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山の危険

テントの中で ■ たとえ低い山であっても遭難が発生すれば「」の危険があります。「日帰りのハイキングだから」「低い山だから」といって油断するのは禁物です。

私の友人も低山で亡くなっています。彼は冬山単独行の経験も豊富なベテラン山男でしたが、無雪期の1200メートル級の山で遭難して帰らぬ人となりました。捜索には私も参加し、友人の遺体を担架で運び下ろすのを手伝いました。

日帰りの山歩きで遭難する人は少なくありません。各地の登山道で行方不明者の写真入りポスターをよく見かけます。最近はインターネットや電子メールで「情報求む」の呼びかけが行なわれることも多いようです。

私自身は「ベテラン」でも「山男」でもありませんが、日帰りまたは1〜2泊程度で楽しむ山歩きにともなう危険について考えてみました。

(写真は私(喜八)です。友人が亡くなる約10ヵ月前に彼のテントのなかで撮ってもらったものです)


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目次


絶対に必要な道具

地図・コンパス(方位磁石)・ヘッドランプ(または懐中電灯)・雨具はどのような山歩きにおいても「絶対に」携帯しなければならない必需品です。けれども多くの人がもたずに済ませてしまうものでもあります。

地図とコンパス(方位磁石)
地図とコンパスなしで道に迷ってしまったら、その時点で「遭難発生」といってよいかもしれません。想像するだけでも恐ろしい事態です。

日帰りのハイキングだから」「決まったルートしか歩かないから」と、この2つを用意しない人が多いようですが、大変に危険なことです。山の遭難例を調べると、地図はもっていてもコンパスはもっていないことが多いと聞きます。

地図は国土地理院製作のものがよいといわれます。ただし一般ルート中心の尾根道歩きなら市販の「登山地図」でも大丈夫でしょう。国土地理院の2万5千分の1の地図は、航空写真を基に作製されており、国内ではもっとも信頼できるものとされています。

 国土地理院のサイト

コンパス(方位磁石)は比較的安価なものでも使えると思います。腕時計のバンドに装着する簡便なタイプのものもあります。

ただし冬山など自然条件の厳しい登山、または沢登りや一般ルート以外をゆく登山であれば、登山用品店で本格的なコンパスを求めた方がよいでしょう。

ヘッドランプ(または懐中電灯)
ヘッドランプ(または懐中電灯)も必需品です。しかし、これも「日帰りだから」といって携行しない方も少なくないようです。

山道で日が落ちてしまい明かりがない場合、行動はほぼ不可能になります。暗いと道標やテーピング(色つきのテープなどを使った目印)を見逃しやすくなるので、道に迷う危険がさらに増します。「日が暮れぬうちに下山しよう」と慌てると、事故を起こす可能性も高まります。

雨具」 日本の山は雨が降りやすいのです。平地ではかんかんと日が差しているとき山の上はどしゃぶり、ということは珍しくありません。したがって雨具は必携です。

現在、雨具は上下セパレート型の雨合羽が標準と考えられています。そしてゴアテックスなどの防水透湿素材(水の浸入を防ぎ水蒸気を透過させるもの)が中心となっています。大変に便利なものだと思います。

あえて注文をつけるなら、雨合羽のフードは首が固定される感じになり肩の辺りの筋肉が疲れやすくなるように思います。気分も疲れます。

風がそれほど強くなく、また岩場などでないのなら、折りたたみ傘が意外と便利です。近年、軽くて丈夫な登山向けの製品も開発されています。

雨具のついでに「下着」についても書いておきます。寒い時期に雨やみぞれに打たれ下着まで濡れてしまうと、急速に体温を奪われるので危険です。

山で使用する下着や靴下は昔からウール製品がよいとされてきました。最近では乾式アクリル素材のものが多く使用されています。ウールや乾式アクリルは濡れた場合でも保温力がゼロにはなりません。綿100%製品は濡れてしまうと保温力を失います(凍死の原因にもなります)。

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山で迷ったとき

山で迷うと気持ちがあせってしまい、速足で休まず行動しがちになります。このようなときは判断力が極度に低下します。一種のパニック状態に陥り、東西南北も分からなくなり、まったく逆の方向に行ってしまうことさえあります。

迷ったときはひとまず立ち止まって休むのがよいと思います。私の経験では水分補給をすると気持ちが落ち着くようです。お茶でも淹れて一服しましょう。

登りでは迷い難い」「下りは迷いやすい」という法則があります。下山時には注意しましょう。また下りでの事故発生率は登りのときと比べて非常に高いという統計もあります。

迷っているときに無闇に「下る」のは危険です。山で迷った人は「早く下山したい」という気持ちに駆られるため、とにかく下ってしまう傾向があります。その後、道が間違っていると気づいても、引き返す体力・気力が残されていません。そこで更に下っていってしまい勝ちです。最終的に誤りに気づいたときには手遅れになっています。

