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2014年09月13日

デング熱対策にともなう代々木公園封鎖に対して「ホームレス総合相談ネットワーク」が意見書を執行しました

デング熱対策として東京都が行なった「代々木公園閉鎖」措置に対して、「ホームレス総合相談ネットワーク」が、2014年09月12日、意見書を執行しました。
その全文を転載させていただきます。

※「喜八ログ」の「代々木公園閉鎖」に関連する記事です。 ⇒ デング熱騒動で代々木公園「A地区」は厳重封鎖、けれども隣接する明治神宮は通常開園という摩訶不思議

「南門」付近

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(★転載開始★)

デング熱拡大防止措置としての公園閉鎖に対し、意見書を執行しました。
意見書PDF

ホームレス総合相談ネットワーク

・・・

2014年9月12日

東京都 知事 舛添 要一 殿
東京都 建設局 公園緑地部長 殿
公益財団法人 東京都公園協会 代表理事 飯尾 豊  殿

  意 見 書

 ホームレス総合相談ネットワークは,先般発生が確認されたデング熱の感染拡大防止のために東京都が講じている,代々木公園の閉鎖に伴う措置に関して,以下の通り要請致します。

第1 要請の要旨

 1 デング熱感染を引き起こした蚊の発生地として2014年9月4日に閉鎖された代々木公園A地区での生活を余儀なくされている野宿者について,当事者や支援者らと十分に話し合った上で,生活保護法に従った「居宅」における保護を開始するとともに,健康診断や治療等の医療行為を適切に提供すること。

 2 公園閉鎖に伴い,既に「施設」入所に至った者のうち,医療機関での経過観察や隔離治療等の医療行為の必要のない者についても,速やかに生活保護法に従った「居宅」における保護を開始すること。

 3 公園閉鎖が解除された際に元の生活場所に戻ることを希望する者については,その意思を尊重すること。また,同人らが公園内での起居に使用していた小屋や荷物などの個人所有物(生活必需品)の撤去は行なわず,万が一,既に撤去した個人所有物がある場合は,撤去を行なった機関において適切に保管し,速やかに当事者に返却すること。

 4 今後,公園内で生活する者が,デング熱によるものと思われる症状を発症して,医療機関の受診を希望した場合は,速やかに対応し,その生命身体の保護に尽力すること。

 を強く要請致します。

第2 要請の理由

 1 ホームレス総合相談ネットワークは,ホームレスの方への法的支援を行う目的で平成15年に設立された団体であり,東京都及び特別区が開設運営する緊急一時保護センターや自立支援センターの他,更生保護施設や路上における法律相談等を通して,相談者の方々の自立に向けた支援や人権の擁護に取り組んでいる団体です。

2 東京都は,今般のデング熱感染の発生を理由に,公益財団法人東京都公園協会を通じて,渋谷区の代々木公園A地区を当面閉鎖することを決定し,その後,渋谷区明治神宮公園,新宿区の新宿中央公園,港区の芝公園,世田谷区の駒沢オリンピック公園,千代田区の外濠公園においても,蚊の駆除のための薬の散布や清掃,調査のための蚊の捕獲作業等が行われ,新宿区の新宿御苑公園は9月7日から閉鎖されました。

代々木公園A地区には,従前より公園内での野宿を余儀なくされている方々(以下,「野宿者」といいます。)が数十名おられます。野宿者や支援者からの報告によると,今般の公園の閉鎖にあたり,東京都建設局公園課職員,東京都公園協会職員,渋谷区福祉事務所職員らが,野宿者に対し,公園を出て2週間施設に入るよう求めたところ,これに応じて既に施設に入られた方も数名おられるものの,多くの野宿者は公園を出ずに公園内に留まっておられるとのことです。

渋谷区は,これまで,公園内で野宿を余儀なくされている人たちが多く暮らす同区内の宮下公園や美竹公園等を,再開発や修理を理由に閉鎖する等し,その結果,公園内で起居する人を追い出し,排除するという事態に至っています。こうした行政の対応によって暮らしの場を失った野宿者が,渋谷区福祉事務所に対して,「居宅」における生活保護を申請したにも関わらず,渋谷区がこれに応じなかったケースもありました。

   このように渋谷区が,同区内の複数の公園から野宿者を排除し,生活保護行政を適切に行なわなかったことによって,それらの公園で起居しておられた野宿者が代々木公園に移動して生活されるようになり,今般のデング熱の問題に巻き込まれました。

3 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下,「感染症予防法」という。)は,その前文において,感染症根絶の重要性を説きつつも,「一方,我が国においては,過去にハンセン病,後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め,これを教訓として今後に生かすことが必要である。」とし,「このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ,感染症の患者等の人権を尊重しつつ,これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し,感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている。」と述べています。
   そして同法第2条は,「感染症の発生の予防及びそのまん延の防止を目的として国及び地方公共団体が講ずる施策は,…感染症の患者等が置かれている状況を深く認識し,これらの者の人権を尊重しつつ,総合的かつ計画的に推進されることを基本理念とする。
」とした上で,第3条第1項において,国及び地方公共団体の責務として,「…感染症の患者が良質かつ適切な医療を受けられるように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。この場合において,国及び地方公共団体は,感染症の患者等の人権を尊重しなければならない。
」と定めています。

