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2014年06月25日

ワシーリー・グロスマン『人生と運命』と猫の運命

人生と運命』(全3巻)は、旧ソヴィエト連邦の作家ワシーリー・グロスマン(1905-1964)が第二次世界大戦時の「独ソ戦(スターリングラード攻防戦が中心)」と「ユダヤ人虐殺」を描いた長編小説です。
ここに登場する「」についての覚え書きです。

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ワシーリー・グロスマン人生と運命』は、先に弊ブログで簡単に紹介しました。

ワシーリー・グロスマン『人生と運命』
(「喜八ログ」)

ワシーリー・グロスマン『人生と運命』
ワシーリー・グロスマン『人生と運命』みすず書房

この大長編小説を読んでいるうちに気づきました。
作者(グロスマン)は猫が好きなんだ!」と。
みすず書房の日本語翻訳版・全3巻合計でおよそ1400ページ(解説・訳者あとがきなどを含む)。
その小説中に「猫」に関する記述が多々散見されるのです。
悲惨な戦争の時代を背景としているので、猫さんたちの「運命」もまた悲しいものである場合が少なくないのですが…。
「やはり、ヒトにとっても、猫にとっても、あらゆる『いのちあるもの』にとって、戦争は悪しきものだ」という思いを新たにしました。
ともあれ、『人生と運命』から、「猫」要素を抽出して、自分のための覚え書きとしておきます。

膨大な人数が登場する物語の中で、中心的な役割を果たすソ連人「シャーポシニコフ一家」のヴィクトル(作者グロスマンが投影されている)とその妻リュドミーラは猫を飼っていたことがあった。猫は最初のお産のとき、仔猫を産み落とすできず、ヴィクトルのほうに這いよってきて、大きく見開いた明るい色の目で鳴き声を上げながら彼を見ていた(『人生と運命』第1巻130頁)。

「シャーポシニコフ一家」にかつて養育係として住み込んでいたドイツ人女性《ヘンリクソンおばあさん》が飼っている年老いた三毛猫。飼い主がドイツに強制送還された後、猫の運命は悲しいものになる(第1巻159-163頁)。

幼いユダヤ人少年ダヴィドは母親と2人で暮らしている。朝、お母さんが仕事に出かけた後、ダヴィドは《細くて長い尻尾の白っぽい涙目をしたやせた乞食猫》に、空き缶にコップ一杯分のミルクをあげるようにしていた(第1巻301頁)。ダヴィド(7歳)はその後、ドイツ軍に捕らわれ、絶滅収容所行きのユダヤ人移送列車に乗せられる。

ドイツ軍とソ連軍が猛烈な市街戦を展開したスターリングラード市(現在はヴォルゴグラード)。半地下小屋で戦火を避けていた老婆・孫・ヤギの一家は、ソヴィエト軍の夜間爆撃機による大型爆弾により、影も形も見えなくなる。破壊の跡地で、ソ連軍斥候兵士クリーモフは《汚い子猫》を発見する。クリーモフは自分でも理由が分からないうちに、子猫をポケットに入れて、自分の持ち場である《第六号棟第一号フラット》に連れ帰る。そこではスターリングラード市街でも最も激しい戦闘が続けられていた(第1巻369頁)。
この子猫は第2巻145頁で再登場。すでに後ろの両脚が動かず、前脚だけで女性兵士カーチャのもとに急いで這っていこうとする…。

侵略軍であるドイツ軍兵士(運転手)の連れている猫。兵士が外から帰ると、猫が駆け寄る。国境からずっと一緒らしく、テーブルでも、猫を両手で抱えている(第2巻380頁)。

ヴィクトル(作者グロスマンが投影されている登場人物)が勤務する物理学研究所の所長チェプイジンが会話の中でルイス・キャロル『不思議の国のアリス』に登場する「チェシャ猫」のたとえをする(第3巻124頁)。

そういうわけで「ワシーリー・グロスマンは猫好きだったに違いない」とわたしは強く感じたのでした。
上に挙げたほかの何箇所かにも「猫」に関する記述がありますが、それらは割愛しました。

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投稿者 kihachin : 2014年06月25日 08:00

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