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2009年03月18日

『雨宮処凛氏と「人倫」の思想』佐藤優

新党大地 大地塾7月例会


佐藤優さん(作家・起訴休職外務事務官)の『テロリズムの罠 右巻 忍び寄るファシズムの魅力』角川oneテーマ21(2009)から。
雨宮処凛さん(作家・思想家)に関する記述を紹介します。


引用文冒頭カッコ内の数字はページ数です。


(179) 新自由主義に対する異議申し立てで、現在、最も顕著な活動をしている思想家は雨宮処凛《あまみやかりん》氏だと思う。


(181) 社会的に弱い状況に置かれた同胞を自分のできる範囲の力で助けるというのは、人間として当然のことだ。そこに理屈はいらない。ヘーゲルは、このような人間としての当然の行為を人倫(Sittlichkeit)といった。雨宮氏は、人倫に従って行動している。そこには特定のイデオロギーは存在しない。しかし、ほんものの言葉がある。これが雨宮処凛氏の限りなき魅力だ。
 雨宮氏は、『週刊金曜日』『世界』などの左翼、市民派陣営の論壇では市民権を得ている。社会的な弱者を支援するということに右も左もない。右翼、保守陣営では、非正規雇用労働者の問題に積極的に取り組むことに対して、「左翼の活動ではないか」という偏見がある。しかし、それは右翼思想史に対する無知、もしくは無理解から生じたものだ。例えば、五・一五事件(一九三二年)の思想的指導者だった大川周明《しゅうめい》は、日本は君民共治の国家であるにもかかわらず、明治期以降擡頭《たいとう》した「黄金大名」が君と民を引き裂いていると厳しく批判した。井上日召《にっしょう》、権藤成卿《ごんどうせいきょう》、北一輝《きたいっき》などの右翼思想家にしても、大川周明と同様の認識をもっている。社会的格差を是正し、貧困問題を解決することは、戦前の右翼にとっての共通了解だった。この右翼的伝統を二一世紀の日本に回復することがきわめて重要と思う。
 左右双方のマスメディアに寄稿する機会がある筆者としては、真ん中よりも右の雑誌に雨宮氏が登場し、右翼、保守陣営に対して、「一味同心」「君民共治」などの右翼の伝統的価値観を刺激してほしいと考えている。


(203) 雨宮処凛氏たちの運動は、「正当な賃金を支払い、労働条件を守れ」ということに尽きる。労働運動を通じて社会主義革命を追求しているわけではない。むしろ日本資本主義をシステムとして保全するために必要な発言をしているのだ。
 経団連(日本経済団体連合会)、経済同友会の幹部が雨宮氏を招いて、非正規雇用の若年労働者が置かれた状況について一度じっくりと聴取することを提言する。そうすれば、問題の本質がわかるはずだ。
 経営者(資本家)の良識を示し、経団連や経済同友会が貧困問題の解決に動き出すことが、いま、何よりも求められている。


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雨宮処凛さんが面白い位置にいます。

雨宮処凛さんは、佐藤優さんと湯浅誠さん(NPO法人自立生活サポートセンターもやい事務局長)の両方から学べる位置にいるのです。
佐藤優氏と湯浅誠氏は共に現時点の日本における最大の思想家です。
それも象牙の塔に篭《こも》る学者さんではありません。
現実と格闘しドロに塗《まみ》れることを恐れず、社会に大きな影響を与え、「国」の形を変えるだけの力をもった思想家です。
その佐藤優・湯浅誠の両氏が、雨宮処凛さんに対して強い敬意を抱かれている。
これは誰の目にも明らかですね。
そして「弟子」の雨宮処凛さんは「地アタマ」がとてもいい。
強靭な意志と非常な勇気を持っている。
多くの人たちの心を強く打つ「何か」をもっている。
さらには雨宮処凛さんはまだまだ若い。

これは面白いことになってきましたよ(笑)。
佐藤優・湯浅誠両氏の薫陶《くんとう》を受けて、10年後・20年後、雨宮処凛さんはものすごく大きな存在に成長しているのではないでしょうか。
国内だけでなくて、国際的にも「日本人女性といえば、雨宮処凛さん」といったイメージが形成されていくかもしれません。
雨宮処凛さんの存在は現時点でも、若者・不正規雇用労働者・「生きづらさ」を抱えた人・プレカリアート・野宿者・生活窮乏者など多くの人たちの「希望」となっています。
そして雨宮さんは近い将来「日本の希望」に成長する可能性が高い。
このように私(喜八)は思っています。


先に「喜八ログ」で、湯浅誠さんが東京大学大学院で研究していたのは、江戸前期の儒学者・伊藤仁斎だということをチラッと書きました(「自己コメント採集」2009-03-15)。

