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2009年01月15日

三島由紀夫『文章読本』

決定版 三島由紀夫全集 31巻
『決定版 三島由紀夫全集 31巻』

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最近、読み直した三島由紀夫の「文章読本」から、特に注意を引き付けられた箇所を以下に抜書きします。
引用文冒頭カッコ内の数字は、「文章読本」が収録されている『決定版 三島由紀夫全集 31巻』新潮社(2003)のページ数です。


(034)日本人の改革といふことに対する感覚が安易なのは、私には建物の構造と、歴史的事物の耐久性のなさと大いに関係があると思はれます。石や鉄による歴史的事物は耐久性がほとんど無限であつて壊すに壊されず、そこに居坐つてゐるのでありますが、戦災によつて灰燼《くわいじん》に帰した東京から、また新しく木造建築がドシドシと建てられるやうに、われわれの言葉に対する考へでも安易な、すぐ建て直せるやうなものがどこかにひそんでゐます。戦後行はれた言語の改革と称するもの、制限漢字や新かな遣ひも、一片の法令で行はれるやうなさういふ改革は、日本人の革新といふことに対する安易さをよくあらはしてゐます。


(043)結局、文章を味はふといふことは、長い言葉の伝統を味はふといふことになるのであります。さうして文章のあらゆる現代的な未来的な相貌のなかにも、言葉の深い由緒を探すことになるのであります。それによつて文章を味はふことは、われわれの歴史を認識することになるのであります。


(146)具体的に言へば、文章の格調と気品とは、あくまで古典的教養から生まれるものであります。さうして古典時代の美の単純と簡素は、いつの時代にも心をうつもので、現代の複雑さを表現した複雑無頼の文章ですら、粗雑な現代現象に曲げられてゐないかぎり、どこかでこの古典的特質によつて現代の現象を克服してゐるのであります。文体による現象の克服といふことが文章の最後の理想であるかぎり、気品と格調はやはり文章の最後の理想となるでありませう。


当然のことながら、「文豪」三島由紀夫の文章を、私(喜八)などが解説することはできません。
上の引用文に触れ「もっと知りたい」と思われた方は、ぜひとも三島由紀夫の「文章読本」を直に手にとってください。
ブログで文章を公開されているような方なら、必ずや得るところ大だと思います。
手ごろな中公文庫版もあります。

というわけで、以下は「蛇足」です・・・。

中学生のころ、背伸びして三島由紀夫の『花ざかりの森・憂国』(新潮文庫版)を手に取り、「よくわからないけど凄い!」と感銘を受けました。
その後読んだ『仮面の告白』に完全に痺《しび》れ、中学高校を通して「三島」の熱烈な愛読者でありました。

ただ、以前「喜八ログ」でも書いたことがあるのですが(「三島由紀夫」2008-04-11)、昭和45年(1970)11月25日、東京市ヶ谷《いちがや》の陸上自衛隊駐屯地で発生した、三島由紀夫と「楯の会」メンバー4人による「クーデター未遂事件」には昔も今も感銘を受けません。というより興味がありません。
中学生のときなどは、学校の先生を始めとする周囲の大人たちに「三島由紀夫が好きだ」というと、大概のオトナは苦笑を浮かべます。
たぶん「『事件』の影響で三島にかぶれた子供がここにもいる」とでも考えていたのでしょうね。
しかし、ぜんぜん違うのです。
私は三島由紀夫の文学作品、特に長編小説に惹かれていた。
ただそれだけであって、「クーデター未遂事件」はまったく関係ないことのように感じていました(いまも感じています)。

なんてことを、もし三島由紀夫先生の霊が聞いたら「こらっ! 私《三島》の文学と政治行動は完全に一致している。あの決起は私の芸術と思想の当然の帰結だ! そんなことも分からないのか、馬鹿者!」と怒られてしまうかもしれませんね。
ぜひ、怒っていただきたかった。
大正14年(1925)生まれの三島由紀夫が存命であったら、今年(2009)84歳です。
気難しいガミガミ親父、ただしとことん筋を通す、日本社会にとってのカミナリ親父のような存在であって欲しかった。
と、これは無いものねだりですが・・・。

