2008年04月23日
『大和ごころ入門』
『大和ごころ入門』扶桑社(2008)。村上正邦さん(元労働大臣)と佐藤優さん(起訴休職外務事務官・作家)の対談本です。
村上正邦さんは「KSD事件」で、佐藤優さんは「鈴木宗男問題」で「国策捜査」の対象となり、「かなり疑問のある裁判」を経て(※)、それぞれ有罪となりました。村上正邦さんは先日最高裁で有罪・実刑が確定。佐藤優さんは一・二審で執行猶予付き有罪判決を受け現在上告中です。
(※検察官がひとたび「有罪」とスジを書いたら即「有罪判決」となるのが日本の司法なのか?と思ってしまいます)
村上正邦さんといえば「憲法改正(大日本帝国憲法への回帰)」を主張し、「元号法制化」「国旗・国歌法制化」に奔走し、天皇を中心とした日本国家を理想とするバリバリの右派政治家です。したがって「リベラル」「市民派」「左派」の方からは頭から忌避されてしまいそうですが・・・。
村上さん自身は「意見が違う他者」を頭ごなしに否定することのない、多元主義と寛容の人でもあります。それは「元・日本共産党幹部」の筆坂秀世さんや「自他共に認める小沢一郎の参謀」平野貞夫さんとの鼎談本『参議院なんかいらない』『自民党はなぜ潰れないのか
』を出されていることからも察せられます。筆坂秀世さんは、村上正邦さんが「
参院のドン
」といわれていたころ、共産党の意見もきちんと聞く、自民党議員としてはきわめて公平な人であったことを証言しています。
佐藤優さんによれば、村上正邦さんはたとえ年下の相手であっても呼び捨てや「~くん」付けにすることなどなく「~さん」と丁寧に応対されるらしい。そして城内実さんから聞くところでは、普段の村上さんは笑顔を絶やさない至って穏やかな方なのだそうです(ただし「いざ」というときは大変な迫力らしい)。城内さんは「村上先生こそ真の国士です
」と仰っていました。
一男三女のよき父親で、昭和43年(1968)に生まれた末っ子のお嬢さんはダウン症という障害を持っていました。そのお嬢さん明子さんとは「どこへ行くのも一緒
」。パーティでも、コンサートでも、旅行でも、村上正邦さんと奥様とお嬢さんの3人で出かけるそうです。この話を『証言 村上正邦 我、国に裏切られようとも』講談社(2007)で初めて読んだときは思わず涙がこぼれました(私《喜八》は涙もろい男なのです)。
あたかも「兵法家」のようなごつい容貌。南北朝動乱時の南朝武士のような佇《たたず》まいの村上正邦さんですが、その言葉使いには優美なところがあります。自ら詩と俳句を詠む習慣をもつ村上さんが紡《つむ》ぎだす言葉は、たとえ政治分野の発言であっても、叙情的とさえ感じさせる一瞬があります。剛毅にして繊細、繊細にして剛毅。なんとも不思議な印象の方です。
「KSD事件」で逮捕されて以来約6年経ったいまでも、村上正邦さんを慕って多くの人が集まってきます。『大和ごころ入門』で佐藤優さんが指摘しているように「
いまの村上先生に直接的な見返りを求める人はいない
」(同書177頁)。それなのに立派な人たちが村上正邦さんを応援している。これはまさに「奇跡的な」光景ではないでしょうか。
残念ながら、先にも記したように、村上正邦さんの実刑・有罪は確定してしまいました。日本の国のために精一杯働いてきた村上正邦さん、城内実さんが「真の国士」と呼ぶ村上正邦さんが70代の半ばにして刑務所に収監される。「なんとも無残」というしかありませんが・・・。村上正邦さんは必ずや不死鳥のごとく復活されるでしょう。「憂国の古武士」には「最後の働き場所」が用意されているに違いない。それが「天命」であると私(喜八)は堅く信じます。
『大和ごころ入門』における村上正邦・佐藤優対談は大変に興味深い問題を多く含んでいます。村上・佐藤で真っ向から意見が対立することも多々あります。たとえば憲法改正問題では、村上正邦さんは現行憲法はアメリカによる『占領基本法』であるから速やかに自主憲法を制定すべしと主張する改憲論者です(※)。そして佐藤優さんは現行憲法の全条を護持するべきと主張する自称「
かなり強力な護憲派
」です。「国旗・国歌」問題でも、法制化に尽力した村上さんに対して、佐藤さんは国旗・国歌は法制化に馴染まないと反論する。お2人とも「自分とは違う意見」を正面から受け止め、大人の態度で議論を進めていく。非常にスリリングな「思想の対決」を見る思いです。
(※ただし、村上正邦さんも「今の二世三世の議員」「一般庶民の生活も知らなければ苦労も分からない」「親の財産をそのまま受け継いで努力も何もしない」者たちによる改憲には反対しています。「今は憲法を変える時期ではない」とも発言されています。『証言 村上正邦 我、国に裏切られようとも』237頁)
ご興味のある方は『大和ごころ入門』を一読されてみてください。「右・左」「国権派・民権派」「改憲派・護憲派」の違いを超えて、得るところが多い一冊であると思います。私(喜八)の場合は「もっと日本の古典を読もう」「吉野に実際に行ってみよう」と思うようになったのが、本書『大和ごころ入門
』の最大の収穫でありました。
(『大和ごころ入門』村上正邦・佐藤優、扶桑社、2008)
【付記1】
ひとつ奇妙に思うことがあります。
村上正邦さんの有罪・実刑「不当」判決に対して抗議を行なった「保守派」「右派」ブロガーが少数であったことです。
特に「ブログランキング 政治部門」上位にはほとんどいないようです。
もしかしたら村上正邦さんと政治ブロガーの皆様とでは「ジャンル」や「畑」が異なるということなのでしょうか?
