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2009年04月25日

「排外主義」と「差別主義」

経済猫
(猫画像は「EyesPic」さんよりお借りしました)


「愛国主義」が「排外主義」や「差別主義」に行ってしまうのは、やはりスジが悪いと思います。
しかし、何故かそっちの方向に逸《そ》れやすいのですね。


ふだんからよく言っているのですが、「誇りなき者たちだけが、むやみに他者を見下したり侮辱したりする」。
これが世界中の「マトモな人たち」の常識ではないでしょうか。

「自分は『誇り高き日本人(韓国人・中国人・米国人・ロシア人・ブラジル人・ナイジェリア人・・・)』である」というセルフイメージをもつのは大いに結構。
けれども。
「誇り高き者」であるからこそ、むやみに他の人を見下したりはしないし、人の誇りには敬意を払う。
「愛国者」は「他国の愛国者」をリスペクトする。
かくありたいものだと「ヘタレ憂国者」たる私(喜八=中村順)はつねづね思っています。


どうやら「国家・国境・国籍」というフレームワークには「排外主義」や「差別主義」に行きやすい性質があるようです。
それは人類の宿阿《しゅくあ》と言えるものかもしれません。

リベラル・左派の人の中には「国家・国境・国籍など無くなってしまえ!」と主張する方が結構います。
その人たちの心情は分かるつもりです。

しかし、地球上から国家・国境・国籍を全てなくすというのは、100年や200年ではできないことだと思います。
もし、急激にそれらを廃絶しようと試みたら、最悪の結果を招くのではないでしょうか。

これまたいつも言っていることですが、私は「国家はなにものにも優先される(国家は神聖なり)」と主張する「超国家主義者」なんかではありません。
国家は暴力(警察・軍隊)により権威を裏打ちされた、「悪」を内包した存在です。
けれども、国家が「退場」することになったら、その後には、国家よりもっと悪《あ》しきものが来るだろう。
だから国家は「必要悪」であると考えます。
その「必要悪」を、どうにかこうにかして、より弊害の少ない形で運用していくべき。
このようなリアリズム(現実主義)に立脚しています。


急激に国家(国境・国籍)をなくしてしまったら、世界は今よりもっと酷いものになるでしょう。

たとえば、国家が消滅し、「企業連合体」が社会を支配するようになったら?
総理大臣職が廃止され「CEO(最高経営責任者)」が取って代わる。
国家元首は「筆頭株主」に代わる。
これで果たして我々は幸せになれるでしょうか?
「絶対になれないだろうなあ」と思うのです。

「企業連合体」が社会を支配するようになったら、貧困問題の解決は絶望的になるでしょう。
利潤の追求こそが至上(市場)の目的の世界。
「民営化こそが絶対善!」のドグマ(教義)にしたがって年金や健康保険は完全民営化される。
企業の利益に貢献できない高齢者・障害者などは、冷酷に見捨てられる。
「大規模貧困ビジネス」としての戦争が堂々と行なわれるようになる。
そうして「自己責任」の掛け声の下、ほとんど全ての人は不安定で劣悪な生存(あるいは消滅)を強いられるようになるでしょう。
こうなるのが目に見えています。


「排外主義」と「差別主義」に話を戻しますと、これらは「病気」なのだと思います。
おそらくは人類が滅亡する日まで付き合っていかなければいけない「病気」なのだと。
だからと言って、現にある「排除」や「差別」を放置していいとは、まったく思いませんが・・・。
病気の人に「あなたは病気だから、治りなさい」といっても、おそらく治癒はしないでしょうね。
だったら、どうするべきか?

「世界の人から『排外主義者』『差別主義者』と見做されたら、決定的にソンをしますよ! 相手にされなくなりますよ! モテませんよ!」

こういった言説は、やりようによっては有効かもしれない、と考えています。

特に国会議員には効くかもしれません。

「先生は『日本の国境の内側だけで通用する超ドメ(※)議員』でいたいのでしょうか?」

(※超ドメ=超ドメスティック)

「もし外国メディアから『排外主義』や『差別主義』の手法を濫用する『扇動政治家』なんてレッテルを貼られたら致命的ですよ!」

「外国の有力政治家と丁々発止とやり合って『日本にはスゴイ奴がいる』と感嘆され尊敬されるような存在になりたくはありませんか?」

このようなアプローチは有効かもしれません(対象が知的で高潔な人物であるほど効果がありそうです)。

あるいは有権者の方々に呼びかける。

「『排外主義者』や『差別主義者』を国会に送り込むことになったら、この選挙区全体の恥になりますよ!」

「世界中の人たちから侮蔑されることになりますよ! 日本の恥になってしまいますよ!」

こんな方法も(ひょっとしたら)有効かもしれません。
(実際にはなかなか難しいとは思いますが・・・)


最後に。
私は自分のことを「排外主義」や「差別主義」とは無縁の聖人君子!などと思っているわけではありません。
虚心坦懐に我が身を振り返れば、自分の中に「排外主義」や「差別主義」の要素があるのは認めるしかないでしょう。
けれども、同時にその「排外主義」や「差別主義」を抑えていこう、無害化していこうという決意もあるわけです。
自らの中にある「悪」を直視し、その「悪」と戦っていく。
な~んて格好いい者では私はありませんが・・・。

ちなみに・・・。
「善人」になろうとは思わない。
自分は「偽善者」のままで、小さな善を実行していこう。
これが私の基本戦略(のひとつ)です。

偽善者
(「喜八ログ」2008-06-28)

なので、仮に「おまえは偽善者だ!」と罵られたとしても、「その通りであります。それのドコがいけないんですか?」と平常心をもって答えられるわけです。


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投稿者 kihachin : 2009年04月25日 08:00

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