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学校のトイレ

wc

茅ヶ崎市松林小学校

いまも日本全国で多くの子供たちが苦しんでいるだろうことについて書いてみたい。
小学校のトイレで大便ができない」という問題である。たいていの大人は「そんなこと」と一笑に付すかもしれない。だが、子供の頃これで苦しんだ経験をもつ私には笑うことはできない。

昨年(2003)の春頃に「小便器がない男子トイレ」という新聞記事を目にした。その記事によると神奈川県茅ヶ崎市の松林(しょうりん)小学校では校内9ヵ所の男子トイレのうち2ヵ所から小便器を撤廃し個室だけに改修したという。

発案したのは同市教育委員会である。学校のトイレで大便ができない子供(とくに男の子)が多く、このままでは健康によくないというのが改修の理由だ。

「この教育委員の人たちは真の教育者だ」と私は思う。子供の立場になって考えることのできる大人に見守られている松林小学校の生徒はなんて幸運なのだろう。もし自分が小学生だとしたら、どんなに嬉しいことか。

大便をすることは恥ずかしいことではないと子供たちに教えるべきと排便教育の必要性を説く人もいる。正論である。しかし、この「大便問題」を根本的に解決した学校・教師が過去から現在までに、どれだけ存在するのだろうか? はなはだ疑問だ。

苦行の日々

私が小学生だったとき、学校のトイレで大便をすると、臭い臭いと大声ではやされるのが普通だった。さらには上から覗かれたり水を掛けられたりもした。学校でウンコをするのは犯罪と同じような扱いをされていた。この状況はいまでもさほど変わらないようだ。

それで結局どうなるか。ただひたすら便意を我慢することになる。これは場合によっては壮絶な苦行となりうる。かつては「学校で大便ができない子供」の1人であった私の経験からも、それは確かだ。

食事と排便には密接な関連がある。「入れば出る」。当たり前の話である。学校生活では昼食後が便意のピークとなることが多いのではないだろうか。ここで出るものを出せれば、すっきりさわやかな気分となる。だが、それができない。

小学生の私は午後の授業中に便意との戦いになることが多かった。便意というのものは波状攻撃をかけてくる。「もう駄目だ!」という瞬間がくる。そこを我慢していると一時的に楽になる。しかし、数分後にはまた危機的な状況が訪れる。

我慢しきれない子供もいる。いわゆる「おもらし」である。たいていの人は級友がおもらしをしてしまったのを目撃した経験があるだろう。便意を我慢しきれるか或いはもらしてしまうかはギリギリの分岐点である。もしここで失敗すれば生涯にわたる悪影響があるかもしれない。

生徒が授業中にトイレに行くことを嫌う教師もいた。見るからに不機嫌な顔をして、「トイレくらいちゃんと休み時間に行っておきなさい」とのたまうのである。こういう人たちは本質的な部分で子供を理解できていないのではなかろうか? 酷なようだがそう思う。

無理に大便を我慢することを続けていると、肛門括約筋が便の重さで伸びきってしまい、排泄に障害を起こす危険性があるという。また日常的に大便を我慢することが人格形成に与える影響もけっして無視できないだろう。

トイレがない!

もっとも大便で悩むのは小学生ばかりではない。大人の中にも「過敏性大腸症候群」で苦しむ人たちは大勢いる。通勤電車というトイレのない空間で突然の便意に襲われるのが典型的なケースだ。

都市圏では諸般の事情により長距離通勤を強いられ、電車内に1時間以上「監禁」される人も珍しくない。よくよく考えれば、通勤電車にトイレがないというのは相当におかしい話だ。また駅のトイレというのは利用者数に比べて多いとはけっして言えない。

更になんらかの障害をもつ人たちにとってトイレの問題はより深刻なものになりうる。たとえば四肢に障害があり車椅子を利用していたら、ハードルがさらに高いものとなることは想像に難くない。トイレに行くことの困難のため外出を控えるという人も少なくないはずだ。

ここに至って大便をしにくい社会とは人にやさしくない社会だということが見えてきた。構成者に多大で不要なストレスをかける社会だと言ってもいいだろう。排泄は人にとって、いや動物にとってごく当たり前の行為なのだから、便意を抑圧するとは自分の中の自然性を殺すのと同じことだ。

生徒が大便をできない小学校とは大便を敵視する思想が蔓延する社会である。これはおそらく大人社会を忠実に反映しているのだろう。 社会全体が大便をあたかも「ないもの」のように扱っている限りは「学校のトイレで大便ができない」という問題を解決するのは難しいような気がする。

最後に

いまになって思うと親の配慮は大切である。食物繊維の足りない食生活は不意の便意の最大の原因となりうる。ファーストフードやインスタント食品中心では食物繊維が不足しやすい。夜更かしして朝ぎりぎりまで寝ていて朝ご飯を食べないというのもいけないだろう。

小学生のお子さんをもつお父さんとお母さんは子供たちが苦しまないように配慮してあげてください。けっして「トイレくらい・・・」と軽く考えないでください。子供にとっては学校のトイレ問題は真に深刻なものとなりえます。そして子供の自尊心は大人に比べて小さいというわけではけっしてないのです。

(喜八 2004-03-07、改訂2007-01-07)

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