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2009年07月14日

『どんとこい、貧困!』湯浅誠

『どんとこい、貧困!』湯浅誠
どんとこい、貧困!』湯浅誠、理論社(2009)

(『どんとこい、貧困!』を「Amazon」「楽天」「bk1」で購入する)


「労働/生存運動」の理論的・精神的支柱、湯浅誠さん(「NPO法人自立生活サポートセンターもやい」事務局長)の新著『どんとこい、貧困!』理論社(2009)に関するエントリです。


読書感想文。
「とても勉強になりました」
「皆様もぜひ『どんとこい、貧困!』を読んでください。絶的にお勧めです!」
と、これがいたって正直なところです。
でも、それだけでは、いくらなんでも愛想がなさ過ぎますね(笑)。
あまりにボンクラで恐縮ではありますが、読書感想をボチボチと綴《つづ》っていきたいと思います。


湯浅誠『どんとこい、貧困!』理論社(2009)全編の白眉!
と私が感じたのは『自己責任論は「上から目線」』という章でした。
その一部を引用させていただきます(153-154頁)。

「上から目線」という言葉がある。人を見下したような、自分が相手より上に立っていることを前提にしたような考え方・発言という意味だが、自己責任論をふりかざす人たちに共通しているのが、その「上から目線」だ。というか、自己責任論はかならず「上から目線」になる。「上から目線」のないところに、自己責任論は生じない。
 なぜなら、自己責任論とは、そもそも仕事がうまくいかなかったり、生活が立ちゆかなくなったりした人たちに対して、うまくいっている人たちが投げつけるものだから。

う~む、なるほど。
私(喜八)もできるだけ「人を見下す」のは避けるようにしています。
なぜなら、無闇に他者を見下せば見下すほど、自分自身がバカになり、品性が下劣になるだろうと判断するからです。
現時点でも、かなりのバカモノであり、下劣者である自分(喜八)が今以上バカで下劣になったらどうする?!
と思うがゆえに「人を見下す」のは、できるだけ避けるようにしています。
しかし、なにせバカで下劣だから、完全には克服できていないでしょうね・・・。

湯浅誠さんは続けます(156頁)。

 自己責任論の一番の目的、最大の効果は、相手を黙らせることだ。
 弱っている相手を黙らせること。これは弱い者イジメだ。
 弱い者イジメをする人間は、いつの世も、強い者には絶対に歯向かわない。強い者に対しては「自分も仲間に入れてください」と媚びる。自分が強い側にいなければ、弱い者イジメができなくなるから、弱い者イジメをしている自分はいつか仕返しされるんじゃないかと怯えているからだ。だからかっこ悪い。

そして湯浅さんは「自己責任論」は「弱い者イジメが横行し」「生きづらい」「誰も幸せでない」「満ち足りない社会」をつくると結論を出します。


思えば、日本で「自己責任論」がもっとも蔓延《はびこ》ったのは小泉純一郎政権のときでした。
失業するのも「自己責任」、ホームレス状態になるのも「自己責任」、餓死するのも「自己責任」、貧困は全て「自己責任」、病気が治っていないのに病院を追い出されても「自己責任」、イラクで武装勢力に拘束され命が危うくなっても「自己責任」、虐殺されても「自己責任」。
あの勢いでいけば、北朝鮮によって拉致されたのも「自己責任」などと言われかねない勢いでした。

それなのに、小泉純一郎氏とその最大の「ブレーン」であった竹中平蔵氏は、いっこうに「自己責任」をとろうとしないのです。
竹中平蔵氏は国会での証言を要請されても「三日後の昼何時に来いといわれて行けるわけないじゃないですか。普通のビジネスマンは予定が入っていますよ」と仰って拒否されました(「週刊ダイヤモンド」2009年05月23日号54頁)。
平たく言えば、ヘリクツをこねて逃げ回っている。
反面、新聞・テレビ・雑誌・インターネット・講演などではペラペラペラペラ持論をぶちまくる。
「なぜ、同じことを国会の場で言えないのか?」という、至極当然な質問を完全に無視する。