「政治の世界は奇奇怪怪」という思いを新たにしました・・・。
【付記2】
城内実さんのホームページで「村上正邦・城内実」対談動画を観ることができます。
「対談動画」
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ご協力をお願いします。
それぞれ意見は異なるけれど、祖国を愛する点では共通している「城内」「浪人」 「高橋」 「早雲」 「三輪」 「山崎」「喜八」の応援をお願いします。
「関連ページ」
投稿者 kihachin : 12:03 | トラックバック
2008年01月22日
『生き地獄天国』
このごろは雨宮処凛さんのことを「プレカリアートのマリア
」と形容する向きもあるのだとか。どうやらこれは朝日新聞による命名のようです(「雨宮処凛 すごい生き方ブログ 2007,06,19」)。
私(喜八)の見るところでは「マリア
」というのは、どうも雨宮さんのガラではありません。むしろ「観音菩薩」あるいは「マリア観音」の呼称が似合いそうな雨宮処凛さんです(「敵」にとっては「鬼子母神」か?)。
「雨宮処凛のロリータ・ファッションは甲冑《かっちゅう》だ。戦闘服なのだ」という意見もあるみたいです。これは正鵠《せいこく》を射ていると思います。悪意むき出しの輩《やから》が闊歩する「娑婆」に討って出るための鎧《よろい》としてのロリータ。雨宮さん自身も以下のように書かれています(「webちくま」反撃タイムズ第5回より一部引用)。
私がロリータを始めたのは26歳頃(微妙だ)。物書きになりたての超世間知らずだった当時、私を悩ませていたのは一部マスコミ関係者のセクハラだった。いきなりフリーターから物書きになって右も左もわからない中、よく知りもしないマスコミの人と2人っきりで飲むなんてことが多々ある。そうして、自分の身は自分で守らなければならないことを痛感した。何かセクハラを未然に防ぐ手立てはないものか……。そこで思い付いたのが、「そうだ、変な格好をすればいいんだ!」ということだ。
すると「効果はテキメン。セクハラ被害は激減
」したそうです(よかったですね!)。ただし、「道を歩いていてもキャッチセールスや宗教の勧誘にさえあわなくな
」り、「とにかく誰も話しかけてこない
」、さらには「好きな男にも相手にされなくなった
」という副作用もあったようですが・・・。
本書『生き地獄天国
』は、そんな雨宮処凛さんの「自伝」です。2000年、25歳の雨宮さんの「処女作」として大田出版から刊行され、今回めでたく「ちくま文庫」の1冊として復刊されることとなりました。
内容は「凄い」の一言です。
1歳からのアトピー性皮膚炎、小学生からのイジメ被害、反動としてのイジメ加害、誘拐未遂(誘拐されかけたのではなくて、加害者になりかけた!)、14歳からはビジュアル系バンドの追っかけ、“ファック隊”への昇格、乱交、麻薬、シンナー、家出、カツアゲ、万引き(プロ級)、登校拒否、家庭内暴力、リストカット、19歳での服毒自殺未遂と胃洗浄、プレカリアートとしての貧乏生活、度重なるクビ(解雇)、新右翼団体に参加、民族派パンクロックバンド「維新赤誠塾」結成、北朝鮮旅行、ガサ入れ、イラクに渡航し国際音楽祭に出演、映画『新しい神様』主演等々、「これでもか!」とばかりの怒涛の青春記です。
でも、読後感はじつに爽やかなのですね。「ヨイショ」とかそういうことではなくて、『生き地獄天国』は本当に素晴らしい本だと思う。雨宮処凛さん自身によると、『生き地獄天国』を読んで「ひきこもり」から脱出した若者が何人もいるそうです。「そういう意味では、この本は不思議なパワーを持っている
」。なるほど、きっとそうなのでしょう。
私(喜八)は『生き地獄天国
』を読むことによって、「じつは自分自身がかなりダメな奴だった!」ということに気づきました。普段はなるべく見ないようにしている「ダメ人間という『現実』」。これに向き合うだけのパワーを本書は与えてくれたようです。そして「ダメでも別にいいジャン。好きなように生きればいい」と開き直る気持ちになれました。というわけで、雨宮処凛さんの『生き地獄天国』は、私にとっても「特効薬
」となりました。
(『生き地獄天国―雨宮処凛自伝』雨宮処凛、ちくま文庫、2007)
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投稿者 kihachin : 12:45 | トラックバック
2007年10月25日
金大中氏拉致事件

