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2009年09月08日

『差別と日本人』辛淑玉・野中広務

『差別と日本人』
差別と日本人』辛淑玉・野中広務

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差別と日本人辛淑玉野中広務、角川oneテーマ21(2009)の読書感想文エントリです。


差別と日本人』は最強の「怖《こわ》やさしい系」の人・辛淑玉《しん・すご》さん(人材育成コンサルタント・作家)と野中広務さん(元衆議院議員、内閣官房長官・自民党幹事長などを歴任)の対談本です。

なお「怖《こわ》やさしい系」とは「手強くて決然としていて、おそらくワルの部分もあり、でも本質的な部分で優しい(優しすぎる)人」を意味する喜八の造語です。
たとえば、雨宮処凛さん(作家)・佐藤優さん(神学者)・稲葉剛さん(「自立生活サポートセンター・もやい」理事長)たちが典型的な「怖《こわ》やさしい系」です。
中でも辛淑玉さんは「むちゃくちゃ怖くて」「むちゃくちゃ優しい」という「『超』怖《こわ》やさしい系」であろう。
と、かのように感じます(すみません、勝手に決めつけて)。
おそらく野中広務さんも「怖《こわ》やさしい系」の人なのでしょう。
そして、野中さんの政治上の弟子(?)であり、佐藤優さんとは「生死をともにする同志」である鈴木宗男さんも「怖《こわ》やさしい系」の系譜に連なる人なのだと思います。


差別と日本人』の中で、私(喜八)がもっとも心を動かされたのは辛淑玉さんの次の言葉でした(同書187頁、引用文中《 》ではさまれた部分は喜八による補足)。

「野中広務」という政治家は、談合で平和をつくりだそうとする政治家だった。
 オバマは、演説で平和をつくるのかもしれないけれど、野中氏は、そんなものは信じない。人間の欲望や利権への執着といった行動様式を知り抜いているからこそ、それらをテコに、談合と裏取り引きで、平和も、人権も、守ろうとしたのではないだろうか。それも生涯をかけて必死で。
 私《辛淑玉》は、その姿に、胸の痛みを覚えるが、同時に、これはこれであっぱれな生き方だと思えてならない。

談合で平和をつくりだそうとする政治家」の部分になぜか強く心を打たれます。
そして、私(喜八)も野中氏のそんな生き方に「胸の痛みを覚え」「あっぱれ」と感嘆するところが少なからずあるのです。
これまで特に野中広務さんのファンであったことはないのですが・・・。
辛淑玉さんというフィルターを通して見た「野中広務像」は妙に魅力的です。
それは辛さんと野中さんがともに「手強くて決然としていて、おそらくワルの部分もあり、でも本質的な部分で優しい(優しすぎる)人」たちであり、その2人が対談することにより、強い共鳴を発生させているためかもしれません(ただし、意見が異なり激しく対立する場面も多々あります)。

野中広務さんの「談合で平和をつくりだそうとする政治家」としての一面は、たとえば石原慎太郎氏との交友に顕著に現れています。
差別と日本人』対談の中で、野中さんが「昨夜石原《慎太郎》と飯を食ったんですよ」と発言する(161頁)。
すると辛さんは即座に『え? なんで石原さんと御飯食べられるんですか。なんで!? だって石原さんってハンディのある子どもたちを見て、「ああいう人ってのは人格あるのかね」といいはなった。私、そういう言い方をする人は、自分の人生の中でも想像がつかないんですよ』と猛反論します。
しかし、野中氏は「そうかね。あんなのボンボンですよ」「いやあ、あれ《石原》はまたいい男だからだ」といなし、「彼にも、僕《野中》のように忠告をできる人間がおらないといかんでしょ」と結論づける。
この言葉「忠告をできる人間がおらないといかんでしょ」が「談合で平和をつくりだそうとする政治家」野中広務の真骨頂ではないか。
そんなふうに感じるのは、たぶん私(喜八)も「談合タイプ」だからなのでしょうね・・・。


「野中広務」という政治家は、談合で平和をつくりだそうとする政治家だった』(187頁)以降の辛淑玉・野中広務の「家族への思い」を語った部分、そしてそれぞれの「あとがき」は『差別と日本人』の白眉です。
ぜひ読んでみてください、としか言いようがありません。
ちなみに、この部分は文章で読むと、サラリと対話が交わされているようですが、野中広務さんの「あとがき」によれば「辛さんはこの部分を話すとき、時に嗚咽《おえつ》を堪《こら》えながら、また言葉も切れ切れに本心を語ってくださった」そうです(199頁)。


差別と日本人』を読んで感じたことは他にも多々あり、とてもブログで語りつくすことはできません。
が、もうひとつだけ感想を書いておきます。
野中広務という人は、やはり物凄くタフだな」と。
野中さん自身が「あとがき」で語っているように『辛さんという方はズバズバと核心をついてくる「キツイ方だなあ」という印象がある』(196頁)。
「『超』怖《こわ》やさしい系」の辛淑玉さんが「ズバズバと核心をついてくる」!
それに対して野中広務さんはあくまで沈着冷静に誠実に対応していく。
「さすがは百戦錬磨の野中氏だ!」
と感銘を受けるしかないのです。
もし、私(喜八)が野中さんの立場になったら、熱を出して寝込んでしまうのではないかと思うわけです。
辛さんに対して土下座して泣きながら謝るなんてことも(思わず)してしまいそうな自分が怖い・・・。
これはけっして大袈裟でも冗談でもなく(笑)、きわめて率直なことを書いています。


以下は「オマケ」的に。
野中広務さんのインタビュー記事です。

戦後60年と人権 野中広務さん
(「ふらっと」2005-08-24)

野中さんという人は「煮ても焼いても食えない、バリバリの叩き上げオヤジ」で「権謀術数・談合を駆使することも厭《いと》わない、清濁併せ呑む政治家」であると同時に「徹底的な平和主義者」なのですね・・・。


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投稿者 kihachin : 2009年09月08日 12:00

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