他人には命がけの「自己責任」を押し付けておいて、自分たちの「自己責任」は履行しようとしない小泉・竹中。
こういった方たちのことは何と呼べばいいでしょうか?
究極の卑劣漢」。
私(喜八)はこう断定するしかないわけです。

竹中平蔵氏を国会で証人喚問すべきか?アンケート

ふたたび、湯浅誠さんの『どんとこい、貧困!』から引用させていただきましょう(153頁)。

 その姿は、ひとことで言うと、醜悪だ。醜く、かっこ悪い。なぜなら、その人たちは自己責任論的な考え方を他人にだけ向けているから。

なお、湯浅さんのいう「その人たち」は小泉・竹中のことを直接指しているわけではありません。


どんとこい、貧困!』の後半は「活動家論」のおもむきがあります。
自ら「活動家(activist)」を名乗る(185頁)湯浅誠さんが、経験に基づいた「活動家論」を展開します。
失敗だらけだった」「ほとんど負けっぱなしだった」と活動歴を振り返る(196頁)。
「あの湯浅さんでも、失敗続きだったのか?!」と驚くとともに、「だったら、自分(喜八)も失敗を恐れずに、『何か』をやっていい」と強く思いました。
おそらく、同じように感ずる読者は多いでしょう。
そして、それが老獪《ろうかい》なリアリスト・湯浅誠の「狙い」なのかな?
なんて疑ったりもします(笑)。

湯浅誠さんは「活動家」を「自分たちの“溜め”を社会のために使っている人たち」(240頁)、「防波堤のような、社会の底支えのような人たち」(241頁)と規定します。
と、同時に「煙たがられている人たち」「厄介者たち」(248頁)とも言い表します。
この辺が湯浅さん独特のユーモア感覚ですね。
いずれにせよ、「防波堤のような、社会の底支えのような人たち」に、この頃の私はよく出会います。
反貧困・独立系労組・平和活動・環境保護活動・愛国運動の「現場」で。
防波堤のような、社会の底支えのような人たち」は、比率は少ないかもしれなけれど、社会全体で見れば、相当の実数がいるというのが本当に強い実感です。
そして私(喜八)自身も「そういう人」の1人になってしまおうと目論んでいます。


それでは最後に『どんとこい、貧困!』湯浅誠、理論社(2009)から。
「何がいちばんいやですか?」と編集者からの質問に対する湯浅誠さんの回答です(294頁)。

 ごうまんな考え方。ごうまんな生き方をする人。他人を批判していい気になっている人。他の連中はバカで、自分は頭がいいと勘違いしている人。徹底的にやりこめてやりたくなる。

ごうまんな生き方をする人」に私(喜八)はなりたくないと思います。
でも、気づかないうちに、なっているかもしれませんね(なにしろバカで下劣ですから・・・汗)。
これからも、よくよく、気をつけたいと思います・・・。


「オマケ」の写真です。2009年06月20日に「NPO法人自立生活サポートセンターもやい」の「こもれび荘」(東京・飯田橋)で行なわれた「こもれび5周年・もやい8周年記念パーティー」で撮影させていただきました。
ウェブへの掲載は湯浅誠さん本人の了承を得ています。

湯浅誠
湯浅誠「もやい」「反貧困ネットワーク」事務局長


付記:「もやい」カンパのお願い

特定非営利活動法人 自立生活サポートセンター・もやい

生活困窮者を支援するNPO「自立生活サポートセンター・もやい」が、支援企業が米国金融危機の影響で倒産したため、深刻な資金難に陥っています。
そのため「もやい」は緊急カンパを募っています。
心ある方にぜひお願いします。
もやいのページを覗いてみてください。
そして、できる範囲でのカンパをお願いします(1円以上いくらでも受け付けているそうです)。

緊急カンパキャンペーンご協力のお願い
(2009-10-01)

あらためて緊急カンパキャンペーンに関するお礼とお知らせ
(2009-11-07)


『反貧困』湯浅誠

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投稿者 kihachin : 2009年07月14日 12:00

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