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1973年、韓国の民主運動家であった金大中(キム・デジュン)氏が東京都内のホテルから白昼堂々「拉致」された「金大中事件《きんだいちゅうじけん》」。当時、私(喜八)は中学生だったので、あの衝撃的な事件のことは、よく覚えています。
【続きを読む...】投稿者 kihachin : 19:57 | トラックバック
2007年10月18日
植草一秀『知られざる真実』より
植草一秀さんは「小泉・竹中政権」の政策をもっとも厳しく一貫して批判してきたエコノミストです。しかも植草さんは旺盛な執筆活動のかたわらテレビにも頻繁に出演していたため、大きな社会的影響力を持っていました。不可解な「事件」の前までは・・・。
植草一秀さんの近著『知られざる真実 勾留地にて』イプシロン出版(2007)から気になった部分を抜書きしてみました。引用文中「
私
」は植草さんです。なお、太字の「見出し」とページ数の表示は私(喜八)が便宜的につけました。
投稿者 kihachin : 12:06 | トラックバック
2007年09月26日
「郵政民営化凍結」のための参考書
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(猫の画像は「ImageChef イメージクリエーター」で製作しました)
小泉・竹中政権による「郵政民営化」とは一体何だったのか?
あれだけ大騒ぎして強行された「郵政民営化」は、我々の生活にどのような影響を与えるのか?
この疑問を解くのに役立つ本を集めてみました。
投稿者 kihachin : 12:39 | トラックバック
2007年09月18日
『参議院なんかいらない』
元・参議院議員、平野貞夫氏と村上正邦氏の発言を『参議院なんかいらない』幻冬舎新書(2007)より引用します。やはり元・参議院議員で郵政民営化担当大臣・内閣府特命担当大臣・総務大臣を歴任した竹中平蔵氏に対する痛烈な批判の部分です。
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2007年08月24日
『ワーキングプアの反撃』
雨宮処凛(あまみやかりん)さんと福島みずほさんの対談本『ワーキングプアの反撃』七つ森書館(2007)を非常に興味深く読みました。
雨宮処凛さんは20代の頃「反米右翼」団体に属し、民族派パンクロックバンド「維新赤誠塾」ではヴォーカルをつとめ、「ミニスカ右翼
」と呼ばれていました。現在は小説家・著述家として旺盛な活動を展開し、さらには「プレカリアート(不安定なプロレタリアート)」支援運動に邁進《まいしん》されています。
福島みずほさんは言わずと知れた「社民党」党首です。なぜか日本国内の「いわゆる右派」男性からは憎悪と侮蔑の対象とされることが多いようです。では、どうして福島みずほさんは嫌われるのか? 「社民党」であることが原因なのか? フェミニストであることが理由なのか? はたまた「事実婚」を実践されているためか? よく分かりませんが、本書『ワーキングプアの反撃』を読むと「気のいい元気なお姉さん」という感じですね。悪印象はまったくありません。
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2007年07月06日
皆さんに応援して欲しい「雑誌」
謎の憂国者「r」さんの雑誌紹介です。
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2007年06月14日
『世界金融経済の「支配者」』
『世界金融経済の「支配者」―その七つの謎』著者の東谷暁さんは「現在もっとも信頼できる経済ジャーナリストのひとり」だとつねづね私(喜八)は思っています。
『エコノミストは信用できるか』(2003)では、日本の経済学者・エコノミストの多くが状況次第で自分の意見をコロコロ変える節操のない人たちであることを実証。『日本経済新聞は信用できるか
』(2004)では、日本で唯一の経済専門全国紙が、やはり状況次第で意見を180度変える、信頼のおけないメディアであることを実証。『民営化という虚妄
』(2005)では、いわゆる「郵政民営化」推進派の論拠が、いかにあやふやなものであるかを論破してきました。
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2007年06月06日
『護憲派の一分』
元衆議院議長であり社会(社民)党党首もつとめた土井たか子さんと経済評論家佐高信さんの対談集です。土井たか子さんによるミニ自叙伝ともいうべき「初心忘るべからず ── 初当選まで
」と、親しい政治家・出版社社長への追悼文「盟友たちへの誓い
」も収録されています。