また、以下のウェブページでは、湯浅さんの論文の書誌情報を見ることができます(論文そのものは読めません)。

仁斎と東涯--「祖述」と「紹述」 湯浅 誠

結論からいえば、湯浅誠氏は「正真正銘の保守思想家」である可能性が高いでしょうね。
儒学者を研究していたから保守思想家というのは、甚だ疑問」という意見もありましたが・・・。
はたして湯浅誠氏はそんなに「器用」な人なのか?
どうしたって、そうは見えません。
むしろ不器用すぎるくらい不器用。
だからこそ、報われることの少ない、苦労ばかりは山積みの「生活困窮者支援」に長年取り組まれてきたのではないでしょうか。
ちょっとだけ想像してみれば分かりますが、「もやい」の活動は巨大なストレスの塊のようなものでしょう。
あれだけの高い能力を持っている湯浅誠さんですから、要領よく器用に立ち回れば、経済的には今より遥かに「報われる」道もあったはずです。
しかし、彼はそういう生き方を選ばなかった。
伊藤仁斎学の要諦《ようてい》である「人間関係を大切にいとなむ」ことを徹底的に実践してきた類《たぐい》まれな思想家。
それが湯浅誠さんだと私は思うのです。


閑話休題。
かの柳生昴《やぎゅうすばる》さんが、湯浅誠さんに関してオモシロイ(荒唐無稽な)記事を書かれていますね。

売名屋:湯浅誠はヒトラーとなるのか?
(「EmpireoftheSun太陽の帝国」2008-12-18)

やれやれ。
柳生すばるさんの言い分は(いつもながら)完全に無理筋であります。
どこからどう見たって、柳生すばるさんは「ニセ保守」であり「ニセ右翼」。
逆に湯浅誠さんは「本物の保守」であり「本物の右翼」なのです。
「貧困問題」に取り組んでいるから「サヨク」なんていう決め付けは、佐藤優さんが指摘されているように「右翼思想史に対する無知、もしくは無理解から生じたもの」でしかありません。
いま世間に流布《るふ》している「右翼・左翼」言説の多くが、いかに「いい加減」で根拠を欠いた、単なる「イメージ」だけでなされたものであるか。
あまりに下らない、誠意を決定的に欠いたものであるか。
日々、私(喜八)は痛感しています。
とはいえ、柳生すばるさんのような「特に悪い例」を挙げて議論を進めるのはフェアではないかもしれませんが。


そういえば、湯浅誠さんと佐藤優さんの対談って見たことがないですね。
「佐藤・湯浅対談なら読んでみたい!」という人はけっして少なくないだろうと思いますが・・・。
湯浅・佐藤両氏ともに「殺人的に多忙」な日々を送っているようですから、なかなかスケジュールが合わないのかもしれません。
湯浅・佐藤両巨頭と親しい雨宮処凛さんに「ぜひ、湯浅誠さんと佐藤優さんのあいだを取り持ってください」とお願いしたいと思います。
雨宮処凛さん! よろしくお願いします!


湯浅誠さんと佐藤優さん。この2人に共通する思想を端的に言うなら、

強い社会をつくる

です。

これは、ハッキリと明示されている思想なのです。
佐藤優さんと湯浅誠さんの本を読めば、誰だって気がつくはずですが・・・。
案外、気づいていない人が多いようでもあります。
それで、無知無学ボンクラ者の私(喜八)が言わでもながの「解説」をしているわけです。

佐藤優さんと湯浅誠さんは「強い社会をつくる」という、思想と実践の根底の部分が一致しているんですね。
佐藤さんは「社会を強化することで、国家を強化する」ことを繰り返し主張されています。
湯浅誠さんも、儒学者・伊藤仁斎の研究者であったことを考慮すると「社会を強化することで、国家を強化する」実践活動をされている可能性が高いのです。

そんな佐藤・湯浅両氏のあいだに知的交流が生じること。
そこに一種の化学反応(ケミストリー)がおこること。
このケミストリーが、社会・国家を強化する方向に働くこと。
これはもう「火を見るより明らか」ではないでしょうか。
ましてや、佐藤・湯浅両氏には共通の「同志」雨宮処凛さんがいるのです。
そういえば、かの「kojitaken」さんが『ご存知「右も左もない」ブロガーが入れ込んでいて、佐藤と湯浅誠のコラボを夢想していた』なんてことを書かれていましたね。
まあ、「夢想」でもかまいません(笑)。
お好きなように形容してください。
皮肉でも何でもなしに「kojitaken」さんのご批判には感謝しております(結局、私にとってトクですからね)。


ついでというわけではありませんが、以下に私(喜八)の「夢想」をまとめてみます。

  • いま自分が所属している社会・国家をより良いものにするため、現実的な働きかけをする。
  • 戦争や貧困の存在しない「強い社会」をつくる。
  • 平和と豊饒」「万民幸福」の理想を追求する。
  • 身の回りの人たち、親しい人たちの幸福を実現する。
  • で、ちゃっかりと要領よく私自身も幸せになる(笑)。

であります。
どうでしょうか?
それほど悪くはない「夢想」だと、自分では思っています。
そして私(喜八)には、この「夢想」を共有してくれる「同志」がいます。
それだけでも「とびきりの幸運」「望外の幸せ」と言うしかないですね。


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投稿者 kihachin : 2009年03月18日 12:00

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