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2011年11月08日

『チェルノブイリは女たちを変えた』社会思想社(1989)

flowers
花も動物もヒトもみな被爆している…


ヴェールホーフ、ガムバロフ、ミース他『チェルノブイリは女たちを変えた』社会思想社(1989)。
西ドイツのフェミニスト女性たちによる原発論です。
1986年04月26日、旧ソビエト連邦でチェルノブイリ原子力発電所事故が発生し、ヨーロッパ(および全世界)の広大な地域が放射能性物質によって汚染されました。
そのため子どもをもつ母親たちは(父親も)待ったなしの深刻な選択を突きつけられました。
子どもたちに何を食べさせればよいのか?
外で遊ばせてもいいのか?(もう遊ばせることはできないのか?)
子どもが親よりも早く死ぬかもしれない、という覚悟を持たないといけないのか?
このような過酷な状況の中で、女性たちによって書かれた脱原発・文明批判の書が『チェルノブイリは女たちを変えた』です。


チェルノブイリは女たちを変えた』を通読すると、現在の日本の状況と共通する点があまりにも多いのに驚かされます。
この本では《チェルノブイリ》を《東京電力原発事故》に入れ替えても、まったく違和感無く読めてしまう箇所が少なくないのです。
たとえば以下はクラウディア・フォン・ヴェールホーフさん(政治学博士/ラテンアメリカの農民と女性に関する調査研究)の「こどもを進歩のいけにはにはさせない」からの引用です(『チェルノブイリは女たちを変えた』22頁)。

彼らはためらいもせずに第二第三のチェルノブイリもやむをえないと考えているが、それは彼らが最大想定事故に対し本当に驚きもせず、また人間らしい恐怖も覚えなかったことを物語っている。そして以前はたしかに最大想定事故のことを考慮に入れていなかったが、これからはそうする、というのだ。そんな重大な問題にさえ、彼らは今でもまだ犯罪的なまでに愚かしくも、「責任をとる」といっているのである。これまではそんな責任など負うことができなかったし、そのつもりもなかったくせに──。

これを「彼ら(官僚・政治家・財界人たち)はためらいもせずに第二第三の『東電原発事故』もやむをえないと考えている」と読み替えれば、いまの日本にそのまま当てはまります。
「東電原発事故」のため、日本列島に暮らす人々の健康が損なわれ、自然環境が決定的に汚染され、国土が荒廃しつつあるのに、彼ら(日本の官僚・政治家・財界人たち)は《犯罪的なまでに愚かしくも、「責任をとる」といって》ベトナムへの原子炉輸出や玄海原発4号機再稼動のような大愚行を強行しようとしているのですから。

次はマリア・ミースさん(社会学博士/インドの女性と家父長制に関する実証研究)の「自然を女たちの敵にしたのはだれか」からの引用です(同書133頁)。

私たちはもはや、生けるものとしての自然とコミュニケートすることはできない。私たちの中でもっともだめになった存在、つまり機械人間、機械のような男性なら、かくべつ気にならないかもしれない。どのみち、彼らの官能は後退して、機械的に反応するだけになってしまっているのだから。だが、もっとも生き生きしている存在、つまりこどもと多くの女性たちは、大きな悲しみ、強奪として、つまり植物、雨、大地、大気、動物など、私たちをとりまく他の生ける存在から物理的に引き離されてしまったと、受けとめている。

私たちの中でもっともだめになった存在、つまり機械人間、機械のような男性》は日本にも大勢いる。
大勢どころではない、むしろ彼らは多数派なのだろう。
そう思わざるをえない状況です。
別にわたし(喜八=中村順)は自分が他の男性にくらべて「優れている」とか「マシ」などと主張するつもりはありません(笑)。
でも、目の前にある危機「放射性物質による広域汚染」を「あたかも存在しないもののように」無視し続ける男性たちを目の当たりにしていれば《私たちの中でもっともだめになった存在、つまり機械人間、機械のような男性》が世に溢れていることは嫌でも分かる…。

アネグレート・シュトプチェクさん(哲学者)は『チェルノブイリは女たちを変えた』でのさまざまな女性の主張をまとめるように「男文明から降りる」ことを提案します(同書178頁・179頁)。

ただの一撃で、チェルノブイリの原発事故は世界を変えてしまったのだ。数週間、激しい怒りが続いたあと、世の中には鬱状態が広がった。しかし、これは生産的な意味をもっている。ショックで身がすくんでしまった状態からたち直り、「新しい世界」を打ちたてるための手だてを考えるには、まだ遅くはないようだ。
この「新しい」時代は、私たちが地上の生命を一元的な男性的知性から奪回するための、おそらく最後のチャンスなのである。

わたしはれっきとした男性ですが、「男文明から降りる」ことに諸手を挙げて賛成します。
このまま《犯罪的なまでに愚かし》い《機械人間、機械のような男性》たちに社会の舵取りをまかせていたら、わたしたちは全て「殺される」だろうと危惧するからです。
正直にいえば「心底、怖い」のです。
今年03月13日、東電原発事故発生を知った翌日、わたしはTwitterで次のように「つぶやき」ました。

こんなことを思う。過去数十年、ニッポンで原発を推進してきた者たちの中に「女性」はどれくらいいたのだろうか?と。原発を、無思慮に、無責任に推進してきた者たちの多くは「中高年男性」だったのではないか?と。

その後、《機械人間、機械のような男性》たちの無為・無策・無責任・無想像力・無共感力を見せ続けられたことにより、上の思いはいや増すばかりです。
そういうわけですので、わたしも「男文明から降りる」ことにします(粛々と)。


最後になりましたが…。
チェルノブイリは女たちを変えた』をわたしは渋谷望さん(しぶや のぞむ/日本女子大学大学院教授)の書評によって知りました。

ヴェールホーフ、ガムバロフ、ミース他『チェルノブイリは女たちを変えた』社会思想社(1989) via 「怒り・愛・パワー ヴェルホーフ「子どもを進歩のいけにえにさせない」によせて/渋谷望」『現代思想2011年7月臨時増刊号』青土社

今こそ読まれるべき本『チェルノブイリは女たちを変えた』を紹介してくれた渋谷教授にお礼を申し上げます。
なお、『チェルノブイリは女たちを変えた』は現在版元品切れなのですが、渋谷望教授によると、他社から再刊の話があるそうです。


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投稿者 kihachin : 2011年11月08日 12:00

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