迷っているときは沢に下りてはいけません(絶対に!)。ただし適当に下ってゆくと沢に迷い込む可能性が高いのも事実です。もし沢に入ってしまったら、勇気をもって引き返しましょう。

川に沿って下れば里にでる」というのは「理屈」です。しかし急峻な日本の山の沢にはかならずといってよいほどがあります。ザイル(ロープ)などの登攀道具なしで素人がある程度以上の高さの滝を下ることはほぼ不可能です。

登山道が沢筋を通っているときも、ルートを失いやすいので気をつける必要があります。沢からでるときに道を間違いやすいのです。友人の遭難も下山時に沢で迷ったのが端緒でした。沢に入ったら「ここが切所(せっしょ)だ!」と緊張しましょう。

迷ったときは「登る」のが基本です。近くにある一番大きな尾根にとりついて登ります。そして正式な登山道を探すのです。

ただし適当な尾根を登ってゆくと、通過できないような岩場・ガケ(急斜面)・猛烈なヤブ・鹿除けの柵などにゆく手を阻まれることがあります。ガケに突き当たったときは登って(下りて)はいけません。途中で身動きがとれなくなる危険性があります。


ビバーク

本格的に迷っているときに日が落ちてしまったら、ビバーク(不時露営)をしなければならないかもしれません。昔から「夏の低山であってもウールのセーターは必携」とされてきました。これはビバークへの備えであると思われます。

俗に「山で遭難したら眠ってはいけない」といわれます。冬山で充分な装備もない場合ならそうかもしれません。しかしそれ以外の場合はちゃんと眠って体力を回復させる方がよいのです。

けれども実際にそのような場面になったとき眠りにつくのが難しいのも事実です。もっている服をすべて身につけて(雨具も含めて)、なるべく暖かくしてゆっくりと身体を休ませるだけでもよいと思います。

ビバーク時に雨やみぞれに打たれて体温を低下させると大変に危険です。薄いビニールシート1枚を用意しておいて頭からかぶるだけでも、かなりの違いが生じます。また薄い発泡スチロールのシートを用意しておけば、座ったときに尻の下に敷くことができます。これで体温が地面に吸収されることを防げます。

下着までずぶ濡れになってしまったときは、濡れた下着を脱いで素肌の上にウールのセーターを着るとよいといわれています。実際にこれで命拾いをした人もいます。


積雪時の山

積雪時には多くの山がまったく別の顔を見せます。雪のある山にうかつに踏み入るのは大変に危険です。いわゆる「入門者向け」とされるような山であっても、雪がつもると危険な個所は少なくありません。

とくに危険なのは谷の側が深く切れている斜面を横断(トラヴァース)するときです。無雪時には滑って転倒したとしても数メートル落ちるだけですむようなケースでも、雪がつもっている状態ではずっと下まで滑落してしまうかもしれません。そうして樹木や岩に激突したら、ただではすみません。


人間関係の危険

山行パーティーは気心の知れた人や信頼できる人と組むのが基本です。インターネットで知り合った人といきなり山にゆくというのは、ちょっと心配です。不測の事態が発生したときは各メンバー間の信頼関係がものをいうからです。

一般公募型の山行で各メンバーが当日初めて会ったというようなパーティーは遭難を起こしやすい傾向があります。引率者の責任をめぐって裁判になった例が複数あります。

自称ベテラン」には注意しなければいけません。山の実力は外から見ただけでは分かりません。実力のない「自称ベテラン」が初心者を引率した場合、遭難の危険は急激に高まります。

誰かに頼って「山に連れて行ってもらう」と考えるのは危険です。「自分のことは自分で」と考えていた方がよいでしょう。

遭難時には常識外のことが連鎖的に発生しています。第三者の目でみると「なんでこんな非常識なことを!」と思えるようなことを次々としてしまいがちなのです。

しかし、これは誰しもが陥る可能性があることでしょう。「自分たちは絶対大丈夫だ」と考えない方がよいと思います。


ハンターの危険

狩猟日(シーズン)以外でも「害獣駆除」で銃をもったハンターが山に入っていることがあります。猟銃の誤射で人を殺しても、日本では「罰金程度」で済むことがほとんどだとか。

誤射対策としてはオレンジ色の服・帽子・バンダナなどを身につけるとよいといわれます。オレンジ色は人間にとっては目立つ色ですが、野生動物には自然な色に見えるそうです。間違って撃たれる危険性が減ります。これは知り合いのハンターに聞きました。


