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2014年03月19日

スティーブン・キング「ドランのキャデラック」

ドランのキャデラック
スティーブン・キング『ドランのキャデラック』文春文庫

(※『ドランのキャデラック』を「Amazon」「楽天」で購入する)


スティーブン・キングの短編小説「ドランのキャデラック」(原題: Dolan's Cadillac)について。
エントリ後半では、エドガー・アラン・ポーの「跳び蛙」(Hop-Frog)、宮部みゆきさんの「燔祭(はんさい)」についても触れます。
この3作品に共通するのは「凄まじい復讐譚(ふくしゅうたん)」であることです。


スティーブン・キング「ドランのキャデラック」のストーリーをざっと紹介します。

物語の語り手「ロビンソン」は小学校で3年生を担当する教師。
妻の「エリザベス」はおなじ学校で1年生の受け持ちだった。
あるとき、エリザベスは犯罪組織の顔役「ドラン」の「へま」を目撃し、裁判で証言することになる。
FBIの保護下に入ったエリザベスだったが、自動車に仕掛けられた爆弾により殺害される。
犯罪証人がいなくなり、ドランは自由の身になった。
ロビンソンは10年近いあいだ、ドランを用心深く気長に観察し、身体を鍛え、食事の節制を続け、学校の夏休み期間に或る仕事に就き、復讐の機会を伺い続ける。
ドランは何処に行くときも重武装したガードマン2人──殺しの専門家たち──に守られている。
移動は装甲車のようなキャデラック──政情不穏の小国の独裁者が愛用するタイプだ。
ドラン自身も犯罪組織の大物らしく、危険を察知する能力にはきわめて長けている。
そういった「人」というよりは「狼」のような奴らを、ラス・ヴェガス近郊の砂漠に追い込み、皆殺しにする。
一介の小学校教師が、ただ一人で《わたしにとってたったひとりの女だった》エリザベスのために復讐を実行する。
銃器であっさり射殺するのではない。
射殺が「慈悲に満ちた」殺し方のようにさえ思える無残な方法で、殺し屋たちを地獄に叩き込む。

そういう凄まじい復讐の物語です。

スティーブン・キング作品が好きで、「ドランのキャデラック」をまだ読んでいない。
という方がいらっしゃいましたら、ぜひお勧めしたいと思います。
以下ご参考までに。
わたしはキング作品(リチャード・バックマン名義を含む)では以下の長編小説を好みます。

短編では「ドランのキャデラック」に最もこころ惹かれます。
この下でも述べますが、長編小説の中で1作を選ぶなら『ファイアスターター』。
この選択は、キングファンとしては少数派かもしれません。


スティーブン・キング本人の解説によると「ドランのキャデラック」は《ポオ作品の人物を思わせるエリザベスの夫にまつわる話》だそうです。
これをウェブで調べると…。
エドガー・アラン・ポー「アモンティリャードの酒樽」(The Cask of Amontillado)が該当するようです。
たしかに間違いないでしょう。
が、わたしは最初に「跳び蛙」(Hop-Frog)かな? と思いました。
これもまた凄まじい復讐譚です。
「跳び蛙」と呼ばれる宮廷の道化師が、愛する女性のため、愚鈍で残酷な王様とその臣下たちを皆殺しにする。
わたしはポー作品の中では「跳び蛙」を最も愛します。
そういう贔屓目(ひいきめ)による勘違いでした。

復讐の物語といえば宮部みゆきさんの「燔祭(はんさい)」も忘れがたい。
「燔祭」は『鳩笛草―燔祭・朽ちてゆくまで』に収録された中篇小説です。
超能力によりモノ(人も含む)を発火させる能力をもつ異形のヒロイン「青木淳子(あおき じゅんこ)」の物語は長編小説『クロスファイア』へと続きます。
この宮部みゆき「燔祭」と『クロスファイア』はスティーブン・キング『ファイアスターター』のオマージュ作品です。

スティーブン・キングの短編では「ドランのキャデラック」がベストだと思う。
エドガー・アラン・ポー作品のうち「跳び蛙」に痺れるような読後感を覚える。
宮部みゆきさんの全小説のうち「燔祭」を最も好みます。
なぜわたし(中村順)はかのように「復讐譚」に強く惹かれるのか?
その辺も自分としてはとても興味深いところですが、こちら方面のお話はまた別の機会に。
という辺りで、わたしの話はひとまず終わります。


ドランのキャデラック』文春文庫(2006)「序」から「物語」についてのスティーブン・キングの言葉を引用します(同書16頁)。

 いささか気恥ずかしいし、偉そうに聞こえてもいけないから、このことについては多くを語らないが、わたしはいまだに物語をすばらしいもの、人生を豊かにするだけでなく実際に救いもするものと考えている。これは比喩的にいっているのではない。すぐれた著作──すぐれた物語──は想像力の引金であり、想像力の目的は、われわれに慰めと、それがなければとうてい耐えられない状況や生活からの避難所を提供することである、とわたしは信じている。

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投稿者 kihachin : 2014年03月19日 12:00

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