  本件の感染拡大防止措置を講ずるにあたっては,感染の可能性がある野宿者が置かれている状況を深く認識し,その人権を尊重する必要があります。

野宿者の中には,「いったん公園から出たら戻れなくなるのでは」と危惧する方もおられます。
  野宿者にとって,重症化の可能性のある感染症が,自らが起居する場所において発生したことは,健康面での大きな不安要素となりますが,それにも増して,起居する場所からの退去と,本来は希望しない施設への入所は,自らの生活基盤を脅かす事態です。起居する場所からの退去後,「居宅」における保護に確実に繋がるのであればともかく,待っているのは,その見込みのない,劣悪な環境において厳しい規則に縛られる施設での集団生活であると,野宿者は熟知しているのです。そして,施設に比べれば公園のほうが人間らしい自由な生活を送ることができると考えて,公園での暮らしを望むのです。

生活保護法第30条第1項は,「生活扶助は,被保護者の居宅において行うものとする。」として,居宅保護の原則を定めており,同条項但書が定める施設保護についても,同条第2項で「前項ただし書の規定は,被保護者の意に反して,入所又は養護を強制することができるものと解釈してはならない」と定め,「被保護者の意」を尊重すべきことを強調しています。

感染症予防法及び生活保護法から,本件において,野宿者に対し公園からの立退きを求める場合も,「施設」ではなく「居宅」での保護に結び付けるように対応することが必要となります。

 4 日本国憲法は,第3章において,生存権を含む基本的人権を保障し,生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利が,国政の上で最大の尊重を必要とされること(同第13条),基本的人権が不可侵の権利であること(同第97条),公務員が憲法尊重擁護義務を負うこと(同第99条)等を定めています。
   また,基本的人権が容易に侵される可能性があるものであることから,憲法は,これを現在及び将来の国民に対して信託し(同第97条),国民の不断の努力による保持を求めています(同第12条)。

我が国においては,子ども,高齢者,知的・精神障害者,犯罪に至ってしまった人等,弱い立場にいる人の多くが,保護や更生の必要性を理由に,一般社会から隔離された施設に収容され,当該施設において人権が尊重されているかどうかの監視も十分に行なわれているとは言えません。そのような処遇は,社会からの排除とも言えるものであり,ホームレスの方に対する処遇も同様です。

国や社会の成熟度は,弱い立場に置かれている人の基本的人権が,どれだけ尊重されているかによって計ることができると言われていますが,その点では,弱い立場にいる人を施設等に収容して排除する我が国は,未だ発展途上であると言わざるを得ません。

ホームレスの方は住所がないことから,選挙権を持たず,その意思を国政に反映させることすらできません。
また,ホームレスの方の中には,幼少期に虐待を受けたり,十分な養育を受ける機会を持たなかったりしたために,他人と関わることが難しく,孤立してしまう方も少なくありません。

1979年にノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサは,1981年から1984年にかけて3度来日していますが,その際,東京の山谷や大阪の釜が崎も訪れ,講演で次のような言葉を残しています。

「私はこの豊かな美しい国で,孤独な人を見ました。この豊かな国の大きな貧困を見ました。人間にとって最も悲しむべきことは病気でも貧乏でもありません。物質的な貧しさに比べ,心の貧しさは深刻です。」
「豊かそうに見えるこの日本で,心の飢えはないでしょうか。だれからも必要とされず,だれからも愛されていないという心の貧しさ。物質的な貧しさに比べ,心の貧しさは深刻です。心の貧しさこそ,一切れのパンの飢えよりも,もっともっと貧しいことだと思います。日本のみなさん,豊かさの中でこころの貧しさを忘れないでください。」

ホームレスの方の支援は,寝床や食事の提供だけでは不十分であり,ましてや,施設での厳格かつ画一的な処遇では,ただ管理される存在として,ご本人の孤独感を更に強めてしまい,自立から遠退く結果となりかねません。

ホームレスの方の支援には,お一人お一人の状況に配慮し,お一人お一人が本当に大切な方なのだという気持ちを持って寄り添い,その方が自立したいというお気持ちになられるのを辛抱強く手助けする姿勢が不可欠であると思われます。それは容易なことではありませんが,不可能ではないはずです。

日本国憲法は,国民と公務員とが連携して,弱い立場に置かれている方々の人権を守ることを期待しているとも解されます。

我々ホームレス総合相談ネットワークを含め,多くの団体や個人が,ホームレスの方の自立に向けた支援や人権擁護に取り組んでいますが,貴庁におかれましても,何卒,ホームレスの方お一人お一人の状況に応じた,お心のこもった十分な支援を行なって下さいますようお願い致します。

そして,本件における具体的対応として,代々木公園A地区において起居する当事者及びその支援者らと十分に話し合うこと,公園外での生活を希望する者や既に施設に入所した者に対しては,生活保護法に従った「居宅」保護を速やかに進めること,閉鎖が解除された際には起居していた場所に戻ることを希望する者については,その希望に沿うよう対応し,所有物の撤去などを安易に行わないこと,及び,医療を受けることを希望する者や必要とする者には適切に対応することを,貴庁に対して,強く要請致します。

以上

ホームレス総合相談ネットワーク

(★転載終了★)

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投稿者 kihachin : 2014年09月13日 21:00

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