、大変に重い問いかけです。

「『自己責任』という万能呪文(※1※)」の重圧を個人で全て引き受けさせられ、過労死・自殺・餓死に追い込まれるか。
あるいは「ネットウヨク」といわれるような過激なナショナリストになるか。
どちらがいいのか?
極端にいえば、こういうことだと思います。

※1山崎元『新しい株式投資論』PHP新書、23頁

これに対して「左翼」を自認する萱野稔人さん(津田塾大学准教授)は明確に答えます(同書98頁)。

僕はナショナリズムにいくほうが断然いいと思います。

経済的・精神的に追い込まれ「死」に向かわせるような「自己責任」よりは、生存の可能性が高いであろう「ナショナリズム」のほうがずっとマシ。
こういった答えをきっぱりとだす萱野稔人さんに信頼感を抱きました。
「イデオロギー」やら「思想」やらに従って、若者の「ネットウヨク」的な生き方を頭から否定し、彼(女)らの生存への渇望を「見て見ぬ振り」するような年長左翼には強烈な不信感を覚える(※2)。
しかし、萱野稔人さんの「左翼」としての在り方はいい、と思いました。

※2「アメリカ様」の発信する市場万能主義にひたすら追従し、激増する貧困者の存在を「見て見ぬ振り」するような自称保守にも強烈な不信感を覚えます

雨宮処凛さんは「思想」について次のように発言しています(同書107-108頁)。

生き延びるためだったら思想でも何でも使いまくればいい
だって、人が生きていくために役に立たなきゃ、思想なんて何の意味もないじゃないですか。

含蓄のある言葉です。
まったく、その通りだと思います。
イデオロギーや思想は、本来はひとりひとりの人間を幸せにし、社会を豊かにするためにあるはずです。
けれども現実にはイデオロギーや思想の違いから人間同士がいがみ合いをし、排除し合い、最悪の場合は殺し合いまでしている。
まったくもって本末転倒と言わざるを得ません。

雨宮処凛さんは「私は頭は悪いけど、カンはいいと思っていて」と発言されていますが・・・(同書113頁)。
どこから見ても立派な思想家ではないでしょうか。
生き延びるための思想。
人を幸せにする思想。
社会を豊かにする思想。
雨宮処凛さんと萱野稔人さんは、こういった思想に真摯に取り組む思想家なのだと思います。

「生きづらさ」について』は大変な良書でありました。
「生きづらさ」を抱えた全ての方(※3)に、一読をお勧めしたい一冊です。

※3私自身を含む


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投稿者 kihachin : 2008年08月12日 08:00

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