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「筋肉をつけすぎたくない
」
「ムキムキになりたくない
」
ウエイトトレーニング(筋力トレーニング)入門者の多くが口にする言葉です。男女を問わず「ボディビルダーのような(筋肉隆々の)身体になったら困る
」という心配をされる方は少なくないようです。
その気持ちは分からないでもありません。若い頃の私(喜八)もおなじように考えていました。けれども多くの場合このような心配は無用なのです。筋肉というものはそんなに簡単につけられるものではないからです。
平均的な体質の人が一通りのウエイトトレーニングを行なってからといって「ムキムキ
」になるのはまず不可能です。コンテストで上位にくるようなボディビルダーは先天的な素質があるところにもってきて、ハードなトレーニングを長期間に渡って実施した人がほとんどでしょう。
パワーリフティングの世界大会で入賞した実績も持つ鈴木正之先生(名城大理工学部助教授、トップのスクワット画像)は次のように書いています(『続 間違いだらけのスポーツ・トレーニング』鈴木正之、黎明書房、1993より引用)。
筋肉は片手間のトレーニングをしたくらいで、増し(筋肥大)過ぎることもなければ強くなり(筋力アップ)過ぎることもありません。野球でも、バレーボールでも筋肉がなく、筋力がなさ過ぎて困る例が圧倒的なのです。
とくに女性の場合はまったくと言っていいほど「ムキムキ
」の心配はいりません。筋肉が生成されるには男性ホルモンが決定的といっていいほど大きな働きをしますので、男性ホルモンの分泌が少ない女性が筋肉をつけるのはきわめて難しいことなのです。
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ふたたび鈴木正之先生の『続 間違いだらけのスポーツ・トレーニング』から引用します。
日本人は、肉体がつくり出す物理的現象を不当に低く評価し「肉体派」の人間を、知的思考力の伴わない乱暴な人間と決めつけがちで、せいぜい「いい身体してますね」程度の言い方をし、本心では「自分はそんな筋肉はつけたくない」と思い、その筋肉美と筋肉が発揮する「筋肉パワー」を「素晴らしいもの」とは評価しようとしないのです。私はこの現象を「日本人の筋肉アレルギー」と呼んでいます(同書より引用)。
「筋肉をつけすぎたくない
」発言の裏側には、この「筋肉アレルギー
」が存在するのは間違いないでしょう。ともあれこのような発言が多くでてくるのは興味深い現象です。ここには日本人の身体観・美意識というものが顕著に表れています。その原因の分析にまで踏み込む余裕はありませんが・・・。
ボディビルダーに関しては「見かけだけで力はない
」とか「使えない筋肉
」といったような批判が投げかけられることが少なくないようです。先日も書店でウエイトトレーニング関連の雑誌を眺めていたら、部活動帰りらしい男子高校生2人がおなじ雑誌を見ながら「使えない筋肉」という発言を嬉しそうに繰り返していました。
ここには「筋肉をつけるのは簡単なことなのだ
」というはなはだしい誤解もあるのでしょう。簡単だと思い込んでいるがゆえに軽侮の対象にもなる。実際に筋力トレーニングを始めてみれば、筋肉をつけることがいかに難しいか分かるのでしょうが・・・。
とはいえ多くの人がボディビルダーのような身体を志向していないのは事実です。これは個人の美意識にかかわることですから、「肉体派
」の人が切歯扼腕したとしてもいかんともしがたいことです。
日本では一般的に「格好いい」とされる体型は次のようになるでしょうか。
以下は一般的な人の好みを(偏見に満ちた)私が推し量ったものですから、ぜんぜんピント外れかもしれません。
「男性の場合」
・カンフー俳優ブルース・リーのような体型。細身の筋肉質でしなやかな印象。
・水泳選手タイプの体型。「ブルース・リー体型」よりやや太め。同じくしなやかな印象。
「女性の場合」
・とにかく細いのがよいとされる。筋肉はなくてもいい(ないほうがいい?)。男性の場合と同じくしなやかさが尊ばれる。
アメリカ映画などを観ていると日米では理想の体型に大きな違いがあることが分かります。とくに女性の場合で差が明らかなようです。アメリカの女優さん(および女性歌手)には明らかにウエイトトレーニングで鍛えているという印象の人が少なくありません。
ところでウエイトトレーニング上級者に対して「筋肉をつけすぎたくない(ムキムキになりたくない)
」というような発言を投げかけるのは得策ではないと私は思っています。ましてや、筋トレのやり方を聞こうというときにはやめておいたほうが無難です。
おなじジムのベテラン・トレーニーさん(ウエイトトレーニング歴20年)に「筋肉をつけすぎたくないという初心者についてどう思いますか?」と質問してみました。
初心者の場合、筋肉トレーニング(ボディビル)というとすぐに TV や雑誌でみたボブ・サップやオリンピア級のボディビルダーの身体を連想するのではないでしょうか。それに誰でも筋トレをするとあんなふうに簡単になれると思っている人もいるようです。
死に物狂いで筋肉トレーニングをしても、あんな身体になれるのはごく小数です。 できるものなら「筋肉をつけすぎた」と後悔するほどの身体になってごらんなさい、と言ってあげたいですね(笑)。
ちなみにこの人はけっして攻撃的な性格の持ち主ではありません。社会的常識に富んだ、ごく穏やかな方です。
たとえ話をしてみましょう。凄く勉強ができる人、たとえばノーベル賞を受賞するような先生のところへ赴いて「勉強の仕方を教えてください。でも(勉強が)できすぎるようにはなりたくありません」と言ったらどうでしょうか? 大変に無礼な態度であることは理解していただけると思います。
ウエイトトレーニングにせよ勉強にせよ人並み優れているという方は大変な労苦の末に高いレベルに到達した場合がほとんどです。当然のことながら自分の業績・人生にプライドを持っていると判断していいでしょう。
「あまり筋肉をつけたくないけれど、トレーニング法を教えてくれ」というのは相手の生き方そのものを正面から否定した上でアドバイスを求めるというきわめてチグハグな行為となります。このため最低でも嘲笑の対象に、悪くすれば憎悪の対象にもなる恐れがありますから、やめておいたほうがいいと私は思います。
(喜八 2004-11-20、改訂2007-04-22)
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