痴漢の危険

女性の場合は「痴漢」に遭う危険性があります。知人の女性は一人で林道を歩いているときに被害を受けたそうです。

私(喜八)は、山の中の人があまり行かないような場所で、女性の下着などが集められているのを発見したことがあります。思わずぞっとしました。山に入る人は善人ばかりではありません。


動物の危険

山ダニに刺されると、ぽつぽつと赤くなり、1週間以上も強い痒みが続きます。ヤブ山を好む人はよくやられます。治療にはアンモニア入りの軟膏が有効です(薬局で訊いてみてください)。

地域によってはヒルの危険もあります。気がつくと首筋や足で血を吸われています。無理にはがすと刺し傷から出血しますので、煙草の火を押しつけて落とすのがよいそうです。ヒルは酒の匂いが嫌いだという説もありますが、真偽は分かりません・・・。

北海道ではヒグマの危険があります。本州・四国のツキノワグマはそれほど危険ではありませんが、東北・関東・中部の山ではときどき事故が発生します。西日本にはツキノワグマの数が減少しています(九州では絶滅したとみられています)。ヒグマもツキノワグマも近い将来の絶滅が心配されています。


体調管理

たとえばメンバーの一人が足首の捻挫をしたとします。これだけでもパーティー全体に大きなリスクが生じます。平地と違って救急車は呼べないので、人力で下ろすかヘリコプターを呼ぶか、ということになります。

人を背負って山道をゆくことができるのは(下りであっても)相当な体力の持ち主だけです。普通の人にはまず不可能です。そしてそのような状態で雨が降ってきたら、さらに道に迷ったら・・・。このように一人の体調不良が(他パーティーを含めた)多くの人の危険となる可能性があるのです。

高所は紫外線が強いので、慣れない人が半そで半ズボンでいたりすると日焼けが大変です。山岳雑誌のモデルを安易に真似するのは危ないと思います。

高い山では気圧の影響のためか、普段の心理状態より「ハイ」になる傾向があるのではないでしょうか。飲酒も変な効果がでてしまうことがあるようです(悪酔いする。うつ状態になるなど)。

夏の尾根道歩きで水分を切らすと、熱中症になる可能性があり危険です。水はやや多めに確保しておいた方がよいでしょう。


山小屋

人気のある山域ではシーズン中、多くの小屋が大変に混雑します。このため「眠れない」という悩みを抱く人は多いようです。残念ながら根本的な対策はありません。「入眠剤を使う」という人の話を聞いたこともあります。

山小屋の食事で一般的にいえるのが、「野菜が足りない」ということです。食物繊維が足りないと便秘になりやすいのが困ります。ビタミン、ミネラルはサプリメントで摂るという手もありますが・・・。

食事を残す人は意外に多いので、野菜だけ人の分まで貰って食べるという方法もあります。しかしこれは見苦しいから自分で野菜や果物を用意してゆく方がよいかも(笑)。

トイレが混むのも問題です。トイレットペーパーが置いていないことも多いので、持参しなければなりません。トイレットペーパーは芯を抜いて全体を押しつぶして容積を減らします。濡れてしまうとダメになってしまいますから、2重3重のビニール袋に入れます。


登山届

「登山届」は所管の警察署の地域課に提出することとなっています。郵送する方が多いようです。群馬・山梨・静岡・岐阜・富山・鳥取大山などではインターネットでも受け付けています(素晴らしい!)。また登山道の入り口付近に専用ポストが設けられていることも多いようです。遭難が発生した場合は、登山届が提出されているかどうかが捜索作業に大きな影響を及ぼします。

登山届の他にメモをつくっておいて、在宅の家族や親しい友人に預けておいた方がよいでしょう。メモには全参加者の氏名と連絡先・行動予定などを書いておきます。


山岳保険

もし遭難が発生してしまった場合、捜索費用は多額になる可能性があります。ヘリコプターが出動した場合はそれだけで50〜100万というお金がかかる可能性があります。総額では数百万の上からかかるかもしれません(そのときの状況により異なります)。

したがって現在では山岳保険はもはや「常識」だそうです。「山岳保険」というキーワードをインターネットの検索エンジンで調べることをお勧めします。

 「もしも」のために、山岳保険 - All About


最後に

脅かすようなことばかり書きまして申し訳なく思います。いうまでもなく山だけが危険なわけではありません。都会のまんなかで行動していても、交通事故・犯罪被害など様々なリスクは存在します。

山歩きは本当に奥が深く楽しいものです。「趣味の王様」だといえるかもしれません。近年、中高年の人たちを中心に山歩きのブームが続くなか、できるだけ多くの人が安全に山歩きを楽しむための一助になればと思い、この記事を書きました。

(喜八 2003-06-01、改訂2014-04-14)


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喜八 e-mail: admin@kihachin.net