ところで、このごろの私(喜八)は実生活においてもブログ活動においても「おのれの非力さ」をひしひしと感じることが多く、「このままでは手詰まりだ」との予感が高まりつつあります。
じゃあ、どうしたらいいのか?
といっても、安直な対策があるはずはなくて、畢竟《ひっきょう》自分の「力」を養っていくしかないわけです。
結論からいえば「勉強」「鍛錬」「トレーニング」を通じて、「戦闘力」を高めていくしかない。
とはいえ、私は希代《きだい》のナマケモノであり、ヘタレであります。
今年(2009)最初のブログでも「今年はより一層『テキパキとせず』『シャキッとせず』『向上も進歩もせず』『善人になろうとせず』、いたって威勢悪く行こうと決意(?)しております」なんて開き直っている。
これは別に煙幕を張っているわけでも何でもなくて、物凄く正直なホンネの吐露です。
付け加えるなら「強くなろうと思わず、弱いままで、どうにかこうにかやっていこう」とも決意(?)しています。

それでともかくも、昔読んだ三島由紀夫先生の『文章読本』(中公文庫)を本棚より取り出し、読み直してみたという次第です。
文章力をアップさせて、「喜八ログ」をグレードアップしようという戦略ですね。
私が持っている中公文庫版『文章読本』は、中学2年生もしくは3年生のときに購入した1冊です。
奥附《おくづけ》を見ると「昭和四十八年 八月十日発行 ©1973」とあります。
ここで思い出しましたが、中学3年次の担任であったN先生(女性)と三島由紀夫『文章読本』について熱く語りあったこともありました。
N先生は国語教師でした。
小・中・高校で教わった先生方のうちでも、私が特に強く「恩師」だと感じる方でもあります。
先生は「三島由紀夫が好きだ」という中学生の私をアタマから馬鹿にしなかった数少ない大人の1人だったのです。
ちなみにN先生は、その30年ほど後に、某公立小学校の校長に就任しました。
その知らせを聞いたときは本当に嬉しかったですね。
・・・というのは脱線だと思いますが、このエントリそのものが最初から脱線でしかないですから、反省も何もなしで続けます。

三島由紀夫に話を戻しますと、私は「三島こそ日本における最後の文豪だ」と思っています。
なんていうと、「文豪とは、ただ鴎外・漱石あるのみ!」とか「ノーベル文学賞受賞者の大江健三郎先生を無視するのか?!」なんて怒られてしまうかもしれませんね(汗)。
もちろん、他の偉大な文学者を無視するつもりは毛頭ありません。
ただ、あくまで私個人の見解では「三島由紀夫=最後の文豪」なのです。
これは「思い入れ」と形容したほうがいい感情なのでしょう。
また「最後の文豪」といっても、それは現時点での話ということであって、未来の日本に「文豪」が現れないと考えているわけではありません。
必ず「文豪」はまた出現するだろう、とこれは確信しています。

三島由紀夫は、生涯を通して全身全霊で、他の誰にも真似できないような真摯な姿勢で、日本語と格闘し続けた人です。
そして数多くの傑作・名作を紡《つむ》ぎだした。
だからこそ「文豪」だと思うのです。
ちなみに私の考える「パトリオティズム」は日本語への愛(と日本女性への敬意)を中核としていますから、三島由紀夫こそはとびきりのパトリオットだとも映ります。

おそらく、天才にはありがちのエキセントリックで気難しい人ではあったのでしょう。
しかし、『決定版 三島由紀夫全集』(新潮社)を読み進めているうちに、「優しい人でもあったのだ」ということが良く分かってきました。
父親として2人の幼い子供とともに漫画「もーれつア太郎」(赤塚不二夫)を愛読する。
「文壇」の付き合いを避け、ゴルフはやらず、市井《しせい》の若者たちに混じってボディビルや剣道で汗を流す。
『決定版 三島由紀夫全集』で、そういった三島の姿に触れるにつれ、「優しい人だったのだ」という思いが深まってきました。
東大全共闘学生との対話集会にたった1人で乗り込み、「君らが一言『天皇陛下万歳』と叫んでくれれば俺は喜んで君らと手をつなぐ」と発言した。
「盾の会」の若者たちと共に自衛隊への体験入隊をした後に、急速に思想を先鋭化させていき、最後はクーデター未遂事件により自決。
そんな三島由紀夫の行動の根底にあったものは実は「優しさ」だったのではないか?
という気がしてならないのです・・・。

「文豪」三島由紀夫先生に鎮魂の祈りを捧げます。


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投稿者 kihachin : 2009年01月15日 12:00

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